F1ファンのあなたに必須!! 2005年F1グランプリの開幕から第7戦までを分析し振り返るDVD

Round 16  ベルギーGP,スパ-フランコルシャン

Grand Prix of Belgium, Spa-Francorchamps
2005/09/09 (Fri) - 2005/09/11 (Sun)


 *コース概要+GP説明*        (日本との時差) -7h
コース  Intercommunale du Circuit de Spa-Francorchamps
距離  6.973 km × 44 Lap = 306.812 km
説明

特徴
 スパ−フランコルシャンは低速、高速入り混じった複雑なレイアウト。今では少なくなった“ドライバーズサーキット”として名高く、このサーキットを好むドライバーは多い。1コーナーのヘアピン(ラ・ソース)を抜けたドライバーは全開で加速し、大きな壁に見えるほど急勾配のオー・ルージュに300 km/h近い速度で飛び込んでいく。このオー・ルージュをいかにクリアするかが、ケメル・ストレートで最高速を稼ぐポイントとなる。
 *コースレイアウト*


[ベルギーGP・プレビュー]

 昨年に引き続いて,このベルギーGPでドライバーズタイトルが決まるかもしれない。昨年はミハエルのベルギーまでの圧倒的勝利でベルギーも勝利でタイトルを決めるかと思われたが,タイヤの温まり具合が悪く,ライコネンに勝利を奪われた。しかし,表彰台には上り,タイトルは決定付けた。

・ドライバーズチャンピオン決定か?
 今年の状況を整理すると,イタリアGPまでで
Drivers Points → アロンソ:103 pts,ライコネン:76 pts
Constructors' Points → ルノー:144 pts,マクラーレン:136 pts
となっている。残り4戦でアロンソは27 ptsのリードで,このGPでライコネンより4 pts以上多く稼げばタイトルが確定する。この状況はアロンソとしてはかなり楽である。しかし,コンストラクターのほうはうかうかできない状況にある。8 pts差はコンストラクターのほうならすぐにひっくり返せてしまう。残り4戦,マクラーレンの信頼性に問題がなければ,コンストラクターズチャンピオンはマクラーレンが獲得するのが濃厚である。

・マクラーレンとルノー
 マクラーレンもルノーもほぼすべてのサーキットで速さを持っており,特に速いのがマクラーレン。しかし,マクラーレンは前戦でタイヤトラブルを抱えるなど速さはあっても安定性がない。スパはモンツァに比べて,タイヤのタレは小さいと思うので,モンツァで起きたようなトラブルは起こりにくいと考えられるが,その他の信頼性の面ではやはりマクラーレンは不確定要素が多い。

・復活なるかB・A・R
 前戦イタリアGPでは,給油リグの問題から2人ともに影響が出てしまい,残念な結果となってしまった。B・A・RもGPが始まる前から言っていたが,今年のシャーシ自体はモンツァのようなダウンフォースを減らした超高速サーキットには合っていなかった。ベルギーは中〜高速サーキットなので,シャーシとサーキットとの相性は悪くないだろう。マシン&エンジンのアップデートで,今度こそルノーと勝負できるかがポイントとなってくる。

・トヨタとフェラーリ
 ここ3戦ぐらいトヨタは波に乗って着実にフェラーリとの差を縮めてきている。残り4戦で8 ptsの差なので,現在のポテンシャルからいけば,トヨタ有利のような気もする。しかし,フェラーリとてそう簡単に引き下がるようなチームではない。イタリアGPで使用したタイヤはトルコGPで惨敗を喫したものと似たような(あるいはほぼ同じ)スペックだった。1週間で新しいタイヤを持ち込むのは不可能かもしれないので,このスパではなんとか耐えて,ブラジル以降で挽回の機会をうかがっているだろう…

・2ストップ作戦か,3ストップ作戦か
 このコースもイタリアに引き続いて,スタートでのアクシデントが起こりやすいので,予選で前のほうを獲得することが求められる。しかし,ピットストップにかかるロスタイムがやや大きいので,今回もほとんどのチームが2ストップ作戦でくると思われる。このサーキットは1周が長いので,ピットストップのタイミングは1周,2周で大きな違いが生じる。周回数(全部で44周)をちょうど3等分した14周目あたり〜17周目あたりに1回目のピットストップを持ってくるチームが多いのではないだろうか。よいグリッドを獲得するために,フェラーリやウイリアムズあたりはもしかしたら,10周目ぐらいで1回目のピットストップを行うかもしれない。

・スパウェザーに注意
 今年は一度も雨のレースが行われていないが,このコースは昨年ならば予選で雨が降って大混乱となり,グリッドも番狂わせが生じた。大雨ならばBSがやや有利と思われるだけに,フェラーリとしては是が非でも雨が降ってもらいたいところだろう。

 個人的には,ベルギーGPには雨を少し期待したいのと,コンストラクターの1位−2位の争いと3位−4位の争いがポイントである。


▼予選セッションの結果(Qualifying Session Result)
Pos No.  Driver (Nat) Team Time Sector 1 Sector 2 Sector 3 出走順 Tyre
1 10  Juan Pablo Montoya (COL) McLaren 1:46.391 29.143 47.193 30.055 20 MI
2 9  Kimi Räikkönen (FIN) McLaren 1:46.440 29.221 47.154 30.065 17 MI
3 6  Giancarlo Fisichella (ITA) Renault 1:46.497 28.821 47.762 29.914 18 MI
4 16  Jarno Trulli (ITA) Toyota 1:46.596 29.412 46.834 30.350 16 MI
5 5  Fernando Alonso (ESP) Renault 1:46.760 29.026 47.850 29.884 19 MI
6 17  Ralf Schumacher (GER) Toyota 1:47.401 29.481 47.568 30.352 15 MI
7 1  Michael Schumacher (GER) Ferrari 1:47.476 29.535 47.383 30.558 11 BS
8 12  Felipe Massa (BRA) Sauber 1:47.867 29.285 48.223 30.359 12 MI
9 3  Jenson Button (GBR) B・A・R 1:47.978 29.645 47.817 30.516 13 MI
10 7  Mark Webber (AUS) Williams 1:48.071 29.459 48.171 30.441 7 MI
11 4  Takuma Sato (JPN) B・A・R 1:48.353 29.626 48.286 30.441 5 MI
12 14  David Coulthard (GBR) Red Bull 1:48.508 29.533 48.581 30.394 6 MI
13 2  Rubens Barrichello (BRA) Ferrari 1:48.550 29.564 48.359 30.627 9 BS
14 11  Jacques Villeneuve (CDN) Sauber 1:48.889 29.353 49.037 30.499 10 MI
15 8  Antonio Pizzonia (BRA) Williams 1:48.898 30.651 48.671 29.576 14 MI
16 15  Christian Klien (AUT) Red Bull 1:48.994 29.575 48.839 30.580 8 MI
17 20  Robert Doornbos (NED) Minardi 1:49.779 29.623 49.217 30.939 3 BS
18 21  Christijan Albers (NED) Minardi 1:49.842 29.537 49.711 30.594 2 BS
19 18  Tiago Monteiro (POR) Jordan 1:51.498 30.039 50.283 31.176 4 BS
20 19  Narain Karthikeyan (IND) Jordan 1:51.675 30.129 50.171 31.375 1 BS
 Note: Fisichella receives 10 position grid penalty for engine change, therefore starts 13th.

[予選・コメント]  天候:晴れ  路面:dry(ところどころwet)

上位のグリッドは特に言うこともなく,いつもと同じ傾向であった。マクラーレンが速く,次にルノー,そしてトヨタ。しかし,マクラーレンにとっては,フロントロー独占は4年ぶりのことだとか… 2日目は1日目の雨から少し脱出して,路面がドライでの走行が行われたが,また明日のレースは雨の公算が大きい。そのあたりも含めて,今日のレースを考えてみたい。

・マクラーレンvsルノー
 予選のタイム差からいけば,これまでのグランプリより差が小さいように思われる。しかし,ここで問題なのが,明日の雨に対するセッティングである。ウェットセッティングにすればするほど,ストレートのタイムが伸びないため,今回のGPだと,Sector 1とSector 3でタイムをロスすることになる。
 イタリアならば,予選でも,マクラーレンはコンスタントに(=どのセクターでも)ルノーより速かった。今回は,マクラーレンは明日のレースを見据えて,やや少しウェット目にふってきているのが,セクタータイムとトップスピード計測から分かる。
 したがって,雨が降ればマクラーレンに有利にはたらくことになると思われる。

・トヨタのセッティングは?
 トヨタのセッティングは,タイムやスピードとラップからだけでは,いまいち汲み取りにくいが,どちらかというとウェットで少し燃料が軽めなのではないかと推測される。しかし,最近,トヨタは力をつけているので,1回目のピットストップは平均的なときに行うかもしれない。

・フェラーリはウェット寄りのセッティング
 フェラーリはチーム監督もドライバーも言っているとおり,セッティングはウェットにふってきている。これはセクタータイム,トップスピードから明らかである。Sector 1,Sector 3はミナルディとほぼ同タイムであることも興味深い。雨が降れば,BSウェットタイヤの性能が発揮されるのか,大注目ポイントである。ミハエルよりもバリチェロのほうがウェットセッティングで燃料多めのコンサバティブな作戦のように感じられる。

・B・A・Rもウェット寄り?
 このグランプリもトヨタ,フェラーリと争うことになると思うが,(何度もいっているように)基本的にはSector 1でのトップスピードが遅いので,ウェット寄りであると考えられる。これで燃料がトヨタより多めだとすると,完全な三つ巴の争いとなるだろう。

・その他気になるポイント
 ザウバーはチームで作戦を分けてきており,マッサはドライ寄りのセッティング,ビルヌーブはウェット寄りのセッティングで,マッサは燃料は比較的軽いと思われる。ジョーダンとミナルディを比較すると,ミナルディ勢はドライ寄りのセッティング,ジョーダンはフルウェットセッティングであると思われる。タイム上はミナルディ有利かと思われがちだが,雨が降ればジョーダンにも上位進出のチャンスあり…?

このように各チームの燃料搭載量も不明かつセッティングもいまいちつかめないので,第1スティントのみならず,レース終盤まで展開がまったく読めない。雨が降れば混乱も予想されるだけに,選挙特番終了後の2:45からのスタートとはいえ,見逃すことはできない!!


▼レース結果(Race Result)
Pos No.  Driver (Nat) Team Lap Pit Grid Tyre  Time / Retire
1 9  Kimi Räikkönen (FIN) McLaren 44 2 2 MI  1:30:01.295
2 5  Fernando Alonso (ESP) Renault 44 2 4 MI  +28.3 secs
3 3  Jenson Button (GBR) B・A・R 44 3 3 MI  +32.0 secs
4 7  Mark Webber (AUS) Williams 44 4 9 MI  +69.1 secs
5 2  Rubens Barrichello (BRA) Ferrari 44 3 12 BS  +78.1 secs
6 11  Jacques Villeneuve (CDN) Sauber 44 1 14 MI  +87.4 secs
7 17  Ralf Schumacher (GER) Toyota 44 4 5 MI  +87.5 secs
8 18  Tiago Monteiro (POR) Jordan 43 2 19 BS  +1 Lap
9 15  Christian Klien (AUT) Red Bull 43 3 16 MI  +1 Lap
10 12  Felipe Massa (BRA) Sauber 43 3 7 MI  +1 Lap
11 19  Narain Karthikeyan (IND) Jordan 43 2 20 BS  +1 Lap
12 21  Christijan Albers (NED) Minardi 42 2 18 BS  +2 Laps
13 20  Robert Doornbos (MON) Minardi 41 3 17 BS  +3 Laps
14 10  Juan Pablo Montoya (COL) McLaren 40 2 1 MI  +4 Laps / Accident
15 8  Antonio Pizzonia (BRA) Williams 39 4 15 MI  +5 Laps / Accident
- 16  Jarno Trulli (ITA) Toyota 34 3 3 MI  Accident
- 14  David Coulthard (GBR) Red Bull 18 2 11 MI  Engine
- 1  Michael Schumacher (GER) Ferrari 13 2 6 BS  Accident
- 4  Takuma Sato (JPN) B・A・R 13 2 10 MI  Accident
- 6  Giancarlo Fisichella (ITA) Renault 10 0 13 MI  Accident
 [Fastest Lap] Ralf Schumacher (GER), 1:51.453, Lap 43

[レース・コメント]  天候:くもり  路面:wet→dry

今シーズンでは最も展開が読めないトリッキーなレースだったのではないかと思われる。ライコネン,アロンソは無理のないしっかりとした自分のレースを行い,それぞれ表彰台を獲得した。観客の立場から言えば,路面がwet→dryと変わる中でのピット戦略が複雑に絡み合った面白いレースであったことは間違いないだろう。

・マクラーレンとルノー
 最近,常にこの2チームを一緒に考えてしまうが,これはポテンシャルが似通っており,タイトル争いをしているためである。序盤のフィジケラのリタイアによって,各チーム,ドライに変えるか否かの決断を迫られることとなったが,この2チームに関しての決め手を考える。マクラーレンの場合は,セーフティカーが入り,1-2体制だったので,2人のピットに入るまでの時間をコントロールすることができ,2人とも十分な給油を行ってピットアウトができたため,無理せずインターミディエットのままだった。ルノー(アロンソ)の場合は,とにかく無理なくポイントを獲得のいうのが大前提となるので,レインのままだったということだろう。このピットストップ以降は,マクラーレンのチームオーダーをうまく交わした戦術によって,ライコネンが1位になり,モントーヤがクラッシュするまでレースは淡々と進んでいった。

・B・A・Rはまたしても判断ミス
 今回もB・A・Rチームの判断ミスによって,1回目のピットストップでドライに2台とも履き替えてしまい,さらに2周後あたりにインターミディエットに戻さなければならない無駄をやってしまった。今回は各チームそのようなミスをやっていたとはいえ,少し賭けに出すぎた。その無駄なピットストップさえなければ,悠々2位になれていただけにもったいない。(今回はB・A・Rはかなりのウェット寄りのセッティング,ルノーはドライ寄りのセッティングのため,今回のような天気では後半にルノーをパスするのは簡単だったはず) また,琢磨については特に言うこともないが,一言だけ,「レースは焦ってはいけない」と言いたい。このアクシデントにより,次のブラジルGPは予選10番手降格が確定し,厳しい戦いとなる。
 来期はどうもバトンはB・A・Rに残留しそうな感じなので,琢磨は3rdドライバーに降格ということになるだろう。もし,バトンが残留しなかったとしても,チームとしてはこうミスの多いドライバーを2ndに置くわけにはいかないのではないだろうか。

・トヨタも賭けに出て失敗
 ラルフが非常によいタイミングで1回目のピットストップを行ったので,1回目のストップが終わった時点で2位につけていたが,給油量が少なく,ドライタイヤに変えるかどうかで2回目のピットストップのときに誤った判断をしてしまった。ラップタイム的にはあの時点ではドライとさほど変わらなかったかもしれないが,今年のドライタイヤは1セットで300kmを走りきらなければならないのでコンパウンドは硬めであり,温度が上がりにくいことから,ドライタイヤに変えてもグリップがぜんぜん得られなかったと考えられる。2回目のミスさえなければ,表彰台も考えられただけに悔しいミスとなった。トゥルーリのほうは,1回目から賭けに出て,完全な誤りだった。トゥルーリ自身はインターミディエットのままがよいと感じていたが,チームの判断で誤った選択となってしまった。2台とも高得点のチャンスがあり,フェラーリとの差を縮めるチャンスだったことを考えると残念である。

・フェラーリはインターミディエットも今ひとつ
 ミハエルが1周目にラルフを抜かして,アロンソをつめていたとこまではよかったが,1回目のピットストップで賭けに出て失敗してしまった。今年はフェラーリにも運がないのがありありと分かる。バリチェロは堅実なレースを行って久しぶりにポイントを獲得することができた。次戦ブラジルGP以降では,ニュースペックタイヤで残り3戦に望むようなので,優勝のチャンスがあるのか,今から楽しみである。

・ザウバー勢,ウィリアムズ勢も賭けに出るが…
 ビルヌーブの1ストップ作戦は見事であり,堅実に6位,3ポイントを獲得した。マッサはあの時点でもドライタイヤ交換は早すぎただめ,表彰台の可能性を棒に振ってしまった。ウィリアムズ勢は1回目のピットストップでドライタイヤに2台とも交換したためにもう一度ピットに入る羽目になり順位を落とすが,ウェバーのドライタイヤの交換時期が適切で終盤ごぼう抜きを行えた。

・ジョーダン勢はフルウェットセットアップ
 モンテイロは,インターミディエットのまま無理せず,確実に走りきり,8位入賞を達成した。セッティングも完全にフルウェット仕様だっただけによかったかもしれない。これで連続完走記録は16に伸び,開幕からの連続完走は2位タイに並んだ。

レッドブルについてもタイヤ選択の誤りさえなければ,簡単にポイントを取っていただろう。このように,今回のグランプリはタイヤ交換がかなりのポイントとなり,それによって順位が大きく入れ替わったレースだった。ちなみに概算ではあるが,タイヤ交換のミスによるロスタイムは,
  ピットでのウェット→ドライ:25 secs
  コース上でのロス:30〜60 sec
  ピットでのドライ→ウェット:25 secs
  計:80〜110 sec
となり,大きく順位を落とすのも納得である。逆にこれを挽回したバトンやウェバーあたりは,やはりこのGPではこのような天気に対してはポテンシャルが高かっただけにもったいない感じである。



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