最近のこと(97/10)

ギリシャリクガメの超幼体、「ヘリオス」が亡くなって
しまいました。成長著しい古参のギリシャ「アテナ」の
パートナーにと探しに探し回ってようやく見つけた個体
でした。甲長約4cmと、溯ること数ヶ月前に購入した
ヘルマンリクガメ「ハンナ」の購入時とほぼ同サイズの
超幼体です。すごく悩んだのを昨日のようによく憶えて
います。ピンポン玉サイズのホシガメが非常に飼育困難
であるのと同様に、地中海リクガメ属でも4cmという
サイズはボーダーラインぎりぎりだったからです。ただ
その時の僕はヘルマンリクガメ「ハンナ」を無事に育て
て危険サイズを乗り越えられた事に妙な自信を持ってい
た為に最終的には購入に踏み切りました。奢りでした。

入荷2個体中の1個体でした。他方に比べ、活発に動き
回り、エサの食べ方も上手く、足の蹴りも強く、腹甲が
若干柔らかいのを除けば文句無しの個体。ハンナの様に
無事危険サイズを乗り切るぞっ!と意気揚々と持ち帰り、
我が家のカメたちと合流しました。最初のうちはハンナ
の時と同じようにホシガメケージに同居させていました。
ちょうどホシガメ「まる」が鼻炎にかかって隔離した後
だった為、ホシガメケージにはホシガメ「ムガール」と
ハンナの2頭しかおらず、ヘリオスにとっては最適とま
では言わないものの決して悪環境ではありませんでした。
地中海リクガメ属特有のガッツでエサも上手く良く食べ、
また、ハンナが超幼体だった頃と同じく水も良く飲んで
放っておいてもキチンと1日にすべきことを貫徹できる
賢い子でした。

しかし、毎月の身体測定ではそれが結果に表れませんで
した。甲長も体重も目立って大きくなってくれないので
す。2ヶ月目でも大きな成長が見られなかったところで
「ハンナとは違う」という事に気づきました。それから
は日常の世話の全てにおいて、ヘリオスを優遇しました。
ケージは単独飼育ケージに移行。エサはビタミン、カル
シウムをたっぷり含ませたプリティペッツを中心に好物
の葉野菜をメインに与えました。あまりに体重が増えな
いので糞便を調べてみましたが、線虫や回虫らしきもの
は見当たらず、それでも「RidWorm」で駆虫処理
を施し、万全を期しました。3ヶ月目には甲長は伸びな
いものの体重は50g増と、やや好転の兆しが見えた事
に喜びを感じました。ところがその頃からシェルターで
寝る事が滅法多くなり、エサの時間にも引きずり出さな
いと、そのままエサに気づかずに翌日を迎える・・・と
いったような日が目立つようになり、エサに対する執着
が薄れていくのが良く解りました。頼みの好物人工飼料
プリティペッツでも2口3口食べるとすぐにシェルター
へ戻ってしまう始末・・・。心を鬼にして栄養剤を経口
投与するなどの処置をせざるを得なくなっていきました。

それから数ヶ月・・・明らかに弱ってきているヘリオス
の逆転復活を祈りながら優遇飼育を続けました。そして
10月のある夜・・・ヘリオスはホットスポットの下で
卍になって亡くなっていました。その日の昼は弱々しく
も目はパッチリと開け、珍しくエサの葉野菜も口にして
いたので「気持ち良さそうに日光浴か」とも考えられな
くもなかったのですが・・・その時は一瞬にして「違う」
と解りました。解るものですね・・・リクガメ達と長く
付き合っていると彼らの「存在」が「無」になっている
気配というか・・・雰囲気というか・・・直感によって。

久しぶりに我が家のカメたちから犠牲者を出してしまい
随分と動揺しました。ホームぺージ上で公開していない
ものの身体測定では数ヶ月前からヒョッコリ名前を連ね
ているギリシャリクガメ「アレス」(6cm)の購入が
結果的にヘリオスへの愛情を分散させてしまったのでは
と自分を責めたりもしました。しかし、普段自分自身が
自分を頼って相談をもちかけてきてくれる人々に対して
話しているとおり、こういった犠牲を無駄にしない唯一
の手段は「同じ過ちを犯さない事」、「飼育設備のより
一層の充実を図る事」であるということを胸に焼き付け、
ティッシュを敷き詰めた小さなダンボール箱にヘリオス
の亡骸を納め、火葬・埋葬しました。

最近の専門ショップでは、ごく当たり前のように3cm
前後の超幼体を販売しているのを見かけます。たしかに
ヌマガメの一部等では生命力が極めて強く、それぐらい
のサイズからでも十分育成させる事が困難でない場合も
ありますが、多くの種では、やはり細心の注意が必要な
サイズであることに間違いはありません。経費節減の為
に、また単価を安く抑えるために、こういったベビーが
店に出されるのでしょうが、僕のようにまだまだ経験の
浅い人間がこういったベビー個体を購入して死なせてし
まう現状を考えれば憂慮すべき事態なのではないかとも
感じられてなりません。もちろん責任を転嫁するつもり
など毛頭無く、今回の不幸は慎んで今後のリクガメ飼育
に活かしていくつもりです。

「最近の話」ページが10月から止まってしまっていた
のは、どうしてもこの文章の作成が進まなかったためで、
皆さんには大変ご迷惑をおかけしてしまった事をここに
お詫び申し上げます。


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