倒れた十字架の下から現れる、鮮やかな姿。
靡く銀の髪…酷薄な、微笑。
こちらを見据える瞳も…銀色。
『私に、会いたかったのだろう?』
全てが崩れ始める。
彼の立つ周りには、異様な黒い影。
全てを崩壊へ導く……黙示録を動かすもの…
キリスト圏の言葉で言えば、悪魔。
『………滅びるがいい、豚ども』
綺麗で冷ややかな声が上がり。
画面は暗転した。
そして、土煙の中現れたのは……柔らかな微笑を持った人物。
彼は、出会った級友に、当たり前のように微笑みかける。
級友は、全てを知ってしまっていた。
彼が…魔王の生まれ変わりであることを。
けれど、頑ななまでに、魔王でない彼を信じていた。
信じていたからこそ……悩みぬいて。
止めようとして神父からもらった聖水は、手の中で割れていた。
もう、彼を止める手立てがない。
彼を戻す手立てがない。
彼を救ってやりたくて…級友は、彼が彼のままであるうちに…
彼を、殺そうとした。
自分の、手で。
心から、心から…悔いて。
『ごめんな、レン。俺、力足りなくて』
慈しむように彼を抱き寄せて。
『…ごめんな』
影絵のような演出。
ポケットから出したジャックナイフを、振り下ろした。
爆発音。
それと共に全て、崩壊した。
彼の、魔王の、計画通りに。
舞台はイギリスから日本へ移り。
記憶を失ったままの彼は、高校生活をなんとも成しに過ごしていた。
けれど、何処かにいるだろう、誰かを、探しながら。
その中、見た転校生の姿に…レンは…涙する。
『あ、れ…』
去来するものは、何か、わからないけれど。
ただただ静かに……涙は、頬を伝い落ちる。
『何だ、これ…』
どうして。
拭いながら、レンは、呟いた。
そこにかぶさる、もう一人の、悪魔の使い手の語り。
語られる、彼の胸中。
遠くイギリスから、問いかけられる、想い。
知る由もない、と、記憶を失くした彼に、問われる想い。
優しい、優しい、その言葉と共に、あの暖かな日々の回想が入って。
彼を最後まで慈しんだ、級友の声が、響く。
『俺が守るから』
『俺が必ず守ってやるから』
その言葉と共に、ドラマは、終幕を迎えた。
――――気づけば俺は、泣いていた。
Precursor
数年前にあった、深夜枠の、特撮といわれるドラマ。
CGやVFXの多用はあったとしても、基本的に原作に忠実なドラマだった。
もともと原作の外伝のような話だったが、ドラマになってからというもの、原作ファンの評判もよく、
9話完結だったのが12話完結になった。
今のように、漫画、アニメが実写になるというのがまだ珍しかった頃の試みで製作されたものだが、
深夜枠でありながらもDVDまで発売した人気のドラマだった。
そこに……あいつは、出ていた。
穂高蓮役、如月雨竜。
後の………石田雨竜。
俺の、気になる、相手。
「石田君て、すごいんだよ」
そう言ってこのDVDを貸してくれたのは、水色。
原作にほぼ瓜二つのファニーフェイス。
実生活でもほとんど水色だろーと突っ込んだら、あそこまでボクは出来ないよーと笑ったから、あーあながち外れてねぇなぁと、頭の隅で思った。
「ボク、最後のほうの高校のエキストラでしか出てないんだけど、いいよー」
一護、見てみなよ、と、劇中のままに手渡す。
「最後のあのあたりのシーンなんて、もう、鳥肌立つよ。
ネタバレするのがもったいないって言うか、もう、見た方がいいって」
押し切られるままに受け取ってしまったけれど……『石田』と言う言葉に反応しがちな自分に、それを拒否することはできなくなっていた。
「あ、あぁ……」
「返すのはいつでもいいよ。何ならあげるけど」
「っておい! そんな、俺…」
「それとも、舞台のほうがいいかなぁ…舞台の石田君も、結構いいんだよねぇー」
にっこりと笑う姿に……背筋が、寒くなる。
「…あの、な、水色……」
「どうしたんだよ一護」
休憩の合間の会話で、端っこにいた一護に近づいてきたのは水色だ。
いつもなら……石田といたり、するけれど。
今日に限って…彼は集中的にドライテストをしているので、入り込めないのだ。
それを遠めに、けれどきちんと見える位置に陣取って……ぼんやりしているところに、水色が来たのだ。
「……なんでもねぇ」
「そ? 眉間に皺寄ってるよー?」
「…これは標準装備だ」
「そっかなー、石田君といるときは穏やかじゃない?」
「ッ………」
…こんなところまで、なんか…似てくれなくてもいいのに。
そう感じてしまう自分がいる。
原作、テレビ共に、水色という人物は勘がいいと、自分は思っていた。
それが、このような形で自分に帰ってくるとは…誰が思うものか。
その向こうでは、ぬいぐるみ相手に格闘している雨竜の姿がある。
こないだの裁縫具合なら大丈夫だと思っていたが…なかなかうまくいかないようで。
何度も何度もテストを繰り返していた。
その真面目な姿に、肩のちから抜きゃいいのに…と感じつつも、それが彼らしくて、微笑んでしまうのだ。
そんなところを…見られていたのだろうか。
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