平成23年度 海上自衛隊 呉地方隊展示訓練 in 大阪湾

平成23年9月24日

高倍率の抽選を突破しないと見学できない海上自衛隊の展示訓練。
しかし、今年は有難い事に同じ職場の方が自分(管理人)の分と併せて乗艦券を2枚取って下さったので、一緒に参加する事となりました。

←こちらが当日、和歌山港より乗艦したDDG-171「はたかぜ」


当日、和歌山港より出航したのは2隻。

(左)が訓練支援艦「てんりゅう」。

(右)が自分達の乗艦した「はたかぜ」。

「はたかぜ」は、2隻が建造されたはたかぜ型ミサイル護衛艦(DDG)のネームシップ(同型艦はDDG-172「しまかぜ」)。
昭和61年竣工で、基準排水量は4.600t、最大速力30ノット。
この後出航までの時間に艦橋も見学させてもらったのですが、現役艦とはいえ流石に昭和期製造の艦ということで、対水上レーダーのスコープやCPU機器類の見た目はちょっとばかり古いかな・・・という印象を受けました(昔のPC-88〜98の画面を想起しました。OSはWindowsになっているようでしたが)。
・・・とは言っても、当然の事ながらCICの中へ入る事は出来ませんでしたので、これはあくまで表面的な感想、ということで。

こちらが主砲の5インチ(127mm)単装速射砲。
「はたかぜ」はOTT・メララ製127mm砲ではなく、米国製のMk42 5インチ砲を搭載しています。
勿論、対水上・対空射撃が可能な両用砲で、仰角は最大+85°ということです。

以下、「はたかぜ」の兵装です。

(左)は、SSM(艦対艦ミサイル)ハープーン4連装発射機。両舷に2基搭載されています。

(右)は、68式3連装短魚雷発射管。対潜魚雷用発射管で、これも両舷に2基搭載。

(左)は、ハープーンと並ぶ西側海軍のベストセラー装備であるアスロックSUM(対潜ミサイル)発射機。

(右)は、「ファランクス」の通称で知られるCIWS・Mk15。
レーダーと一体化して20mmバルカン砲を全自動で運用する近接防空兵器です。こちらも両舷に2基搭載。

こちらが艦首に搭載されているSAM(艦対空ミサイル)発射装置Mk13(ターター・ランチャー)。
搭載されているミサイルはターターではなく、その後継型であるスタンダード(SM-1)です。

艦に搭載されている対空ミサイルはこの単装スタンダードだけで、流石ににイージス艦や平成竣工の新鋭艦であるむらさめ型・たかなみ型のようなVLSを搭載した護衛艦と比べると対空能力に劣るのは致し方のないところです。

こちらはチャフ・フレアを発射するMK.137発射機。
説明して下さった若い隊員さんによると、チャフの散布というのは今でもアルミ箔を大量に撒き散らす手法で行っているそうで、訓練で使用した祭には後始末が大変とのことでした。
(左) 主砲の空砲展示射撃。初めて見たのですが凄まじい音と衝撃でした。

(右)は、展示射撃後に砲塔から排出された空薬莢。

 


そして、各港を出港した艦艇が淡路島沖の訓練海域にて合流し、展示訓練が始まります。その航行展示の模様を撮影しました。

まずは今回の1番人気、ひゅうが型護衛艦の2番艦DDH-182「いせ」。
「海上自衛隊初の空母か!?」と報道等で何かと話題になりましたので、ご存じの方も多いのではないかと思います(おおすみ型の竣工時にもそんな騒ぎはありましたが)。
基準排水量13.950t、搭載機はヘリ4機(最大11機搭載可能)。
海自はあくまでも「DDH=ヘリコプター搭載護衛艦」として分類していますが・・・まぁ自衛隊が実質軍隊なのと同じく、この艦も普通に見れば「ヘリ空母」でしょう。

1万超ということもあり、他の艦と比べてもその大きさが際立っていました。
このひゅうが型に続いて建造予定の22DDHは、さらに大型の19.500tクラス(帝国海軍の量産型中型空母である雲龍型(17.480t)を上回ります)になるとのことで、海自もいつの間にやらここまで来たんだなぁと感慨深かったです(しかし、この大きさでもあくまでDD(駆逐艦)にカテゴライズされるというのはある意味凄いですね・・・)。

今回の展示訓練では大阪港より出航した「いせ」。甲板上には抽選に当って搭乗できた羨ましい方々の姿が見えます。


実質的なヘリ空母という事で、「ハリアーは搭載しないの?」という疑問は艦艇ファンなら誰しも抱いたと思われます(自分もそうでした)。
しかし残念ながら(?)、この艦はスキージャンプ甲板は備えておらず、どうも海自はV/STOL機の搭載については最初から考えていない様子。

かつて年少時代にハリアーやF-14Jを搭載した「海上自衛隊航空母艦」を夢想した自分としては残念ではありますが(^^;、本型はどちらかというと艦隊の中核戦力としてというよりはむしろ、海外派遣や災害派遣等におけるプラットフォーム的な役割の方を期待されているのでしょう。
一方で、邪推すれば「このひゅうが型で”空母”を建造した」という既成事実を作るブレイクスルー的な意義もあるのでしょうが。

海自も、このひゅうが型を「空母」であるとは一言も言っていませんので、例えば「しょうかく」「ずいかく」といったあからさまな命名はしていません。
では全く空母とは無関係の命名かというとそうではなく、帝国海軍の改装航空戦艦である伊勢型2隻の艦名を踏襲しており、この辺りに海自の「こだわり」を感じます(^^;。

さて、22DDHと後続の24DDHは果たして何と命名されるのでしょうか。
現在の海自の命名基準(*)は、原則として「山の名前→DDG」「旧国名→DDH」「SS=瑞獣名」となっており、この伝で行けば「あかぎ」や「ひりゅう」は消え、「かが」「しなの」あたりでしょうか。
もっとも、「ひゅうが」「いせ」のような関連性・連続性のある命名が望ましいことからすると、あえて「あかぎ」「かが」、あるいは「あまぎ」「かつらぎ」辺りではなかろうか、と自分は予想しています。

*具体的には、「海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」に規定されており、DDH=旧国名・山岳名、DDG=山岳名・気象となっている。ただし、DDH「しらね」「くらま」の例外を除き、山岳名はDDGに命名されているので、現状ではDDH=旧国名となっている。

 

「いせ」が1番人気とすると、次点2番人気はこちらということになるでしょうか。7.250tのこんごう型イージス艦の2番艦、DDG-174「きりしま」です。艦橋の八角形のSPY-1フェイズド・アレイ・レーダーが目を引きますね。 むらさめ型護衛艦(4.550t)の7番艦、DD-107「いかづち」。
平成竣工の新鋭艦で、第1護衛隊群にて活躍中です。
米本土同時テロ後のアフガン攻撃の際には、テロ対策特措法に基づいてインド洋に派遣されました。
はつゆき型護衛艦(3.050t)の10番艦、DD-131「せとゆき」
冷戦時代は対ソ最前線にて護衛隊群の一角を形成したはつゆき型ですが、現在では流石に老朽化が進み、殆どの艦が地方隊配属となっています。

 

あぶくま型護衛艦(2.000t)の6番艦、DE-234「とね」。
DEということで、分類としては「護衛駆逐艦」になります。排水量的にも外観的にも、スタンダードな「駆逐艦」という感じがします。
こちらはなかなか珍しい、ASE-6102試験艦「あすか」。
排水量4.250t。
文字通り、艦載装備の運用試験を行う艦です。
ひうち型多用途支援艦(980t)の4番艦、ASM-4304「げんかい」。
平成19年進水の新鋭艦です。救難や災害派遣等々、任務が多様化する近年の海自を象徴する艦であると言えましょう。

 

うわじま型掃海艇(490t)の6番艇、MSC-677「まきしま」。
海自の掃海艇部隊は、朝鮮戦争(この時は海保所属)・湾岸戦争後のペルシャ湾と、”実戦経験”を持つ部隊でもあります。
掃海管制艇MCL-728「いえしま」。排水量490t。
元は左の「まきしま」と同じく、うわじま型掃海艇の2番艇だったのですが(なので、外観・排水量とも同じなのです)、後に掃海管制艇として転用されました。
ゆら型輸送艦(590t)のネームシップ、LSU-4171「ゆら」。
「まきしま」「いえしま」「ゆら」の3隻は今回淡路島より出港。小型艦艇にも関わらず舷側にはかなりの人が乗っておられます。

 


その後、各基地より飛来した航空機・ヘリコプターによる展示飛行が行われました(SH-60JやT-5をはじめ、陸自のAH-1S、OH-1も参加)。
上の写真は、救難飛行艇US-2の離着水展示を撮ったものです。
飛行艇の開発・製造に関しては、我が国は戦前より卓越した技術と能力を持っており、このUS-2(US-1の後継機)も新明和工業製、ということで、その前身である川西航空機が世界に誇った二式大艇の血を受け継ぐ国産機です。
少し距離が遠かったのが残念ではありますが、非常に綺麗な着水・離水でした。

その後、解列してそれぞれの港へ戻ることになり、「はたかぜ」は17時過ぎに元の和歌山港へ入港。
晴天にも恵まれ、貴重な体験をすることができた1日となりました(機会があれば、ひゅうが型には是非1度乗ってみたいです!)

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