
Round 17 ブラジルGP,サンパウロ
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Grand Prix of Brazil, Säo Paulo |
2005/09/23 (Fri) - 2005/09/25 (Sun) |
*コース概要+GP説明* (日本との時差) -12h |
コース |
Autodromo Jose Carlos Pace |
距離 |
4.309 km × 71 Lap - 0.030 km = 305.909 km |
説明 & 特徴 |
1977年に飛行機事故で他界した、ブラジル人F1ドライバーの名前からつけられたこのサーキットは、60年以上前に建設された珍しい反時計回りのサーキット。ブラインドコーナーをはじめとする難しいコーナーとタイトなインフィールドセクションが特徴である。さらに路面はかなりバンピーなため、セットアップが非常に難しい。ホームグランプリを戦うRubens Barrichelloにとっては是非とも地元で勝利したいところ。
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*コースレイアウト* |
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[ブラジルGP・プレビュー]
このグランプリでの一番の注目はやはり,ドライバーズチャンピオンシップ,アロンソとライコネンの戦いである。2人とも非常にアグレッシブなドライバーで,保守的な走りはしないところが真のドライバーらしくていいところである。
・読めない天候
今年は昨年より1ヶ月程度開催が早いが,雨の要素は全く拭い去ることができず,突然降り出すという可能性もある。
予選セッションで降られると,グリッド大混乱も十分にあり得る。
ここは1周が短いので,同じ部分を車が通る頻度が前戦ベルギーGPより大きいため,路面は乾きやすいと考えられる。そういった意味でも雨が降った場合は,今回は早めにタイヤを代えるドライバーが少しは有利かもしれない。(これは完全にタイミングの問題になってくるが…)
・マクラーレンとルノー
前戦の結果から,各チーム,予選セッションのスタート順位が遅めが1台,早めが1台ということになる。このサーキットは1周が短いので,距離の面については予選でのタイム差がつきにくい。しかし,タイムアタック順では,いつも以上の不利さではないにしても,距離の面でのタイム差がつきにくいことから,早めの出走では下位に沈む危険性がある。
マクラーレンは,少々燃料を多めにつんでアタックしても,ポールを取れるだけのポテンシャルはあるだろうが,ルノーは最近追い上げているB・A・R,トヨタに対して大きな差はないので,タイムアタックで数台に前に出られると苦しい展開になる。いつも出てくるが,トゥルーリに前に出られるとアロンソとしては苦しくなる。バトンがさらに前だったりすると,表彰台を失う危険性すらある。したがって,ライコネンは重め(28~30周/71周),モントーヤ・アロンソは普通ぐらい(24~26周/71周),フィジケラは少し軽め(21~24周/71周)の燃料を積んでくるのではないかと思われる。
・B・A・Rの戦略如何でチャンピオンシップが決まる?
今年のB・A・Rは後半に入って速さとしては悪くないが,ストレートでの速さの伸びが不足しているため,テクニカルコーナーで追いついたとしてもパッシングは簡単にはできない状況が続いている。この状況を打破できるかが今回のB・A・Rとしてのポイントになるだろう。
パトンはアロンソより1〜2周燃料を多く積んで,グリッドで前に出られれば最高であるが,それができないとしても1回目のピットで抜かせるだけのポジションにいれば,表彰台の獲得のチャンスはある。
一方,琢磨は予選10番手降格が決まっているだけに,1ストップ作戦でザウバー,レッドブルに引っかからない作戦を取って何とかポイントを獲得してほしい。とにかく無理をせず何とかポイントを!そうすれば次の鈴鹿でいいアタック順が得られるのだから…。
・トヨタvsフェラーリ
トヨタは少なくともブラジルではBスペックは諦めたようで,車の進化にトゥルーリが文句を言うという記事も見た。ミハエルが言うように,フェラーリの車が劇的に変化するとは思えない(というより劇的に変化させるつもりもない)ので,これまでのポテンシャルからいけば,トヨタがやや有利ということになるが,BSがミドル〜ハードのニュースペックのタイヤを持ち込んでこれば,いい戦いになるだろう。そこにB・A・Rがいかに絡んでくるかがコンストラクター3位,4位争いに効いてくる。
2003年のブラジルGPの波乱同様,今年のブラジルGPも天候次第で面白いレース展開が期待される。
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▼予選セッションの結果(Qualifying Session Result) |
Pos |
No. |
Driver (Nat) |
Team |
Time |
Sector 1 |
Sector 2 |
Sector 3 |
出走順 |
Tyre |
1 |
5 |
Fernando Alonso (ESP) |
Renault |
1:11.988 |
18.231 |
36.724 |
17.033 |
19 |
MI |
2 |
10 |
Juan Pablo Montoya (COL) |
McLaren |
1:12.145 |
18.323 |
36.799 |
17.023 |
7 |
MI |
3 |
6 |
Giancarlo Fisichella (ITA) |
Renault |
1:12.558 |
18.422 |
37.109 |
17.027 |
1 |
MI |
4 |
3 |
Jenson Button (GBR) |
B・A・R |
1:12.696 |
18.414 |
36.950 |
17.332 |
18 |
MI |
5 |
9 |
Kimi Räikkönen (FIN) |
McLaren |
1:12.781 |
18.940 |
36.790 |
17.051 |
20 |
MI |
6 |
15 |
Christian Klien (AUT) |
Red Bull |
1:12.889 |
18.432 |
37.193 |
17.264 |
12 |
MI |
7 |
1 |
Michael Schumacher (GER) |
Ferrari |
1:12.976 |
18.339 |
37.367 |
17.270 |
3 |
BS |
8 |
16 |
Jarno Trulli (ITA) |
Toyota |
1:13.041 |
18.573 |
37.184 |
17.284 |
5 |
MI |
9 |
12 |
Felipe Massa (BRA) |
Sauber |
1:13.151 |
18.534 |
37.229 |
17.388 |
11 |
MI |
10 |
2 |
Rubens Barrichello (BRA) |
Ferrari |
1:13.183 |
18.414 |
37.450 |
17.319 |
16 |
BS |
11 |
17 |
Ralf Schumacher (GER) |
Toyota |
1:13.285 |
18.670 |
37.304 |
17.311 |
14 |
MI |
12 |
11 |
Jacques Villeneuve (CDN) |
Sauber |
1:13.372 |
18.634 |
37.313 |
17.425 |
15 |
MI |
13 |
18 |
Tiago Monteiro (POR) |
Jordan |
1:13.387 |
18.809 |
37.264 |
17.314 |
13 |
BS |
14 |
7 |
Mark Webber (AUS) |
Williams |
1:13.538 |
18.761 |
37.450 |
17.327 |
17 |
MI |
15 |
8 |
Antonio Pizzonia (BRA) |
Williams |
1:13.581 |
18.587 |
37.605 |
17.189 |
6 |
MI |
16 |
14 |
David Coulthard (GBR) |
Red Bull |
1:13.844 |
18.677 |
37.777 |
17.390 |
4 |
MI |
17 |
19 |
Narain Karthikeyan (IND) |
Jordan |
1:14.520 |
18.941 |
38.077 |
17.502 |
10 |
BS |
18 |
21 |
Christijan Albers (NED) |
Minardi |
1:14.763 |
18.923 |
38.329 |
17.511 |
9 |
BS |
19 |
4 |
Takuma Sato (JPN) |
B・A・R |
No Time |
------ |
------ |
------ |
2 |
MI |
20 |
20 |
Robert Doornbos (NED) |
Minardi |
No Time |
------ |
------ |
------ |
8 |
BS |
Note: Trulli receives 10 position grid penalty for engine change, therefore starts 18th. Sato receives 20 position grid penalty for engine change and previous GP penalty, therefore starts 20th. |
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[予選・コメント] 天候:くもり 路面:dry
ライコネンの自らのミスによって,グリッド5番手スタートとしてしまい,アロンソがPPを獲得した。このグランプリではルノー勢も十分にマクラーレンに対抗できる力を持っており,アロンソとしては久々の優勝を味わうことができるかもしれない。
・マクラーレンの作戦は?
ライコネンがセクター1でミスをしてしまい,セクター2,セクター3へと響いたため,どの程度燃料を積んでいるのかがますます分かりにくくなかったが,少なくともモントーヤよりも燃料は多いはずである。モントーヤは早いアタックの割にタイムが非常によかったので,ここでもマクラーレンのポテンシャルの高さが感じられる。1回目のピットストップをアロンソより引っ張った場合は,ライコネンにも勝機はあると思う。
・ルノーは速さを取り戻した
ヨーロッパラウンドを終わってからも必死に開発を続けているルノー。開発の成果もあって,結果が出つつある。マシンの開発で,フロントウイングのバラストがなかなか面白いポイントだった。フィジケラは出走が1番だったので燃料は少なめだと考えられるので,モントーヤやバトンと争うことになるだろう。
・フェラーリは復活の兆しあり?
フリー走行では調子の良かったフェラーリだが,予選ではバリチェロが思うようにタイムが伸びず,9番グリッドからのスタートとなった。フリー走行では調子が良かったので,レースでの順位アップに期待したい。バリチェロの燃料量はミハエルとさぼと変わらず,25周前後ではないかと思われる。
・B・A・Rは2人で異なる作戦を!
バトンは確実なアタックで4番手を獲得した。B・A・Rはインフィールドのセクター2は速いが,直線区間のセクター1, 3がルノーやマクラーレンより遅いので,表彰台はやや苦しいかもしれない。琢磨はベルギーのペナルティとエンジン交換ペナルティで20番手降格が決定しているので,アタックラップを行わず1ストップ作戦が確定した。今回はピットからではなくグリッドからのスタートだと思われるので,ぜひとも1周目でごぼう抜きを披露してもらいたい。トヨタ勢が今一歩なので,ひょっとすればポイント獲得のチャンスもある。
・トヨタはやや苦戦
フェラーリからも完全に離されてしまっている上に,トゥルーリのエンジン交換によって,今回のポイント獲得は非常に厳しいだろう。これまで信頼性抜群だったトヨタエンジンが壊れたのは想定の範囲外に違いない。
・クリエン&マッサ&ビルヌーブ
クリエンが完璧なアタックラップによって,6番グリッドを獲得したのは驚きだった。予選もしっかりこなせるということでまた1つ評価を上げたと思う。レースペースがどうかいうところが非常に興味深い。
マッサは燃料軽めでビルヌーブが重めということで,ベルギーのとき同様,天候次第では面白い展開が予想される。
若干の雨が予想されるブラジルGP。見所満載ではあるが,深夜開始が玉に瑕か。
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▼レース結果(Race Result) |
Pos |
No. |
Driver (Nat) |
Team |
Lap |
Pit |
Grid |
Tyre |
Time / Retire |
1 |
10 |
Juan Pablo Montoya (COL) |
McLaren |
71 |
2 |
2 |
MI |
1:29:20.574 |
2 |
9 |
Kimi Räikkönen (FIN) |
McLaren |
71 |
2 |
5 |
MI |
+2.5 secs |
3 |
5 |
Fernando Alonso (ESP) |
Renault |
71 |
2 |
1 |
MI |
+24.8 secs |
4 |
1 |
Michael Schumacher (GER) |
Ferrari |
71 |
2 |
7 |
BS |
+35.6 secs |
5 |
6 |
Giancarlo Fisichella (ITA) |
Renault |
71 |
2 |
3 |
MI |
+40.2 secs |
6 |
2 |
Rubens Barrichello (BRA) |
Ferrari |
71 |
2 |
9 |
BS |
+69.1 secs |
7 |
3 |
Jenson Button (GBR) |
B・A・R |
70 |
2 |
4 |
MI |
+1 Lap |
8 |
17 |
Ralf Schumacher (GER) |
Toyota |
70 |
2 |
10 |
MI |
+1 Lap |
9 |
15 |
Christian Klien (AUT) |
Red Bull |
70 |
2 |
6 |
MI |
+1 Lap |
10 |
4 |
Takuma Sato (JPN) |
B・A・R |
70 |
1 |
19 |
MI |
+1 Lap |
11 |
12 |
Felipe Massa (BRA) |
Sauber |
70 |
2 |
8 |
MI |
+1 Lap |
12 |
11 |
Jacques Villeneuve (CDN) |
Sauber |
70 |
2 |
20 |
MI |
+1 Lap |
13 |
16 |
Jarno Trulli (ITA) |
Toyota |
69 |
2 |
17 |
MI |
+2 Laps |
14 |
21 |
Christijan Albers (NED) |
Minardi |
69 |
2 |
16 |
BS |
+2 Laps |
15 |
19 |
Narain Karthikeyan (IND) |
Jordan |
68 |
3 |
15 |
BS |
+3 Laps |
- |
18 |
Tiago Monteiro (POR) |
Jordan |
55 |
2 |
11 |
BS |
Mechanical |
- |
7 |
Mark Webber (AUS) |
Williams |
45 |
2 |
12 |
MI |
+26 Laps |
- |
20 |
Robert Doornbos (MON) |
Minardi |
34 |
2 |
18 |
BS |
Engine |
- |
8 |
Antonio Pizzonia (BRA) |
Williams |
0 |
0 |
13 |
MI |
Accident |
- |
14 |
David Coulthard (GBR) |
Red Bull |
0 |
0 |
14 |
MI |
Accident |
[Fastest Lap] Kimi Räikkönen (FIN), 1:12.268, Lap 29 |
Note: Villeneuve forced to start from pit lane as penalty for infringement of parc ferme regulations. |
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[レース・コメント] 天候:くもり 路面:dry
2戦を残して2005年のドライバーズチャンピオンがフェルナンド・アロンソに決定した。(ただし,正式には,シーズン終了後の表彰の際に言い渡される。)今年は序盤がルノー・アロンソペースだったことと,マクラーレン・ライコネンが中盤から後半にかけて車の速さは際立っていたが,信頼性の問題が多かったことで,アロンソのリードが優位に保たれて,タイトルを手にすることができた。
ブラジルGPについては,朝のシャワーのせいで路面がグリーンになっていたために,各車走行が難しそうだった。特にソフトタイヤをチョイスしたドライバーはタイヤのグレイニングがひどく,ラップタイムがやや伸び悩んだ。しかし,マクラーレンの速さは別格で,第1スティントが終わった時点で勝負は決していた。
・マクラーレン,ようやく1-2フィニッシュ
ライコネンが5番手スタートだったことが響き,序盤にモントーヤがライコネンを大きく引き離すことができた。また,セーフティーカーが退いてのリスタート後にモントーヤがアロンソをパスしたのが最大のポイントだったと思われる。あれのおかげでモントーヤは優勝することができた。一方,ライコネンは,1回目のピットストップをかなり引っ張ったので,1ストップ作戦にしてモントーヤを抜かすチャンスがあるに見えたが,おそらく燃料タンクの問題で残り40周を走り切る燃料は厳しかったのではないかと思われる。残り2戦,信頼性の問題さえでなければ,コンストラクターズタイトルはマクラーレンの手に渡るだろう。
・ルノー,2人明暗を分ける
ドライバーズタイトルを決めたアロンソは第1スティントではマクラーレン勢と必死に戦っていたが,アロンソがマクラーレン勢より早めにピットインしたことで,3位死守の走りに変えた。1回目のピットストップでフィジケラがミハエルに抜かれたことで,フィジケラの援護がなくなったために,ミハエルとの争いになったが,車をいたわりながらの走行で堅実なプレーを見せた。フィジケラは前述のとおり,1回目のピットストップによって勝負が決まってしまった。フィジケラのほうが先に入ったため,ミハエルはその間にタイムを稼ぎ,燃料を同じ分積んだとしてもまた後にピットインすることになるので,2回のピットストップのうちに逆転することが可能となった。ここのところ,アロンソとフィジケラはどのGPでも0.3〜0.7秒/周の差がある。ドライバーの腕なのか,それともシャーシのとの相性によるものなのか…
・復活! フェラーリ
フリー走行から調子が良かったフェラーリ勢。レースでも2人ともアグレッシブな走りだった。タイヤも随分ソフト寄りにしたが,あのようなダスティーな路面でも機能したことから,今後のタイヤ開発は一歩前進したのではないだろうか。これまで,タイヤに苦しめられてきただけにフェラーリも安心のレースだっただろう。ミハエルはフィジケラを料理するという最大の仕事を達成した。バリチェロはバトンに10周以上も抑えられタイムを失ったため,フィジケラに挑戦する機会を失った。予選ポジションがもう少しよければ,4位あたりのチャンスも十分にあったと思う。
・うまくまとまらないB・A・R
バトンのリアタイヤのグレイニング,琢磨のリアサスペンションによって,思うような成績を残せなかったブラジルGP。単純に全体のパッケージの問題だと思う。初日のフリー走行でややマシンバランスに苦しんでいたので,グリーンな路面では苦しいセットアップだったのかもしれない。琢磨は,1回目のピットストップまで非常にいい感じで飛ばしていて6〜7位入賞も可能であったが,またしてもテクニカルトラブルによって,ポイントが遠ざかっていった。リタイアも考えたぐらいだったので,2台とも鈴鹿に向けて,まだましな予選アタック順が得られただけでもよかったと言える。
・我慢のトヨタ
ラルフが我慢の走りで1ポイントを獲得するのが精一杯となった。ラルフの作戦はやや引っ張った2ストップ作戦だったが,これが功を奏した。ラルフはセットアップが決まっていなかったことを考慮すると,1ポイント獲得は止むを得ないと思われる。これでコンストラクターズ3位争いをしているフェラーリとの差が17ポイントに広がりかなり苦しくなった。
上にはあげなかったが,ザウバー勢,クリエンも含めてくっきりと車の能力が結果に反映された。鈴鹿GP,中国GPと似た傾向が続くサーキットなだけにトヨタ,B・A・Rの日本GPでの巻き返しに期待である。
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[back]
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