映画の感想
ホラー・サスペンス作品編
「ヴィジット」
(2015アメリカ、ナイト・シャマラン監督)
近年は毀誉褒貶の激しいナイト・シャマラン監督(2:8位の割合で叩かれているような気もするが)。
「この人は、『シックス・センス』の単なる一発屋だったのでは?」という声を吹き飛ばす完全復活作品・・・という触れ込みでそれなりに話題を呼んだ作品。
ハンディカメラで撮影したドキュメンタリー形式で、祖父母の家に1週間滞在する姉弟の体験を描いたサスペンスである。
全編を漂う違和感や、祖父母の描き方はなかなかのものがあり、サスペンス映画としてはまあそれなりに見ることができた。色々と伏線が張られていて、一度見ただけでは完全に分からないのも確かに『シックス・センス』に通じるものがある。
ただ、クライマックスで真相が判明した後の展開は、正直ちょっとどうなんだろう・・・と思ってしまう。
てっきりもう一度引っ繰り返しがあるのだと予測していたのだが、そのまま終わってしまったし。
あと、何でも〇〇病のせいにしてストーリーの整合性をとるのも個人的には×。
オーブンの掃除のシーンの描写などは、なかなか巧いなと思ったけどね。(平成28年9月16日)
「劇場霊」
(2015日本、中田秀夫監督)
下の「クロユリ団地」と同じ中田監督作品。主演はAKB48のぱるること島崎遥香。
中田監督は「女優霊」を意識して作ったそうで、島崎遥香もエリザベート・バートリを描いた舞台に出演する女優の卵の一人という設定である。
大コケ・駄作と散々叩かれまくった作品であるが、実際駄作だと思う(笑)。
ホラーというのは「得体のしれない、理不尽な怖さ」というのが大事だと思うのだが、この作品は怖さの対象が「人形」と限定されており、その人形がなぜそうなったかも完全に開示されるため、怖いどころか全く面白くないのである。
怖くないし、ラストも.Jホラーの定番である救いようのない終わり方ではなく一応ハッピーエンドなので、ホラーが苦手な人や子供でも安心して観れるだろう。
そういう意味では、低年齢層を意識して製作されたのだろうか?
強いて言えば、冒頭シーンだけはそれなりに引き込まれたし、期待もしたのだけど・・・。(平成28年7月8日)
「クロユリ団地」
(2013日本、中田秀夫監督)
上映とタイアップで導入されたパチンコ版はかなり打ち込んだ本作であるが、この度レンタルDVDにて視聴。「リング」の中田監督作品で、主演は前田敦子。
ストーリーの骨子はパチンコ版「エピソードリーチ」で散々見てきたので(^^;大体分かってはいたのだが、前半部分はなかなか秀逸である。
作品全体を覆う陰鬱な雰囲気や、「ウルトラマンネクサス」のリコのエピソードを連想させる、○○が実は〇〇だったという自我崩壊シーン等。
後半は、「牡丹灯籠」と雨月物語の「吉備津の釜」的な話に急展開するのであるが・・・祈祷師集団の変なマントラ詠唱シーンとか、ミノル君の必殺技炸裂シー
ンとか、怖くないどころか笑えてしまうような場面が続出し、せっかく良かった前半部分をぶち壊して作品自体を駄作の域に突き落としてしまっている。
そういえば、「女優霊」とか「死国」とかもこんな感じで最後に突き落とされたなぁと思い出し、クライマックスシーンの「見せ方」というものについて考えさせられた。(平成26年4月20日)
「ワールド・オブ・ライズ」
(2008アメリカ、リドリー・スコット監督)
9・11やイラク戦争後の中東を舞台にしたスパイサスペンス。
国際テロ組織のリーダーを追うCIA現地工作員をレオナルド・ディカプリオがを演じ、無人偵察機や衛星による情報を元に本国から電話で指示を出す彼の上司ホフマンをラッセル・クロウが演じている。
9・11後のアメリカの対中東政策、そして、その行き過ぎを是正すると公約したオバマが大統領となった後も、例えばパキスタン北西部で米軍無人機が繰り返しているミサイル攻撃などは常々問題となっている(つ
い最近、大治朋子著『勝てないアメリカー「対テロ戦争」の日常』(岩波新書1384)を読んだのであるが、件のパキスタン北西部では現地住民が報奨金目当
てに適当にでっち上げた虚偽情報を元に米無人機が攻撃を行う事も多く、それが「誤爆」を生み、しかもそういった誤爆の殆どは公表されずに葬られる、という
のが現状らしい)。
そういった21世紀型のシギントを駆使し、現地人の事情など無視して本国より冷酷・傲慢な采配を行うホフマンをラッセル・クロウが嫌味ったらしく演じてお
り、この監督の「グラディエーター」「アメリカン・ギャングスター」「ロビン・フッド」であれだけ格好良かったラッセルとこれが同一人物かと思う位の配役
である。
それに対し、古典的なヒューミントを駆使するヨルダン諜報機関のサラームが登場するのだが、これが主役の2人を完全に喰う程やたらと渋かった。
配役を見て「え?」と思ったのだが、演じているのは「ロビン・フッド」にも宿敵ゴドフリー役として登場したマーク・ストロング。いや、これは全然分らんかったなぁ。カツラ(ですよね?)を被るだけでここまで外見の変わる役者というのも珍しい(^^;。
ただ、作品全体の感想はちょっと微妙かも。
ストーリー構成自体は上手くまとまっているのだけど、肝心の主人公が現地の看護婦に惚れ込んだりして直情径行に終始右往左往している感が否めず、観客は感情移入できないのでは?と思えた。何だか脚本に従ってマリオネットのように動いているだけのようにも見える。
決して退屈でもつまらなくもないし、個々の場面ではかなり盛り上がる所も多いのだけど、全体としては何となく平凡な印象であった。(平成25年6月2日)
「マッチスティック・メン」
(2003アメリカ、リドリー・スコット監督)
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病
的な潔癖症で悩む詐欺師のロイと、その相棒のフランク。あまりにひどい症状に見かねたフランクは、ロイに精神科へ行くことを勧める。病院で見てもらったロ
イは別れた妻との間に出来た会った事のない子供の存在を思い出す。その後、対面を果すのだが娘との出会いが思わぬ方向へ…。 「プロメテウス」公開記念ということで、管理人の好きなリドリー・スコット作品からひとつ取り上げてみることにした。
ニコラス・ケイジの演じる神経症の詐欺師を主人公にした本作は、SFや歴史物などの”非日常の世界”を描いた作品が多いこの監督の作品の中では異色作といえよう。
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他の作品群とは異なり、映像美に酔いしれる作品ではなく、脚本や構成の妙を楽しむ作品だと思う(スーダラ節の歌詞ではないが「騙したつもりが騙された」とばかりに張り巡らされた伏線が収斂する様は見事である)。
管理人は初めて見た際、「リドリー・スコットもこんな”普通の映画”を作るし、作れるんだ」と意外だった。そして、題材が題材だけにあまり期待せずに見た分、終盤の展開には意表を突かれた。
また、後日譚を描いたエンディングも心温まる素晴らしい出来で、「情けない小悪党」でしかなった主人公が本当に格好良く思えたのであった(平成24年8月20日)。
「貞子
3D」
(2012日本、英勉監督)
3D映画になった貞子――と言えば、どんな内容なのかはだいたい想像が付くのであるが、実際見てみると良くも悪くもその予想を裏切らない作品だった(管理人は映画館のレイトショーにて観賞)。
第1作『リング』での「呪いのビデオ」は、時代と共に進化を遂げ、「呪いの動画」となっている。
一応、鈴木光司氏の『エス』という作品が原作という事で、自分は未読につきどの程度原作に忠実なのかは分からないのだが、結局のところ「どこかで聞いたような話」のパッチワークに過ぎず、オリジナリティが感じられない。
内容で見せるというよりは、「音響と3D効果で怖がらせる」お化け屋敷的な作品という印象を受けた。
また、井戸の中で怪物群と戦うシーンは、色んな意味で漫画『彼岸島』を連想して笑ってしまったのだが、一緒に見た知人はその場面の最中でずっと横を向いていたので後で聞いてみると「怖かった」らしい。まあ、物の見方・感じ方というのは人それぞれという事なのだろう(平成24年5月19日)。
「呪いの館 血を吸う眼」
(1971日本、山本迪夫監督)
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東宝「血を吸う」3部作のうちの1作で、第1作「血を吸う人形」の興行的成功を受けて作られた、傑作と名高い2作目。
左のイラストにも描かれているように、何と言ってもこの作品は故・岸田森の吸血鬼役の怪演に尽きるだろう。
細面で色白、そしてタイトルにもなっている「眼」で演技が出来る素晴らしい役者だっただけに、その早すぎる逝去は本当に残念であった。公開から40年経った現在の視点で鑑賞しても、ゴシックホラーとしての面白さは色褪せていない。
自分がふと思ったのは、山中の古びた洋館(大階段と、その脇に置かれた西洋甲冑)、そしてストーリーの根底をなす姉妹同士の確執等、後のSFCの名作サウ
ンドノベル『弟切草』はこの作品からインスパイアされている部分が多いのでは?と思えてしまった。
この姉妹を演じた藤田みどりと江美早苗は、タイプは違えども共に美人で、特に当時25歳の藤田はその落ち着いた演技も板についていて素晴らしいのであるが・・・2人共、後に配偶者問題で不幸な結末に至るのは悲しい限りだ。
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「HOUSE」
(1977日本、大林宣彦監督)
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大林宣彦の映画監督デビュー作。
自分は10年位前にCSで放送されていたのを見たのだが、この度「東宝特撮DVDコレクション」として書店で発売されていたので懐かしさのあまり購入。深い森の中に佇む「人食い屋敷」と、そこへ入ってしまった7人の女子高生・・という筋書きのスラップスティック・ホラーである。
こうしてDVDで改めて見返してみると、演出といい映像センスといい、本当に”鬼才”大林監督がやりたい放題やっているという印象(^^;。
後年の同監督の少し落ち着いた感じの抒情的な作品群とは全く別物と言えるが、しかし自分はこの作品が大変気に入っている。
何より「和製スラップスティック・ホラー」というだけで稀少価値があるではないか。
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主演は当時18歳の池上季実子。
乳首まで披露するシーンでは、「いいのか、これ?」などと思ってしまうが、伯母の霊に憑依されて花嫁衣装姿で登場する場面などは、とても18歳とは思えない、後年の大女優の片鱗を見せつけるかのような妖艶さである。
また、その父親役に作家の笹沢左保、スイカ売り役に小林亜星と、脇役陣も凝っていて面白い。(平成23年12月12日)
「ラストサマー」
(1997アメリカ、ジム・ギレスピー監督)
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公開当時、面白そうだなと思いつつ、結局その後見る機会を得ないままだったのだが(その間、あまり良い評判は聞かなかったが)、この度レンタル落ちVHSテープを100円で購入することに成功。待てば海路の何とやら、というやつである。 (以下、もう古い作品なので若干のネタバレを含んだ感想を。嫌な方は読み飛ばして下さい)
ホラー映画として分類される事も多いが、厳密には「サスペンス」だろう(超常的な現象などは基本的に起きない)。
「真犯人は誰か?」を主人公達が探る推理物的な要素もあり、ちょっとしたどんでん返しも起こるのだが・・・問題は、ラストに登場する真犯人が、今まで劇中
に一度も登場しなかった人物だということだろう。普通、こういうのはその真犯人を何らかの形で登場させて伏線を張っておくものだと思うが・・・。
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と
もあれ、90分という程良い上映時間と相まって、ストーリーは割とテンポ良く進み、あまり深く考えずに鑑賞する娯楽作品としては一定の水準にあると思う。
何より、主演のジェニファー・ラヴ・ヒューイットが可愛くて魅力的である(しかし、視聴者の目線を彼女の胸に誘導しようとしているのか?と思わせるような
服装やアングルがやたらと眼についた)。
彼女が出演していなければ、この映画の魅力も半減した事であろう。(平成23年11月30日)
「ラストサマー2」
(1998アメリカ、ダニー・キャノン監督)
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前作の1年後を描く続編。ジェニファー・ラヴ・ヒューイットが再度主演を務めている。懸賞に当ってバハマの島で休暇を過ごすことになった彼女達を、再び1年前の恐怖が襲う・・。 はっきりいってこれは、「人気が出たから付け焼刃で続編作って失敗した」というパターンの典型であろう。前作はまだサスペンスとして見れたのだが。
今回の犯人は無関係の人間まで襲いまくってただの殺人鬼と化しているし、外部と隔絶された孤島という舞台設定はいいと思うけれど、主人公達はただキャー
キャー叫んで逃げ回っているだけでワンパターン過ぎる・・・(どうでも良いけど、呪術に凝る老黒人のペンション従業員が登場するくだりはS・キング原作の
『シャイニング』そのままである)。
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相変わらずジェニファー・ラヴ・ヒューイットは可愛いし、今作で披露した黒ビキニの水着姿はそのスタイルの良さを際立たせているのだが、逆に言うと彼女の胸以外には何ら見るべきところの無い凡作であろう(それにしても、終盤の駄洒落のような種明かしは悲しすぎる)。(平成23年11月30日)
「感染」
(2004日本、落合正幸監督)
「リング」や「呪怨」が世界的に有名となってハリウッドにも進出し、和製ホラー映画が一時的なブームになっていた頃に作られたレーベル「Jホラーシアター」シリーズの第1作。
レンタルビデオ店で借りて来て鑑賞。
自分の好きな星野真理が出演しているからというのは内緒である(w。
最初から最後まで病院内を舞台にした和製ホラー。で、この病院が見るからに陰気臭い、患者も職員もちょっとおかしな病院なのである。
和製ホラーといいつつも、雰囲気的にはスティーヴン・キングのモダンホラーみたいな感じか。こういう雰囲気の作品は今までにはないタイプのものなので、そ
ういう意味では結構面白かった。張り巡らされた伏線がうまく纏まるところもなかなか良い。往年のカルト的名作『ゴケミドロ』の影響を感じるのは私だけでは
ないはず。
ちなみに星野真理は、新人看護婦の役で出演。注射も打てない泣き虫の新人看護婦、だったのが途中からああなってこうなっていく様はなかなか迫力があって恐かったっす・・・。
「予言」
(2004日本、鶴田法男監督)
劇場で上の「感染」と同時上映された、「Jホラーシアター」の第1作。
こちらもレンタルビデオ店で借りて来て鑑賞。
主演は三上博史。その妻役に何と酒井法子(笑)。
この作品はつのだじろうの『恐怖新聞』が元ネタになっている。
車で帰省先から戻る途中の、どこにでもいる幸せな一家。しかし主人公は、自分達が交通事故に遭って最愛の娘を失うという未来の新聞記事を偶然目にしてしまい、そしてまさにその通りに事故は起きてしまう・・・。
この作品はホラーでもあり、SFでもある。
予言の真相を突き止め、過去に遡って残酷な運命を変えようとする主人公。しかし・・・・。
この種のタイムパラドックス物のSFには主として2つの解釈があり、
@何か一つでも過去の事象を変えると、そこから波及的に変化が広がり、収拾がつかなくなってしまうという、いわゆる「バタフライ効果」解釈。
A.過去の事象は基本的に変えることはできない。無理やり変化させようとすると、どこかに齟齬が生じたり、事象を元に修復させようとする「復元力」が発生するという解釈。
いわば、@は量子論的解釈、Aは決定論的解釈と言い換えることができよう。
従来の古典物理学では決定論が当然の事とされてきたのであるが(ハイゼンベルグの不確定性原理をアインシュタインが「神はサイコロを振らない」と批判した
エピソードは御存じの方も多いと思う)、その後趨勢は逆転し、現代科学においては量子論が最先端を行っており、近年のSF作品でAの解釈によって描かれた
物は少ない。
さて、この作品は・・・・(これ以上書くと核心に触れるので自主規制)。
演
出面もなかなかよく出来ているし(特に、娘が顔を隠して出てくる場面はかなりi怖い・・・)、三上博史の演技はちょとオーバーな気もしないでもないが、作
品の根底を流れる「決して報われることのない悲しい家族愛」のようなものを上手く演じていて見ている自分も少し切なくなってしまった。
「輪廻」
(2006日本、清水崇監督)
「Jホラーシアター」シリーズの第2作として制作された、「呪怨」の清水崇監督作品。
今は無き千日前のスバル座で鑑賞。
普通に面白いとは思う・・・・けど、何というか、この監督の”恐がらせかた”は「呪怨」で慣れてしまっているので、正直今回は「呪怨」の時みたいな怖さは感じなかったかな。
あと、後半に出てくるゾンビみたいなのは、和製ホラーには合ってないような気がする。
「世にも奇妙な物語 映画の特別編」
(2000日本、合作)
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TVシリーズ「世にも奇妙な物語」の映画版。
「雪山」「携帯忠臣蔵」「チェス」「結婚シミュレーター」の4作品のオムニバスとなっている。
自分が一番面白く観れたのは、第1話の「雪山」(というか、残りの3話はあまり面白くなかった)。
上で紹介した「感染」の落合正幸監督作品。主演は矢田亜希子。ストーリーは、5人の遭難者が吹雪の中で山小屋に避難するという、よくある「雪山の怪談もの」である。ラストも、普通に見ればよくあるオチではある。
しかし、随所に意味深な描写を織り交ぜることによって、視聴者に解釈の余地を残しているところが面白いと思う。
雪山の怪異は全て妄想の産物だったのか、それとも・・・。
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あまりに生々しい描写が多く、他の3話はともかく、流石にこの第1話はゴールデンタイムに地上波で放送できんだろうなぁと思った。そういう意味では劇場版に相応しい作品だと思う。
近
頃は私生活の方で何か色々と大変らしい矢田亜希子嬢であるが、この当時はまだ初々しくてなかなか魅力的である。これと同時期に主演した金子修介監督の「ク
ロスファイア」もハマリ役だったし、この人は有名になってからの「恋愛ドラマの正統派ヒロイン」よりも、こういう癖のある役の方が合っているのではない
か、と思った。
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