老婆を呼ぶ波の音

 

日本海の

冬の海は

薄暗くて

とても淋しい。

 

 

そんな、日本海に面したある海辺の村に

何とも不気味な出来事が起こるというのだ。

海の方から、老婆を呼ぶ声が聞こえるらしい。

 

 

興味を持った、某局テレビスタッフが取材にやってきた。

さっそく、村人達に聞いてみようと通りかかった人に声をかけた。

「この辺に、老婆を呼ぶ海があると聞いてきたんですけど・・・」

その村人、即座に答えた。

「ああ、あるよ。ここ。」

と、浜の方を指さした。

「ええ、ここですか!」

何というラッキー、もう手がかりをつかんだのだ。

こんな事は滅多にあるものではない。

「で、何時頃ですか?」

わくわくしながら聞くと、村人は平然と言った。

「いまも・・・・・・・」

「ええ、今ですか?」

「よく聞いてみ・・・・・・ほら、バッチャン、バッチャンって」

「・・・・・・・・・・」

 

日本海の冬の海は、

静かで、淋しい

人の姿は見えず、

ただ波の音だけが、春を待つ・・・・・・