映画の感想 活劇・アクション作品編 


「プリンセス トヨトミ
(2011日本、鈴木雅之監督)

人気作家・万城目学によるベストセラー小説を堤真一、綾瀬はるから豪華キャスト共演で映画化した奇想天外なミステリー。東京から大阪を訪れた調査機関・会計検査院の面々が、400年間“あるもの”を守り続けてきた人々と攻防を繰り広げる。

原作は未読なのだけど、単体の映画として見るとこれは駄目だな。

冗談などでよくネタにされる「大阪独立国」テーマを、豊臣家の末裔などと絡めて描いた内容で、派手にエキストラを動員して大阪の街でロケを行ったらしく、見慣れた場所が沢山登場する(無人となった南海難波駅のシーンは印象的だった)。
ただ、中盤辺りから急に話が大きくなり、大風呂敷を広げるのは良いけれど、明らかにおかしな点が多すぎて興ざめしてしまう。

・大阪が「国家」として存在するのであれば、一介の検査官である主人公は隠れ蓑となっている財団法人の不正経理を暴く以上の事は出来ない訳で、先方も会計検査院如きは歯牙にもかけないはず。

・同様に、大阪の男たちが瓢箪を合図に決起した理由もよく分からない。綾瀬はるかが「プリンセス」をやくざの事務所前から救出し、ホテルに連れ込んだのを「誘拐」「行方不明」と誤解したから?

そもそも、「大阪国」のレゾンデートルというのは一体何処にあるのだろうか?
秘密裏に存在し、お好み焼き屋の主人が実は首相だったなどというのは子供のごっこ遊びと大して変わらないし、豊臣の血筋が大事なのであれば堂々と名乗って庇護すれば良い(大名の子孫などという人は今日珍しくもない)。

どちらかというと、ストーリーそのものよりも大阪を舞台に繰り広げられる役者の演技を楽しむ作品だろうか(キャスティングはそれなりに豪華である)。黒門市場を疾走する綾瀬はるかの乳揺れをスローで映すシーンは余程こだわって撮ったようで、ある意味感心させられた 。(平成24年12月5日)


「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂
(2010アメリカ、マイク・ニューウェル監督)


同名ゲームを原作としたアクション映画。
自分が「プリンス・オブ・ペルシャ」の第1作を初めて目にしたのは、今から20年以上前の事。
確かFM-TOWNS版だったと記憶しているが、パソコンショップの店頭デモで、従来のアクションゲームとは完全に一線を画した主人公の流麗な動きを見て、素直に「凄い」と驚いたものである。

ゲーム自体は続編も含めてその後触れる機会を得なかったのだが、自分のような「80年代ゲーマー」には馴染みのあるタイトルだったこともあり、割と楽しみにしていた作品だった(といいつつも、劇場公開ではなく、レンタルDVDにて視聴したのだが)。

本編再生ボタンを押すと、夜空に浮かぶ城と共に浮かび上がる「ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ」の文字。・・・いや、もうこの時点で、ほぼ完全にどういう内容なのか分かりました(^^;。
要はハッピーエンドが約束され約束された予定調和の世界で、どんな危機に陥っても主人公と恋人だけは絶対に生き残って最後は必ず結ばれるという、「子供から大人まで万人が楽しめる作品」な訳である。

ジェリー・ブラッカイマー製作作品という事もあり、視覚的な部分に関してはとにかく派手だし、細部にもこだわりが感じられる。
城壁の上などで主人公が繰り広げるアクションシーンは、この映画の一番「売り」の部分なのであるが、それなりに原作に忠実で(自分は同時に昔のジャッキー・チェン映画のドタバタ・アクションも連想したが)、活劇としては及第点だと思う。
良くも悪くも、あまり深く考えずに楽しめる作品だろう。(平成24年4月4日)


「大帝の剣」
(2007日本、堤幸彦監督)


夢枕獏原作のSF伝奇時代劇小説を実写化した作品。
主人公である怪力の巨漢・万源九郎を阿部寛が演じている。

ストーリーはありきたりだし(どうも昔観た『ZIPANG』を連想してしまった)、特撮CGやワイヤーアクションも別段真新しいものではないけど、合間に挿入される江森徹のナレーション効果もあって割とテンポ良く進み、最後まで退屈しなかった。

また、主演の阿部寛を始め、天草四郎役の黒木メイサ、そして竹内力が「岸和田のカオルちゃん」的な怪演をみせる敵の親玉・破顔坊など、キャラが立っているのも良い。
という訳で、B級特撮時代劇だと割り切って観れば以外と面白かった作品なのであった。(平成24年4月17日)


「ロード・オブ・ウォー」
(2005アメリカ、アンドリュー・ニコル監督)


ニコラス・ケイジ主演で、ウクライナ出身の武器商人の半生を描いた作品。
実在の武器商人をモデルにしているらしく(DVDのメイキングでその話が出てくる)、ドキュメンタリータッチで淡々とストーリーを進めていく手法はなかなか斬新だと感じた。

個 人営業の武器商人と聞くと、船戸与一氏の名作冒険小説『砂のクロニクル』に登場する日本人武器商人「ハジ」をまず連想する自分であるが、どうも漠然とした イメージがあって「フィクションの世界ならともなく、各国政府・軍部や多国籍企業が入り乱れる兵器市場でホントにそんなのがやっていけるの?」などと思っ ていたのだが、なるほど、こうして見るとなかなかリアルである。

主なマーケットがリベリアやシエラレオネ等のアフリカ各国というのも納得。
確かに、ああいう軍事技術後進地域だと少数のAKやRPGが有力な武器となるからだ。

ま た、DVDのメイキングで、ウクライナの武器庫に3万丁のAK-47が並んだ場面は全て本物を使っているとか(撮影用のダミーを造るより、本物を買って撮 影終了後売り払った方が安上がりだったそうな)、ニコラス・ケイジの乗ったロシア製輸送機は実際に武器商人が使っていたものをそのまま使用したなどといっ たエピソードは実に興味深かった。


「特攻サンダーボルト作戦」
(1976アメリカ、アービン・カーシュナー監督)

1976年の、イスラエル軍特殊部隊によるエンテベ空港奇襲事件を描いた映画。
テルアビブ発エールフランス機がハイジャックされ、乗客のユダヤ人達が飛行機もろともアフリカのウガンダに拉致されたのを、C130に乗ったイスラエル軍特殊部隊が長躯制圧・救出した実話に基づいている。

監督は「スター・ウォーズ2(エピソード5) 帝国の逆襲」のアービン・カーシュナー。主演はチャールズ・ブロンソン。ちなみに原題は「OPERATION THUNDERBOLT RAID ON ENTEBBE」――このセンスのない邦題はどうなんだろうか。
そういえば、昔ゲーセンで流行ったガンシューティングゲーム「オペレーション・ウルフ」の続編で、「オペレーション・サンダーボルト」という飛行機の中でテロリスト達と撃ち合うゲームがあった。おそらくこの映画からの影響なのだろう。

さ て、この作品、スターウォーズ6部作の中でも評価の高い「帝国の逆襲」のカーシュナー監督作品という事もあってか、アクション映画としてはよく出来てお り、ハイジャック場面からエンテベ空港での銃撃戦まで、緊迫感に満ちたシーンの連続で、かなりマイナーな作品の割には結構楽しめた(自分が初めて見たの は、確か小学生当時のテレビ放送にて)。
とはいえ、これを見てしごく単純に「英雄的な救出作戦だ」と感動する人がイスラエル人以外に一体どれくらいいるのだろうか・・・。
はっきり言ってこの「救出作戦」とやらは国際法蹂躙の犯罪行為だし、そもそも「なぜイスラエルを標的にしたテロが起きるのか」という背景には全く触れていない。

要 は、「自分達さえ良ければ、他国がどうなっても、他国人がどれだけ死のうが知った事ではない。まして国際法など関係ない」という建国時〜現在に至るまでの イスラエル国家の対外行動原理を端的に示しているのがこのエンテベ空港事件であろう(実際、ウガンダ軍兵士約40人が殺害されている)。
アクション映画としては素晴らしい出来。半面、プロパガンダ映画としては非常に不快な作品――自分のこの作品に対する評価は実にアンビヴァレントなのである。


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