向こうでは井上が、石田君頑張ってー! と声をあげて応援している。
織姫、石田が終わったら次、あんただよーと、たつきが突っ込んでいる。
その周り、女子も男子も一緒になって見ている。
うるさい啓吾も一緒になって踊るように応援している。
クラスがみんな、頑張れと励ます。
それに大して、撮影押しちゃってごめんねと恐縮して、笑う雨竜がいる。

役柄のせいもあって、なかなかあの輪の中には入れない。
入ってはいけない…と、言われる。
まだまだ打ち解けてちゃ駄目なんだよねーと、監督たちは言うので、従うしかない。

監督たちによって捉えかたはいろいろ違うけれど、自分と雨竜のあり方は、みんな似通ってというか、
統一するようにしていた。

『現世組の軸って、たぶん、一護と雨竜の関係性だと思うんだね。
正反対の二人だからこそ、なんていうの…表裏一体っていうか、二人で一人って言うか』
番組プロデューサーの高村さんとシリーズ構成の皆川さんが言う。
『ある意味お約束なのかもしれないけど、それをもっと掘り下げていきたいんだ』

位置的には…ライバル。
けれど、背中を預けて戦える戦友。
共通の思いを持つ、戦友。

『簡単には二人とも打ち解けないだろうから…だから』
 難しいと思うけど、頑張って。

そういって、二人は笑う。

成長して戻ってきた自分に対する、期待。
そしてその上を求める…レベル。

『取りあえずは……大虚倒すところまでは、ホント喧嘩腰で。
そっから先は少しオリジナル入るから、その辺りの演じ方は、一護に任せるよ』
慣れた様子で監督も自分に告げ、楽しみにしてる、と、広報の人や宣伝部にも言われる。

そんな、がんじがらめなのに。

「一護?」
やすやすと読まれてしまっているのは、どうだろう。

「……なんだ」
受け答えする反応さえも、裏を読まれてるようで怖い。
どこまで読んでいるのか、どこまで行き着いているのか、わからない。

「……他の人はたぶん、劇中と同じような反応にしか、見えてないと思うよ。
喧嘩売られて、気になってる…って感じに。
でもボクは、ちょっと、ほんのちょっと……感じたものがあるから、こうなっちゃうだけなんだよ」
返された言葉に、どきりとする。
ふと、水色を見ると、解ってるよ、といったふうな顔。

「…………」
「一護、石田君のこと、すごく、気になってるよね」
「………」
「………違う?」
「…………………わかんねぇ」
遠くを見つめたまま、小さく返す。

わかんねぇ。
こんな、こんな。

揺らぐ、気持ちは。

見つめた先、ある姿は―――――

「お……」
「え?」
向こうで歓声が上がる。
どうやら…一発OKだったらしい。

「あ、成功したようだね」
「…あぁ」
ふと横を見上げると……穏やかに笑う、一護の顔。
「そりゃ、あんなにテストしてりゃ、な…」
そうは言いつつも、瞳に滲む色は…安堵。
「まぁ、それもまた、実力ってことで」
「そういうふうに、取っておくか」
そう言って、一護は肩を竦め、ポケットに手を突っ込んだ。

“……気づいて、ないんだろうけど”

小さく、水色は胸中に呟く。

“……それは恋、だと思うよ。一護”

わからないと言う、無自覚な、けれど、確実な想い。

“…それから……”

 多分。

ふと、こちらに気づいた相手が、小さく笑う。
綻ぶような…笑み。


“………石田君も”

静かに静かに始まる、想い。

“……どうなるんだろうね”

そう思いながらも微笑む水色の顔は…優しさに満ちていた。







泣きながら、けれど、俺は、悔しいと、思った。

どうして、俺は、ここに居ないのだろう。

どうしてこのドラマに、いなかったのだろう。

何故、あの変貌を、間近で見られなかったのだろう。


鮮やかに残る姿。
翳り、憂いのある表情。
優しい微笑み、冷たい笑み。
全てが、焼きついて。

離れない。


だから、今。
共に在れる、今。


そばには、在れないけれど。
ずっと………見てたいんだ。


あいつを。


ずっと、ずっと、ずっと。