好きだ。

 好きだ。

言うたび、頬を少し赤らめて、何言ってるんだ君は、と眦を上げて睨んでくる。
その表情も好きだと伝えたら、どんな顔していいかわからなくなるんだろうなと、感じる。

表情がないわけじゃない、うまく、表せないだけだ。
知った顔に合うと、綻ぶように現れる表情。
それを…見てきた。

最初の冷たい印象を知っている。
滅却すと言われたも同然なあの、冷たい声と微笑を。
それから少しの、和解で知る。
少し、抜けているところ。
人と少し、違うところ。

他人に対しては線を引くようなところがありつつ…俺に対しては、ありのままでぶつかってくるところ。
取り繕って、ないところ。

あからさまな罵倒に怒りたくもなるし、喧嘩もよくする。
今日日、俺と喧嘩したい奴なんて、いないぞ。
まぁ、会話がそうだから、なんてーか…まぁ、日常のこと。

知らなかったことを、知る。
それは酷く心地よく、そして……深みにはまる。
語弊がありそうだけど、あいつに関しては、そんな感じを受けた。

知れば知るほど…解らなくなって、もっともっと、知りたくなる。
大体において無関心な自分が、気配を手繰ろうと思うほどには。

それが、そういう思いからだというのはとんと…そのときには思わなかったし、感じも、しなかったけれど。
後々に振り返ると…そうだったのかと、呆れてみる。

小学生と同じだ。

「……………」

妙な共通点があって、妙な共有の、記憶がある。

他の仲間とは違う、自分の力の及ばない、相手。
最初から、自分自身であった、相手。

「……………」

 酷く心を揺るがせた、相手。

「……………」

 愛しい、相手。

「………ッ……」

 見ていきたかった。

 ずっと、ずっと。

 そばに、ありたかった。


「……ごめん、な……」

 俺の我儘を押し付けて。


 でも、俺は。

 お前じゃなきゃ、嫌だったんだ。







Answer
 
〜やさしい竜の殺し方 3〜









 お前に出逢って、俺は、酷く我儘な俺を知る。

 そして、酷い人間だということを、心底、知る。




悟ってしまったが最後、それしか見えなくなってしまうのは、単純すぎる俺らしかった。
周りを見ないで、その世界だけ見つめて。
その世界だけあればいいとさえ、思っていた。

10代の恋愛なんて…恋愛なんて、そんなもんだろ?
いや、10代なんて、そうだろ? 大きくも、小さくも。

まぁ、広い世界の奴もいるけれど、大体は自分の世界だけでいっぱいいっぱいだ。
なのに、まだ、そこにいろんなものを持っていた俺は。

許容量を、超え始めていたのかもしれない。

学生である自分。
人間である自分。
でも、死神である自分。
誰かの大切な人を、守りたい自分。
大切な人を、守りたい自分。

そのための力を持っている自分。
そして。
その力に、揺れる自分。

他人から言わせれば、ありえない速度で力をつけてきたという自分。
求める本人の意思とはいえ、大きな力は、世界を揺るがすことも、知らず。

ただ、ただ、力が欲しかった。
護るために。
ただ、ただ、力が欲しかった。
助けるために。

今更ながら、なんて驕っていたことだろう。
今になって、思う。

なんて、単純に。
大丈夫だ、なんて、言えたことだろう。

なんて、単純に。
俺に任せろ、なんて、言えたことだろう。

ヒーロー気取りで。

「ン……ン…」
もぞりと、シーツの擦れる音が鳴る。
寝息を立てて、穏やかに眠る顔。
肩が出たので、肌寒いだろうと、シーツを寄せる。

「…………」
意識もなく、堕ちるように眠らせたかったから…酷く強請った気がする。

(も……や…ぁ……)
肩から腕が滑り落ち。
そのまま後ろに倒れてしまいそうな痩躯を、何度か抱きしめた。

煽られたのもあるし、煽らせたのもある。
けれどほんとは。

その瞳に、見透かされたくなかったからかも、知れない。

黒い、深淵。
鋭く射抜く、その、瞳。

 自分を見てきた、瞳。






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