(A) はじめに…
近年のF1では,コース上でのバトルが減っていますが,ピットストップで順位を上げるということが多くなっています。したがって,ピットストップ作戦は年々重要視されています。「ピットストップ作戦を制するものは,レースを制する!」といっても過言ではないぐらいです。
(B) ピットストップを行う理由
ピットストップを行う理由には次のようなことが考えられます。
○ 2002年まで (予選レギュレーション:空タンク走行,タイヤ交換自由)
- ピットストップをしたほうがレース全体を見たときに速く走ることができる。
- 燃料を軽くして走ることで,早いラップタイムを刻むことができる。
- タイヤを酷使しても,ピットで交換してリフレッシュすることができる。
○ 2003〜2004年 (予選レギュレーション:レースを見越した燃料積載,タイヤ交換自由)
- ピットストップをしたほうがレース全体を見たときに速く走ることができる。
- 予選(グリッド)の順位に大いに関係するため,ピットインして再給油は必須となっている。
- 燃料を軽くして走ることで,タイヤをいたわることができる。
- タイヤを酷使しても,ピットで交換してリフレッシュすることができる。
○ 2005年 (予選レギュレーション:レースを見越した燃料積載,タイヤ交換は基本不可)
- ピットストップをしたほうがレース全体を見たときに速く走ることができる。
- 予選(グリッド)の順位に大いに関係するため,ピットインして再給油は必須となっている。
- 燃料を軽くして走ることで,早いラップタイムを刻むことができる。
- 燃料を軽くして走ることで,タイヤをいたわることができるので,最後まで安定したラップタイムを刻むことができる。(2005年のレギュレーションでは特に重要)
(C) 作戦の決定方法
トラブル等がなければ,基本的には1回,2回,3回の作戦が考えられます。
ピットストップの決定方法は,基本的にはコンピューターシミュレーションで行います。シミュレーターに燃費,燃料重量に対するラップタイム変化率,タイヤのタレ,ピットストップ時のロスタイムなどの要素をコンピューターに打ち込むと,各ピットストップで要するタイム,レース全体のタイムなど基本となるデータが出力されます。
このシミュレーション結果を基本として,サーキット特性(抜きやすいか否か)も考慮し,ライバルチームの出方を予測し(これはかなり大事なポイント(※)),レースでどの作戦が最適かを選択することになります。したがって,レース全体のタイムが最速にならないピットストップ作戦を組み立てることもしばしばあります。
(※) 例えば,2ピットストップの車と3ストップの車が半分半分ぐらいだとします。3ストップの車は,2ストップの車より速くピットに入ることになり,予選は楽に戦えて,前のほうのグリッドを獲得しやすくなります。しかし,3ストップの車は,第2スティントのときに,遅いチームの2ストップの車のペースについていかないといけないいうことがしばしば起こります。こうなると,第1スティントで作ったマージンも消えてしまい,下手をすれば,第2〜3スティントのピットストップで逆転される可能性が高くなります。これは1つの例に過ぎませんが,ピットストップの仕方ひとつでレース展開が大きく変わるわけです。
|