映画の感想 アニメ・特撮作品編


「るろうに剣心 追憶編
(1999日本・古橋一浩監督)


「るろうに剣心」本編の前日譚である、「人斬り抜刀斎」として幕末を生きていた当時の剣心を描いたOVA作品。
世評の高い事は何度か耳にしていたが、自分は長らく観る機会を得ないままであった。それがこの度全4話を1枚にまとめてブルーレイディスクで発売されたので、8.000円と高かったけど買ってみることに。

剣心の頬にある十字傷、そしてその傷にまつわる雪代巴という一人の女性との出会いと別れを描いている。
本編の作風とは異なる、大人びた雰囲気のストーリーが見どころ。

当時人気声優だった岩男潤子が演じる巴は、物静かで感情を表に出さない態度や、聞き取れない位の低い発声等、こちらも当時人気絶頂だった”綾波レイ”の影響が大なのであろうと推測される。

また、特に第1話の日本刀が骨肉を斬る剣闘シーンはかなり凄惨で、本編のような少年漫画色は完全に排されている(しかし、京都所司代を暗殺というのはいくらなんでもオーバーすぎると思うが・・)。

後半2話は、あえて台詞として語られていない部分も多く、色々と解釈の余地を残した結構難解な話だと思う。
巴は、自分の夫を斬殺した剣心を愛するに至ったのか?そうだとするとその心境の変化の理由は何なのか?そしてラストで剣心の頬に傷を刻んだ意味は・・・?
その辺り、自分にはよく分らなかったので、「この作品は、あれこれ深く考えるよりも雰囲気を楽しむ方が良いのかもしれないな」と無理に自分を納得させる事にしたのであった。(平成24年2月12日)


「CASSHERN」
(2004日本・紀里谷和明監督)


和製アニメの名作を実写映画化すると、ことごとく失敗する。
「北斗の拳」然り、「ドラゴンボール」然り、そして件の「デビルマン」などはその極めつけであろう。
このジンクス或いは法則に、果たして例外はあるのだろうか?少なくとも自分は思い浮かばないのだが・・・。

本 作はタツノコプロの名作「新造人間キャシャーン」の実写化なのであるが、CGを多用したスチームパンク調の映像自体はなかなか綺麗で、最初TV放送にて断 片的に少し見た時は「これ、以外と面白いのでは?」と思った。しかし、その後通しでDVD鑑賞すると・・・見終えた後に結局何も残らない空虚な映画だった なと落胆したのだった。

原 作の「キャシャーン」の面影は完全に無く、新解釈による全く別物の作品と化しているのはまだ許せるのだが、約2時間半の長くて重苦しいストーリーを通して 製作側が一体何をやりたかったのか、さらに言えば、そもそもこの話を「キャシャーン」として作る必要があったのかすら、自分には疑問に思えてしまう。

ストーリーもさも難解そうに見せかけてはいるけど、メッキを剥がして直視すると薄っぺらいだけだ。
「なぜ人は憎しみ合い、殺しあうのか?」「この混沌とした世界で、一体何が正しくて何が間違っているのか?」etc、そんな手垢の着いた青臭い台詞をひた すらグダグダグダグダ・・・と聞かされる視聴者はたまったものではない(第一、小説の朗読をしている訳ではないのだから、その辺りは多少なりとも「映像で 語る」という手法が思い浮かばなかったのだろうか)。

キャシャーンが素手でロボット軍団と戦うシーンは悪くなかったけど(無数のロボット群が完全に同調して動くのはもう少し何とかならないかと思ったが)、結局まともな戦闘シーンがそれだけというのが悲しい。

あと、どうでも良いが、序盤での主人公・鉄也の初登場シーン。麻生久美子演じるヒロイン・ルナをバイクの後部座席に乗せ、
鉄也「ルナ、戦争が終わったら結婚しよう!」
ルナ「いいよ〜」
これではパロディでよくある「死亡フラグ」の構図そのままだろう(実際この後、鉄也は出征して戦死する)。自分にはギャグとしか思えない場面なのであるが、どうも製作サイドは大真面目に作っているような気が・・・。(平成24年1月18日)


「モスラ3 キングギドラ来襲
(1998日本、米田興弘監督)


「東宝特撮映画DVDコレクション」の一つとして購入。
平成モスラシリーズの3作目にして、完結編である。タイトルにもあるように、今回は”最強の敵”キングギドラと1対1で戦うのだ。

この「モスラ」シリーズは、良くも悪くも「対象年齢12歳以下」という感じの作風となっており、平成版「ゴジラ」「ガメラ」シリーズと比較するとハードな描写は殆ど除かれている。
小学校を登校拒否中の主人公と小美人姉妹が心を通わせるシーンなどは悪くはないのだが、例えば「子供達を攫ってドームの中に幽閉するものの、脅かすだけで結局何もしないキングギドラ」というのはどうも滑稽に過ぎる。
そのうちの何人かを餌として捕食する描写などがあれば臨場感が増したと思うのだが・・・そういうのはご法度なのだろう。

自衛隊や防衛軍が一切登場しないのも残念。
でも、明らかに格上のキングギドラを相手に、モスラが何度もボロボロに傷つきながらも(この辺の描写は結構生々しい)、最終的に勝利するストーリー構成はなかなか良かったと思う。
・・・ついでに一つ言わせてもらうと、ティラノサウルスやトリケラトプスといった白亜紀の恐竜の特撮は手抜きも甚だしく、学生の自主製作映画並みなのが悲しい。(平成23年12月21日)


「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 ラスト・リゾート」
(1999日本、森邦弘監督)


OVAとして好評を博した「第第08MS小隊」の後日譚として製作された作品。
一年戦争終戦後、軍を除隊したミケルがキキと共に、シローとアイナを探す旅に出るという筋書き。
そこで2人は、かつてフラナガン機関で被実験体となっていた子供達が暮らす集落に行き着く・・・。

戦闘シーンは一切登場しない、割と地味な内容。
自分がよく分からなかったのは、集落での最後の夜に2人が子供達と一緒に毛布に包まって就寝し、朝起きると子供達は全員姿を消し、誰もいなくなっていた・・・という場面。

ミケル「俺、思うんだ。あれって、幻だったのかな?」
キキ「幻?」
ミケル「そうさ、幻さ。そうじゃなかったら、幽霊とかさ?」
キキ「あたしはどっちでもないと思うな。きっとあいつらも探しに行ったんだよ」
ミケル「探すって、何を?」
キキ「決まってるだろ。新しい世界、新しい人生さ」
ミケル「そうか・・そうだよな」

ミケルは納得しているようだが、しかしこれは目覚めると子供達が姿を消していた現象の説明にはなっていないと思うが・・・。
その直後のラストシーンで、2人は無事、ログハウスで暮らすシローと身籠ったアイナに再会するのだが・・・この場面でシローとアイナは微笑むだけで言葉を 発することなく、そして主題歌が流れるエンドロールへ。これはそのままハッピーエンドと受け取って良いのか、それとも・・・と邪推してしまうのは深読みの し過ぎ?


「ウルトラマンティガ外伝 古代に蘇る巨人」
(2001日本、村石宏實監督)


OVAとして発売された「ティガ」の外伝で、なんと縄文時代が舞台!という一風変わった作品になっている。

ダイゴの息子である主人公・ツバサは、ネオスーパーGUTSの訓練飛行中に、数十世紀前にタイムスリップしてしまう・・・という設定。高樹澪を始め、シリーズの隊員役の面々が縄文人役で出演しているところが面白い。

敵 となるのは、土偶のゴーグルを被った闇の超能力者ドグラマグマ。彼が召喚するのが巨大な土偶型の闇の魔人ドグーフ。・・・何かこの辺りはシリアスなのか ギャグなのかよく分からないが、どうも近年の特撮番組は倫理面の描写制限がかなり厳しくなっているようで、この作品はOVAにも関わらず、基本的に血が出 たり、人体が破損したりする描写は皆無となっている(要はストレートな「殺人シーン」は出てこない訳である)。

特撮場面は少し安っぽい感じがしないでもないが、こういう外伝という試みは面白いと思うし、それなりに退屈せずに観ることができた。


「惑星大戦争」
(1977日本、福田純監督)

自分がまだ小学生だった頃、文庫サイズの子供向け「〜大百科」シリーズというのがよく書店に並んでいた。その中でも自分は特に怪奇妖怪物・軍事物・特撮SF物を愛読していたクチなのだが、特撮SF物の大百科の中でこの作品がよく取り上げられていた。
そこに決まって登場するのは、艦首にドリルの付いた宇宙戦艦「轟天号」と、チューバッカに角の生えたような怪物に鎖で繋がれて捕らえられた若き日の浅野ゆう子(笑)。
で、「これ、面白そうやし、一回見てみたいな。どっかで放送してくれんかなあ」と思いつつも、ずっと見る機会を得ないままであった。この手の邦画DVDと いうのは1枚4〜5千円と高価なので買う気が起きなかったのであるが、偶然にもレンタルビデオ屋で発見し、さっそく借りてきたのであった。

・・・・で、感想。まず全般的に「滅茶苦茶チープ」。
一応敵は「銀河帝国軍」の地球侵攻部隊などという大層なものが出てくるのですが、戦艦1隻と小型戦闘機群だけという寂しい物(それにしても「銀河帝国軍」 というのはベタすぎて笑えるが・・・やっぱこの頃はこういうのが流行ったんだろうなあ)。敵の人数も小隊規模だし、味方は「轟天」1隻。ストーリーもはっ きり言ってありきたりでしょうもない。

が、 なんだかんだいっても「轟天」は格好いいし、最後の敵戦艦(これがまた「古代ローマ軍艦」風の渋いデザイン)との砲撃戦のシーンはバックに流れる軽快な テーマ曲と相まってなかなか燃える。特に、「轟天」の側面から発射される回転式ビーム砲や、敵戦艦の「帆」から並列発射されるビーム砲は実にカッコい い!。
この作品が今でも一部特撮マニアの間で人気がある理由が分かるような気がした。
「いい歳こいて子供向け番組を見て喜んでいる」特撮マニアというのはこういうのに弱いんだろうなあ(自分も人のことは言えないが)、と実感させてくれる作品であった。

・ なお、同じB級SF邦画としては、ほぼ同時期に製作された東映の「宇宙からのメッセージ」(深作欣二監督)もおすすめ(真田広之演じる宇宙暴走族・ R2D2もどきのロボット・元日ハムの岩本似の関西弁チンピラなどが選ばれた「リアベの実の勇者」となって成田三樹夫演じる烏丸少将・・・もといガバナス 帝国皇帝と対決する、脱力&大爆笑必至の愉快な作品である)。


「ゴジラ×メカゴジラ」(2002年版)
(2002日本、手塚昌明監督)

平 成に入ってやたらと量産されるようになったゴジラシリーズの特徴・・・それは自分が思うに、川北鉱一氏の特撮はよく出来ているけど、肝心のストーリーが今 ひとつというという事であろう(中には明らかに最低クラスのものもある。現武豊夫人が出てたやつとか。もっとも、「ゴジラ対ビオランテ」はだけは別格で、 あれは世評通り自分も名作だと思う)。

この映画も特撮シーンはやはりよくできていて、メカゴジラこと3式機龍はやたらと格好良い。
でもこのデザイン、背中のキャノン砲といい腕のビームガンといい、明らかにゾイドの影響を受けているのでは? 特に必殺兵器の「アブソリュート・ゼロ」、発射する場所は違うけど、これってデスザウラーの荷電粒子砲そのままやん。
機龍の操縦士を演じるヒロイン役は釈由美子。「修羅雪姫」の時もそうだったけど、この人はキリッとした「戦うヒロイン」みたいな役が合っているようで、演技もなかなか決まっている。

それで、この作品の最大の問題点、それは「ゴジラの存在価値は何??」という点だろう。
何の脈絡もなくいきなり現れ、ただ単に機龍の引き立て役に終始しているだけで、主体性は全くなし。そもそも、ゴジラ映画の真髄というのはゴジラの強大さ・ 恐ろしさというのが第一にあると思うのだが、そういうのは一切無い(この前年に作られた金子修介監督の「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 怪獣総攻撃」は、その点実によく出来ていてさすが金子監督だと思った)。

元々、他の作品と同時上映だったらしく、僅か90分の作品なので止むを得ないのかもしれないが。
お馴染みの「ゴジラのテーマ」や「防衛軍のテーマ」が使われず、機龍隊以外は自衛隊の活躍の場がほとんどない(メーサー車は多少活躍しますが、通常兵器の出番はほとんどなし)のも少々残念。

この続編として翌年に製作されたのが「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」。
「ガオレンジャー」のガオレッド役金子昇が機龍整備士役で主演。操縦士役は吉岡美穂に。
「ジャイアントロボ」的な結末で締めくくられるラストは、唐突な印象は否めず意外性も無いが、王道パターンとしてはまあそれなりに・・・という感じで自分は嫌いではない。


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