
F1のいろいろな用語を次の7つのグループに分けて、簡単に解説しています。
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(A) コースに関する用語
トラック (Track):
サーキットコースのこと。
セクター1 (Sector 1):
日本語で言えば、第1区間で、トラック上のコントロールラインから1つ目のタイム計測ポイントまでの区間のこと。
セクター2 (Sector 2):
日本語で言えば、第2区間で、トラック上の1つ目のタイム計測ポイントから2つ目のタイム計測ポイントまでの区間のこと。
セクター3 (Sector 3):
日本語で言えば、第3区間で、トラック上の2つ目のタイム計測ポイントからコントロールラインまでの区間のこと。
シケイン (Chicane):
進行方向が90度かわるタイトな連続コーナーのことで、たいていは車のスピードを抑制するために設けられている。また、シケイン前のコーナーは高速コーナーであることが多い。
ヘアピン (Hairpin):
180度折り返すきついコーナーのこと。ここのブレーキによって、このあとの数コーナーで追い抜きの可能性も生まれる。
グラベル(砂利) (Gravel trap):
コーナーの外側に設けられた砂利のことで、アクシデントや事故が生じたときに停止する場所として使われる。高速コーナーでアクシデントが生じ、すぐにその車をどけないといけないような危険な場合は、コースマーシャルがグラベルにつかまった車をもとのコースに復帰させる。
インフィールド (Infield):
ストレート区間からはずれた細かい多くのコーナーが連続する区間のこと。
縁石 (Curb):
トラック上のコーナーにある盛り上がった部分のことで、これをうまく使いこなすことがラップタイムの短縮につながる。
コーナー最内点 (Apex):
ドライバーがコーナーでターゲットにする地点のこと。
(B) 車の挙動に関する用語
オーバーステア (Oversteer):
ハンドルを切った分よりマシンが曲がってしまう現象のこと。ドライバーは修正のために、曲がる向きと逆向きにハンドルを切ってフロントを修正する。
アンダーステア (Understeer):
ハンドルを切った分よりマシンが曲がらない現象のこと。ドライバーは修正のために、曲がる向きにさらにハンドルを切ってフロントを修正する。
トラクション (Traction):
車を押さえている力をトラック表面に伝えてより速く進むための指標のこと。つまり、トラクションがよいということは、速い車であるということであり、コーナーでトラクションがよいというのは、コーナーが曲がりやすい車ということ。
トラクションコントロール (Traction control):
リアホイールのトラクションが失われるようなとき(例えば、スピン)、そのホイールがさらに多くのトラクションを得られるようにな処理をコンピュータで行うシステムのこと。つまり、車を押さえている力を効果的に使うための制御システムのこと。
エンジンストール (Engine stall):
エンジンが止まってしまうこと。フォーメーションラップやピットストップのときに起こりやすい。
ホイルスピン (Wheel spin):
タイヤが空回りしてしまう状態のこと。トラクションコントロールの性能がよければほとんど起きない。
G-フォース (G-force):
重力の単位と同じように表される物理的な力で、急激な方向,速度の変化によって生じる。ドライバーは主に、加速,減速が行われるコーナーでこの力を受ける。
(C) レース,ピットに関する用語
ポールポジション (Pole position):
スターティンググリッドにおける1番目の位置のこと。予選のタイムが最も速かったドライバーがこの位置を獲得できる。
フォーメーションラップ (Formation lap):
レースを開始する前に、きちんと車が動くかを確認するとともに、タイヤを温めるために行われる予備的な周回のこと。
ファステストラップ (Fastest lap):
レース中で1番速い周回のこと。
パルクフェルメ (Parc ferme):
予選やレース後の車が保管される場所のこと。レーススチュワート立会いのもとでの作業を除いて、この場所での一切の作業は禁止されている。
プラクティス (Practice):
金曜日と土曜日の朝に行われる練習走行のこと。プラクティスでは、主にマシンのセッティング,タイヤの評価,予選・レースに向けての調整が行われる。
予選 (Qualifying):
土曜日の午後に予選1回目,日曜日の午前に予選2回目が行われる。各ドライバーはそれぞれのセッションで1回だけアタックが許されている。最終的な予選順位は予選1回目と予選2回目の合計タイムが短いものからの順となる。天候など条件が不平等であり、予選変更の動きが持ち上がっているが、各チーム変更の合意には至っていない。
インラップ (In lap):
ピットからコースに出て最初に走るラップ(1周)のこと。タイヤを温めて車の速度が乗るような状態に持っていく。
アタックラップ (Attack lap):
予選の計測ラップのこと。
アウトラップ (Out lap):
ピットに戻るときのラップのこと。予選では特に、タイヤ温存のため、ゆっくり走る。
ポディウム (Podium):
表彰台のこと。1位〜3位までのドライバーが上がり、トロフィーをもらう。ポディウムが用意された舞台ではシャンパンファイトも行われる。
リタイア (Retirement):
アクシデントやメカニカルトラブルによって、フィニッシュせずにレースを終えること。
バックマーカー (Back marker):
周回遅れの車やドライバーのこと。周回遅れの車の後方に上位の車が近づくと、周回遅れの車は路を譲らなければならない。
セーフティーカー (Safety Car):
レース中、コース上にアクシデントなどの問題が起こったとき、アクシデントの片付けなどが行われている間、トラック上に残っている車のペースをコントロール(つまり、レースペースを遅くする)している車のこと。ピットレーンから出てきて、リーダー(1位走行の車)の前を走って、ペースをコントロールする。
スペアカー (Spare car):
各チーム、レースカーが壊れて復旧が間に合わないときやレースカーの調子が悪いときなどに備えた予備の車のこと。別名Tカー(T-car)という。
ドライブスルーペナルティ (Drive-through penalty):
レース中のペナルティとして最も多いもので、ピットレーンを制限速度で通過するペナルティのこと。このときピットインして、ピット作業を行ってはいけない。
ストップ&ゴー ペナルティ (Stop-go penalty):
レース中のペナルティでピットで10秒間静止するペナルティのこと。このときピットインして、ピット作業を行ってはいけない。
ピット (Pit):
チームオーナー,マネージャー,レースエンジニアなどがレース中にいる場所のこと。普通、これらの人のチェックモニターは日よけ,雨よけのためにこの中にある。
ピットボード (Pit board):
各チームがピットウォールからドライバーに、現在のポジションや前や後ろの車とのタイム差(インターバル)などを教えるために用いるボードのこと。
インスタレーションラップ (Installation lap):
スロットル,ブレーキ,ステアリングが正しく動作するかの確認のためにコース上で行う周回のこと。このとき、ピットから出てそのままピットに戻るので、フィニッシュラインは通過せず、タイム計測は行わない。
ジャンプスタート (Jump start):
スタートのとき、5つの赤いシグナルが消える前にグリッドから動き出してしまうこと。センサーが検知して、早まったスタートをしたドライバーにはドライブスルーペナルティが課される。
ロリポップ (Lollipop):
ピットストップのときに、車の前でドライバーに出している指示標識のこと。指示標識の図柄は各チームによって異なるが、表側は「ブレーキを作動させておく」で、裏側は車がジャッキから降ろされたときに表示する「1stギアに入れる」という内容である。
(D) タイヤに関する用語
ブリスター (Blister):
タイヤ内部が耐えうる温度を超えてしまったときに、内部に気泡がたまってしまい、それが表面に現れたもの。これがタイヤに発生するとタイヤの性能が極端に悪くなり、走行にかなりの影響を与える。また、タイヤがソフトなほど、そしてブレーキがきついほどタイヤ内部の温度が上昇しやすくなるため、ブリスターが発生しやすい。
フラットスポット (Flat spot):
激しいブレーキやスピンしたときなどにタイヤ表面にできる斑点を含む周囲一体のこと。これができると、タイヤの性能が極端に悪くなり、走行に影響を与える。
インターミディエットタイヤ (Intermediate tyre):
ドライタイヤに比べて、溝が深く,接地面(トレッド)が広いが、レインタイヤよりは溝が浅く,接地面は狭いタイヤのこと。つまり、ドライタイヤとレインタイヤの中間的なタイヤで、どちらの状況でも走ることができる。
タイヤコンパウンド (Tyre compound):
タイヤの構造を表すのに用いられるゴム混合のタイプのことで、ソウト〜ミディアム〜ハードまでさまざまな種類がある。近年のF1では、各コースの特徴に応じたタイヤを選択することがとても大切なことになっている。
タイヤウォーマー (Tyre warmer):
タイヤを装着してから、タイヤの最適温度になるのを助けるために用いる器具のこと。タイヤを完全に覆い、電気によって温める。
グリップ (Grip):
車がいろいろなポイントで得るトラクション量のこと。グリップが高いとコーナーで車をコントロールしやすい。
(E) 車の構造に関する用語
ボディワーク (Bodywork):
シャーシの中のカーボンファイバーという素材でできた部分で、ピットから車が出る前にモノコックに取り付けられるものの総称。例として、エンジンカバー,コックピット上側,ノーズコーン,バージボードなどがある。
シャーシ (Chassis):
エンジン,サスペンションが取り付けられたレーシングカーの主な部分のこと。
コクピット (Cockpit):
ドライバーが座る部分のこと。
モノコック (Monocoque):
コクピットに位置するドライバーが座る浴槽型の部品。エンジンがモノコックの後ろに取り付けられており、フロントサスペンションが前に取り付けられている。
ステアリング (Steering):
ドライバーが車を操縦するためのハンドルのこと。電子制御機能が多く備え付けられており、ドライバーはレース中、ハンドル操作以外にいろいろなボタンを押している。また、異常があった場合、すぐにはずして交換できるようになっている。
フロントウイング (Front Wing):
空気の流れをコントロールして、できるだけ車を路面に押しつけるための車の前のほうについている部品のこと。
リアウイング (Rear Wing):
空気の流れをコントロールして、できるだけ車を路面に押しつけるための車の後ろのほうについている部品のこと。
バージボード (Bargeboard):
ボディワークの一部で、フロントホイールとサイドポット先端の間に垂直に取り付けられている。これによって、車の横を流れる乱気流をできるだけ発生させないようにし、走行中のシャーシの安定性を図ることができる。
ディフューザー (Diffuser):
空気が車の下から流れていくフロアやアンダートレイと呼ばれる車のリア部分の総称のこと。空気が流れ出る速さが大きいほど、車下の空気圧が低くなり、よりダウンフォースが得られるシャーシになるので、ディフューザーの設計は極めて大切である。
バラスト (Ballast):
シャーシには最低重量が定められており、その重量に達していないときに重量を調節するために取り付けるおもりのこと。また、このおもりを取り付ける場所によって、車のバランスを変えることができる。
サイドポット (Sidepod):
ドライバー横のモノコックの両側の側面に位置する車の部品のこと。リアウイングに添う形で、ラジエーターを囲んでいる。
テレメトリー (Telemetry):
エンジンやシャーシに関する情報を逐一ピットのコンピュータへ送信するシステムのこと。エンジニアたちは送られてきたデータから車の挙動を確認している。
ブレーキバランス (Brake balance):
フロントホイールとリヤホイールのブレーキパワーをドライバーの好みで手直しするためにコクピットについているスイッチのこと。
ボトミング (Bottoming):
圧搾機がトラックに当たる場合や、サスペンション稼動部の下部がトラックに届く場合のような、シャーシがトラックと激しく当たるときのことをいう。
パドル (Paddles):
ドライバーがギアを変えるためのハンドルの奥にある左右についているレバーのようなもののこと。
フロア高さ (Ride height):
トラック表面からシャーシのフロア(一番下の部分)までの高さのこと。
アンダートレイ (Undertray):
モノコックの下側をボルトで固定した車から独立したフロア(床)のこと。
(F) 空気力学に関する用語
エアロダイナミクス (Aerodynamics):
車どうしが接近したときに発生する乱気流や空気抵抗などを考慮した空気力学のこと。F1シャーシをデザインする上での本質的な部分に関わってくる。
ダウンフォース (Downforce):
空気力学的な力の一種で、車が前進するときに発生する下向きの力のこと。この力によって、車のトラクションがよくなったり、コーナーのハンドリングがよくなったりする。
スリップストリーム (Slipstreaming):
前を走っている車に追いついて抜くときにドライバーが用いる手法のこと。前の車に追いつくと、前車のリアウイングによってドラッグが減少し、空力的な恩恵が受けられる。
ドラッグ (Drag):
車が前進するときに受けてしまう空気力学的な抵抗のこと。
整流 (Clean air):
乱流ではない空気の流れのこと。整流条件において、シャーシは最適な空力性能を得る。
乱気流,乱流 (Turbulence):
進路の妨害によって生じる空気の流れの乱れのことで、リアウイングなどにあたると空力性能を一時的に失う。
(G) その他の用語
マーシャル (Marshal):
レースの安全な走行状況を見渡すコース審判。マーシャルは次の役割を担っている。見物客が危険にさらされないようにする,見物客が競技からの危険を守る,火災の監視,車やドライバーのコースからの避難の誘導,旗を使ってドライバーへトラックコンディションなどを伝える。
スチュワート (Steward):
GPごとに任命された高い位のオフィシャルのことで、GP期間中のさまざまな決定を行う。
検査人 (Scrutineering):
車の技術的な部分のレギュレーション(=テクニカルレギュレーション)に反している部分がないことを確認する人のこと。
オンボードカメラ (On-board Camera):
車載カメラのこと。国際映像などでドライバー視点の映像が映し出されるときに用いられているカメラである。
シェイクダウン (Shakedown):
マシンの100%の能力で走る前に、新しく車の異なる部分を試す短いテストのこと。
パドック (Paddock):
チームの輸送車とモーターホームを置いておくピットの後ろの囲まれたエリアのこと。一般の人は入場できない。
アピール (Appeal):
レースオフィシャルによって不当にペナルティを受けるようなときに、チームがドライバーの代わりに異議を申し立てる行動のこと。
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