猫の亡霊(ねこのぼうれい)

 

人里離れたさびれた屋敷には、

老女と、一匹の猫がひっそりと住んでいた。

 

ところがこの屋敷から、

時々お経のような言葉が聞こえると言うことで、

人々はあまり近寄ることはなかった。

 

太郎くんは、以前から、

この屋敷が少し気になっていた。

 

ついに、今晩、友だちとその屋敷を見に行くことにしたのだ。

 

恐る恐る近寄っていくと・・・・・・・・

 

やっぱり、お経のような声が聞こえてきた。

老女が、何やらつぶやいている。

よく見ると、老女が家の外に出て、

庭の木の側で立っているようだ。

そしてなにやら、喋っている。

 

もっと近づいてみた・・・・・・

木の幹には、一緒に暮らしているだろう一匹の猫がしがみついていた。

その猫に向かって、老女はつぶやいている。

「もっと登れ」

「ねこ、のぼれ」

「ねこの、ぼうれ」

「ねこの、ぼうれい」