この扉を開けば、向こうに、あいつがいる。
「…………」
電話もメールもしなかったのに、確信のようにある。
きっといる、必ず。
「…………」
前だって、そうだった。
急用で、いないかも…と寄ってみた事もあったが、覆らなかった。
まるで当たり前のように……そこに、彼はいた。
“ホント、タイミングいいよね”
こっちから連絡しなきゃって思ってたのにと、笑う。
スケジュール変更でも、時間の、ズレがあっても。
その間のことなんて、判りやしない。
それでも。
「………」
すれ違う確率の方が高いのに、それが殆どない。
事前連絡がなくても、すれ違いや「あっ」というようなタイミングで、惹きあうように、出会う。
そんなふうなものに、助けられているなら。
今まで外れなかったなら。
きっと、いる。
「……いるよな、石田…」
いてほしい。
考えても、よく判らないまま、ここまで来たけれど。
今、願うのは。
『逢いたい』
それだけだった。
太陽
〜ずれてもぶれても、そこに、必ずあるもの〜
まだまだだって、思った。
自分がうまく立ち回れるとは、思ってない。
気づいた今でさえ、こんななのに。
きっと、深みに嵌って、無様な振る舞いをするだけだ。
だからもっと、距離をとって、時間を空けて、落ち着きたいのに。
彼の前で、自然にいられるように。
なのに、あの状態に浸った罰なのか。
現実はときどき、非情だ。
「…よ」
「…黒、崎……」
扉を開いた向こう、少し、強張ったように感じる笑顔が、あった。
言葉を失った。
本当は、扉を閉じて、逃げたくなった。
今の自分の状態も、今までの何もかもを、放り出してまで。
めちゃくちゃだ。
何で、こんなところに居るんだ、って、叫びたくなるほど。
いつもの状態を思い出せないほど、冷静さを、僕は失っていた。
そう、いつもなら、あんな微妙な状態になれば、気を使う一護なら、様子を見に来るだろうことは、判りきっていたのに。
それすら、何にも思わず。
ただ、ただ、押し込めたくて、どうにもならなくて。
逃げて、帰ってきたんだ。
なのに、なのに。
逃げたくて、たまらないのに。
泣きたくなるのは、どうしてだろう。
「今、大丈夫か?」
「え…、あ、あぁ…」
さらりと言われ、素直に受け止めてしまった。
(あっ!)
用があるから先に出たのに、これでは本末転倒だと気づいたのは、
当たり前に靴を揃えて、鍵まで閉めて。
お邪魔しまーすと、勝手知ったるようにリビングに向かった一護の背を見たときだった。
「く、黒崎っ」
「何? 鍵はちゃんと閉めたし、靴もそろえたぞ? 他、なんかあっか?」
慌てて自分も向かうと、立ち止まって、振り返ってくる。
そんなに長い距離ではないのに、長く感じる。
「その……」
「ん? あ、あぁ…判った、判った。ちゃんと手も洗うし、うがいもするって」
だから、出入り禁止なんて言うなよーと、ぽんと雨竜の肩を、一護は叩く。
「…それから」
「え?」
「石田は先に、髪を乾かすべきだな。
俺がうがいや手洗いやって風邪予防しても、これじゃ本末転倒じゃねーの?」
くすりと笑って、一護はタオルごと、ぐしゃぐしゃと雨竜の髪を掻きやった。
「ッ!」
「ッ…ワリィ……」
一護のその行動に雨竜の身体がびくっとしたのに気づいて、慌てて、一護は手を離した。
「と、とにかく、先、頭乾かせ。部屋ん中暖かいからって、薄着も止めとけよ」
「…判ったよ」
先ほどの雨竜の反応を感じながらも、さらりと一護は返す。何とか。
それに習って、雨竜も、先ほどの反応など嘘のように、さらりと返す。
「んじゃ、うがいと手洗いいってきます」
「…いってらっしゃい」
おちゃらけて言うそれに乗って言い合い、その場は終わった。
扉が開いたとき、うまく、いつもみたいに笑えているのかと、思った。
いつも、笑っているとは、言わないけれど。
……あいつを、怖がらせる顔でなければ、いいと、思ったけれど。
きっと、開く時間なんて、とても短い。
なのに、体感時間というのか、自分にとっては。
とてもとても、長い時間だったように、思う。
本人が居て、本人が出たら、いい。
でも、本当は、誰か、居て。
本人じゃない、誰かが、出たと、したら。
きっと自分は、何も言わず、駆け出してしまっていたかもしれない。
逃げていたかも、知れない。
だから、扉が開いて。
本人が居て、本人だけで。
安堵と、他、何か、ややこしいものが、ない交ぜになって。
うまく笑えていたのか、判らなかった。
それから。
……顔を見られただけで、泣きそうになってる自分も、おかしかった。
「………」
うがいと手洗いのために、洗面所に居る。
その鏡に映る自分の顔は…妙に情けない。
さらりと、いつもどおり…な自分で、来たはずなのに。
「………」
先ほどの、拒絶にも似た反応で……ショックを、受けてるっぽい。
「…なーにやってんだ、俺……」
その行動でこんなふうに抉れたのだから、それを謝りにきたって言うのに、余計、ややこしくさせた。
(……でも)
本当に嫌いであれば……玄関先で、追い返すはずで。
(でも……)
優しい奴だし、それに、どうしても、共演者ともなると。
(…粗雑には、扱えねぇよな……)
自分にも苦手な相手はいるが、何とか付き合っていく術は、持っている。
いや、本当に駄目な奴は駄目だが、そんなことばかりしていては、いつまでもいけないと、思ったから。
「は……好きか嫌いかを聞きたいがために来た俺って…馬鹿みてぇ…」
ここに来た最大の理由は、それだ。
嫌われたかもしれない、と、怖くなって。
でも、最初から、何とも思われて、いなかったら、と、思ったら。
「……すっげぇ、ショックかも」
好きでも嫌いでも、目に入り、興味を持つから、そんな感情が生まれるのであって。
何とも思っていなかったら…どうでも、いいわけで。
「………」
どうでも、いいわけじゃない。
自分にとっては、結構、切実な、ことだ。
いや、切実に、なってしまったのだ。
逢いたいという感情が、あふれて。
気づいて、しまったから。
逢いに来て、痛感、した。
今更、だけど。
だって、自分は………
「黒崎?」
「○×△□☆?!」
掛けられた声にビクゥ! と、一護は背筋を伸ばした。
「いっ、いっ、いっ、石田?!」
「なんだよ、黒崎。いつまでうがいと手洗いに時間かかってるかな」
「え? そ…そんなに?」
「って言っても、たかが、いつもより長いだけだけど?」
ほら…と、手渡されたタオルで、改めて、手と顔を拭く。
コーヒー冷めるよと、案内されて、後ろを付いていく。
「へぇー、俺、よくわかんねーけど」
「いつもいつも入り浸ってる誰かさんですから? 時間の把握くらい、できるよ」
何やってるのか気になって覗いたけど…と返す雨竜に
「そっか………すげぇ、嬉しいかも」
「は?」
いつもどおりの定位置について、一護が呟いた。
そんな、当たり前、のようなことが、酷く嬉しいと、一護は思う。
それすらも、興味ないし、感情がないと、スルーしてしまうことだからだ。
ながら惰性、というのもあるし、そのほかもっと、何かあるのだろう。
けれど、ほんの些細なこと、気づかず積み重ねてきた結果が、これ、なら。
「…何が?」
呆れたような雨竜の声に、一護は、深い笑みを浮かべる。
「まぁ、過ごしてきた時間の経過、結果ってことかもしんねーけど…
…うん、嬉しい、というか……」
この感情を育ててきた時間経過を、なんというべきか、形ではないものだけれど。
(愛おしい、というか)
抱きしめたくなるほど、あふれるような、感情。
恋愛ドラマで聞いたような、もしかしたらこれから言うかもしれない、思い、感じるかもしれない、言葉で感情かも、しれないけれど。
一番最初に思い、感じ、伝えられる相手が、雨竜でよかったと、思う。
好き、と言う感情を、心から伝えられる相手が、雨竜でよかったと、思う。
「黒崎?」
困惑しているのを感じる。
そりゃそうだろう、自分だってさっきまで、めちゃくちゃだった。
逃げたかったのに逢いたくて、答えが欲しいのに、欲しくなかったりと、矛盾したものを、抱えて。
でも、伝えたいことは、とても単純で。
ずれてたり、ぶれたりしても、心にあるそれは、変わらなくて。
暖かく、胸を満たしている。
「あぁ、悪い、独り言。って、オメー、まだ、髪乾かしてねーじゃん」
「え、あぁ、これくらいだいじょ……ちょッ!」
「んなこといって、風邪を酷くしたのは何処のどなたですか? あれも今時分てーか、暖かい時季だったよなぁ。
あん時、ちゃんと乾かしとけばよかった。俺の不甲斐なさを、今は責めるね」
「は? あ、あれはあれ、これはこれ、だろ?!
フォローしてもらったのはホントに悪かったけど、あれは僕が……」
「俺が勝手にやったことだからいーの! つーか、この状態でさらさらか…羨ましいというか、難しいってーか」
「だーから! ちょ……ッ」
正面に回りこまれて、がしっと一護に頭を掴まれて、雨竜は、慌てふためいた。
痛い、と思うような強さはほんの一瞬で、それは柔らかな感触に代わり。
髪が絡まないように、柔らかく、優しく、扱われる。
そして、見つめてくる視線は…酷く、優しい。
(あぁ、やっぱり……)
好きだ。
この状態が酷く心地よいのも知っているし、いい距離だとも、感じている。
なのに、気づいた感情は、それ以上を求めている。
今までのような触れ方ではなく、もっと、もっと……
「石田?」
「え、あぁ……ごめん」
何を、考えてるんだか。
胸中で臍を噛み、もしかしたら、口唇も噛んでいたかもしれない。
(伝えてもいない感情を、持て余しているだけだ…)
友達間での触れ合いを、恋人同士のそれにすり替えて、自分を、慰めてるだけで。
(ほら……無様じゃないか)
誰が知らずとも、自分が一番わかっている。
そして彼には一番……一護に一番、知られたくない自分だ。
数時間前の接触で、自分がこんなに変化するとは思わなかった。
なんて、なんて………
(浅ましい……)
曖昧な、それだけで終われたら、よかったのに。
「ドライヤー、借りるな?」
「ん、どうぞ」
ドライヤーをセットする間ですら、あの存在が離れるのが、嫌だなんて。
コーヒーは、冷めてしまっただろう。
洗面所に呼びにいく前に淹れたものだから、香りは飛んでしまっている。
コーヒーも、まともにセットできていたと、思えないのに。
「ブラシは?」
「あ、その辺りに…」
「これ?」
「うん」
さらさらとした自分の髪の感触が、頬に当たる。
もうすぐ、こんな、おかしな接触も、終わる。
(これ以上、無様になる前に)
早く 離れなければ
「ハイ、完了」
「…ありがとう、黒崎」
かたりとブラシを置く音がして、雨竜は身体の力を抜いた。
部屋に入れてしまったのは自分の迂闊さだが、追い出すのも何か、勘繰られる。
いつもどおり…を、何とか、心得ていたけれど。
(……限界、かも)
何が、かはわからない。
ただ、何処か、が、限界で。
押さえるのが精一杯な、気がした。
「…石田」
ふと、降ってきた声。
それは、酷く近いような、遠いような声で。
一瞬、誰の声だか、わからなかった。
「え……」
また、馬鹿な幻をみているのだと、思った。
数時間前の、あの、幻を。
なのに、あのときよりきつく、あのときよりもっと近いそれは、幻ではなかった。
「く、ろさき……」
あの時と、同じ状態。
でも、あの時みたいに、ここは、撮影所のセットの裏ではなく。
しかも、自分は、泣いてない。
むしろ、今、泣きそうになっている。
「何、宥めようと…してるんだよ…僕は…泣いて」
ないだろ、といいかけた口唇を、一護の親指で、止められる。
「…そういうんじゃ、ねぇよ…」
聞いたことのないような声で囁かれて、不覚にも、ゾクリ、と来た。
早く離れようと身体は反応するのに、心が…引きずられる。
もっと聞いていたいと、聞きたいと。
その口唇が、どんな言葉を発して、くれるのかと。
「…石田」
呼ばれる。
あぁ、それは役名で、自分の本当の名前ではないのに、どうして。
「………好きだ」
自分に、好きだ、と言われてるような気に、なるのだろう。
うまく、言えたろうか。
伝えられた、ろうか。
数時間前のときと、同じ状態だから、また……嫌われてしまうのかもしれないけれど。
それでも。
(好きだ……)
好きなんだ
下を向いて、震えて泣きだしそうな雨竜を抱きしめて、一護は思った。
あぁ、きっと、石田雨竜、のことを、好きなのであって。
僕、を好きってことじゃ、ないんだよね…?
そうだ、きっとそうだ。
そうやって何とか、自分を雨竜は立て直す。
自分の中の雨竜が泣いたから、あの時一護は、自分を宥めるために抱きしめただけで。
今のこれは、これは…………
(僕を…宥めるため、なんだ)
如月、雨竜を。
「く、ろ、さき…は…」
「…ん」
ポツリ、ポツリと零される雨竜の言葉に、一護は耳を傾ける。
「僕じゃなくて…『石田雨竜』が、好きなんだよね…?」
「…は?」
どうしてそうなる?! と、一瞬で一護は胸中に叫んだ。
「だって、僕が、石田雨竜だから…石田雨竜、だから…」
あぁ、自分の演じているキャラクターに嫉妬するなんて、おかしすぎる。
こうまで思われている雨竜が、羨ましい、なんて。
「だから、好き、なんだよね…?」
おずおずを見上げると……
「……違う」
射抜くような、一護の瞳が、自分を見つめていた。
「…え?」
「それは違う。そりゃ、俺は…あんたのこと『石田』って、呼んでる。
でも、違う。俺が好きなのは……如月雨竜、あんただよ」
「………」
「目の前にいる、あんただよ。あんたの、ことだよ」
なぁに、泣いてんだよ。
一護の笑んだ声が、耳奥に響く。
目の前が歪んでいるのは、ライトの眩しさにやられたからでも、瞬きをしなかったからでもなく。
「あんまり泣くと、瞼腫れるぞ? まぁ、冷やすぐらい、するけど」
「何、言ってんだか……年上を、からかうんじゃ…」
「年上でも、惚れた相手にはちゃんと言うぞ、俺は」
「ッ……」
「俺が好きな、惚れた相手は、如月雨竜、あんただ。
あんたが、好きだ。あんたは? あんたは、俺を……どう、思っている…?」
潜められた声が、耳朶をくすぐる様に、耳そばで囁く。
最後の、答えを聞くような言葉は……雨竜の心をさざめかせた。
「……オメーとか、あんたとか……好き放題、言ってくれちゃって…」
年下の癖に、いっぱしの口を、利く。
「……甘やかし、過ぎたかなぁ……」
そして、甘やかされすぎた。
「石田?」
「……僕の、答え、は」
言うが早いか、するりと、雨竜の腕は一護の背に伸び。
同じように、相手を抱きしめた。
「ッ……」
「……いうつもり、なかったんだけどな…」
「ッ!」
「だって、馬鹿みたいじゃないか。今日の、あのことで…気づいちゃったんだから」
君のことを 好きだって
「石田……」
「言わないでいよう、隠してようって、頑張ろうとしてたのに…あっさり、君が切り込んで、崩してくれたよ」
「……悪い」
「嘘、悪いって、思ってないくせに。それに…僕も、悪いと思ってない」
小さく笑って、雨竜は一護に身を委ねる。
「どーだか。俺が黙ってたら、これぞとばかり、黙り込んだろ?」
「…君がそういうこと言う? じゃぁ、黒崎はどうなの?」
雨竜に詰め寄られて、一護は後ろに倒れそうになった。
うわ、と思ったときには遅く、雨竜を抱きしめたまま、一護は床でしたたかに頭を打った。
「ってぇ……」
「大丈夫?」
「…扱かした原因が、何を言う…」
「…悪かったよ」
雨竜が起き、乗りあがるように一護の上にかぶさり、一護の頭を撫でる。
「たんこぶは…できてないと思うけど」
「まぁ、とっさに庇いはしたし…タオルもあったから、なんだけど」
「…そ」
ならいいと離れようとする雨竜の腕を、一護は引き寄せる。
「くろさ…」
「…俺だって、好きだって気づいたの、ついさっきだよ」
「!」
「ここに来るまでに、何で帰っちまったのかなーとか、用事あるって言わなかったのになーって、ぐるぐるして。
やっぱ、泣き止ますために抱きしめたのが不味かったかなーって、いろいろ考えた」
「…ごめ…」
申し訳ないという気持ちをこめて、雨竜は一護の髪を掻きやる。
「いろいろ、思って。でも、聞いてみなきゃわかんねーし。聞くんなら、逢わなきゃって。
…実を言えば、逢えればよかった。あんたに……すげぇ、逢いたかったから」
「黒崎……」
「インターフォン押すの、すげー緊張した。
いなかったらどうしようとは、思わなかったけど…何より……俺以外の誰かがいたら、嫌だなって、思ったんだ」
「…………」
「ドアが開いて。あんたが、あんただけがいて。当たり前に、部屋に入れてくれて。
それで、すっげぇ、実感した。こんな当たり前も、あんたじゃなきゃ、意味がないって。
…俺が好きなあんただから…意味が、あるんだって」
「………ッ」
「俺は……言えて、伝えられて、嬉しいよ」
そのまま頬に手を伸ばし、自分が乾かした手触りのいい髪を、指先に絡める。
ついで、雨竜の頬に流れる涙も、拭った。
「そりゃ…芝居で言うことも、あるよ。これから、増えるだろうと、思う。
でも、感情を…心をこめて、あんたに……雨竜に一番に伝えられたのは、すげぇ、俺は、嬉しい」
「ッ………さり気なく、呼び捨てたな…」
少し怒りを覚えながらも、耳をよぎった心地よい声に、雨竜は目を細めた。
「だって『石田』って言うと、嫉妬しそうなんだもんな…だったら、雨竜しか、ないじゃん」
「…同じ、名前なんですけど…?」
「だったら俺は『黒崎一護』に嫉妬するよ。石田の関心も雨竜の関心も受けてさ…ずるいったらねぇよ…」
ぎゅうと背を抱いてくる一護に、雨竜は微笑んだ。
「実体のないものに嫉妬してどうするのさ。君は君だろ? それは揺ぎ無い。違うかい?」
「……さっきまで、自分の役に嫉妬してた奴の言葉とは思えねぇ…」
「もう、吹っ切れた」
「はぇぇ…」
「だって、君が、僕を好きだといってくれたから」
「ッ……結構、天然だよな…雨竜って」
「え?」
「何でも……よっと」
頭を打った痛みも引いたのか、一護はゆるりと雨竜と入れ替わり、上から見下ろす位置に付いた。
「黒崎?」
「……好き同士で、想いが通じたからよかったけど…あんまり無防備でいると…襲うぞ」
「…君にそんな甲斐性あるとは、思えない」
「言うぜ……まったく…」
あんまり年下をからかっちゃいけませんよと、一護が返せば、からかってませんよと、雨竜が笑う。
「じゃぁ、からかう口を、封じます」
「…どうぞ」
くすりと笑って降りてくる一護に、雨竜は笑んだ。