この世界に入ったのは、物心を付いたころ、な、気がする。
正直、あんまり覚えてねぇ。
あ、思考まで一護が入ってきてんな…って、まぁ…シンクロ率、変に高いけど。
今までやってきた役とは違う、微妙に自分に近く、微妙に自分に遠い、役。
原作も、アニメも、ミュージカルも知ってる。
一応、とりあえず見て…一番やりたい一護はどれだ…って言われたら、やっぱり、原作だ、と思う。
アニメもミュージカルももう、創られてる一護だ。
それをなぞってもしょうがない。
でも、役に一番近い、キャラに一番近い…のは、自分だと思う。
年齢が一番だが、何となく。
まぁ、誕生日も似た時期だし、血液型も同じ。
名前は同じだけど、公式で挙がっているデータはキャラのもので、
実際の俺は、おくびにも出ていない。たぶん。
出るとすれば…まだ、一護になりきれてない俺が、画面に、映像に、現れるだけ。
難しい。
今まで一護をやってきた人たちに、思う。
こんな奴をよく、声だけで、歌と踊りだけで、表現できたよな。
それがプロの仕事だ…って言われたらそれまでだけど、俺は…一番近い年齢の俺でも、わかんねぇ。
いっそのこと、原作者に問いたいところも、あったりする。
どうしたいんだ、と。
俺は、未来の一護をすることはナイんだろうけれど、これから先の一護をするであろう人に、感嘆する。
この揺れ具合、どうすんだろ。
ぶれずに、いけるんだろうか。
一護が一護のまま。
いくら原作の場所が場所だけにそういう展開になるとはいえ…俺ん中の一護は、あんまり争いを好んでるって気はしない。
落ちてくる火の粉は払うけど、余計なことはしない限り、危害を加えたいとは思わない、そんな奴だと…思う。
本能が…戦いたいと思っているとしても。
まぁ、これは、一役者である俺の、独り言に過ぎないけど。
ある意味、一護が一護であるときの一護を演じられるのが、ある意味、今の俺は、嬉しい。
その先が、とんでもない状況に、なっているとしても。
たとえ、あいつと、まだ、喧嘩相手のような、間柄であったとしても。
「………」
でもそれは、永久的な気がする。
あいつがあいつである限り、きっと、このまま。
「…………」
あの白い背中は、ずっと前を見据えて、凛と立っている。
いろいろなものが混じっても、原作でも、アニメでも、そして、ドラマでも。
石田雨竜は、ずっと、立ち続けている。
俺の中で。
Electric circus
オーディションで見たとき、こいつしかいない、って、思った。
自分の中にある、思い描く石田雨竜は、こいつだ、と。
そして、こいつのそばに立ちたいと、思ったのも、初めてだった。
役のオーディションは、大抵事務所に伝えられる。当たり前だが。
大体、その役の年齢に合う人物の書類を選考で送り、それに叶ったものに収集が掛かる。
そこで改めて面接をし、動きを見られる。
このあたりでまぁ、特技や即席芝居を見せたりする。
それから、何人かと組み、劇中のキャラを当てられ、本読み。
自分のやりたいキャラが必ず当たるってワケでもないが、そのキャラで受けてるわけだから、そのキャラで演技をする。
そこから絞られて…ぽつぽつと、メインに近い組み合わせになっていく。
プロデューサーや、その他もろもろが見るバランス、番組としての画の成り立ち。
スケジュールなどいろんなものが比較されて、削られて絞られて絞られていく。
そして、最終選考に残ったメンバーが。
あいつらだった。
今回ドラマ部分で力を入れるのは、一護が居る現世だと宣言されていたとおり、
クラスのメンバーといい、一護と絡む啓吾や水色にも、気を配った選考がなされた。
死神組は今回はメインでないため、イメージ選考らしいが、それもきちんとなされた中での結果で。
名前のせいもあったかもしれないが、知った姿を見て、安心したのは、否めない。
自分の本名は笑うしかないが、他の奴らは違うらしいので、なかなかに難しい。
しかし、今回、このドラマは、本名呼び禁止という注意事項がなされていて。
他の役者も、ほぼ、役名で呼ぶことになっている。
本名である俺を、除くとして。
結束を高めるためらしいけど……ややこしくて、かなわない。
俺、は、どっちで呼ばれているのか、なんて。
きりがねぇから、どうでもいいけど。
役者業界、声優業界。
広いようでいて、案外狭い世界は、結構かち合うことが多い。
けれど、会わなければ本当にそれっきり…という場所でもあるので、知り合いに会えたときは本当に、その時間に戻される。
あの苦楽を共にしたときが、甦るのだ。
久しぶりに会えるスタッフや監督もいて、懐かしい場所に戻った気がする。
事実、今回の現場の人たちは、知った人たちばかりで。
自分は、この人たちに、鍛え、育ててもらった。
そんな気持ちがいっぱいで、最初は…目に入らなかったのだ。
気になっていた、人物が。
そして、目の端に見える。
静かに静かに…見守る姿。
斜に構えるわけでもなく、ただ、穏やかに見る姿。
けれど、空気に溶け込むような…存在感の、希薄さ。
まるで、教室で静かに佇む……石田のような。
「………」
もし、俺自身にもなんか力があって、霊圧とか、霊力とかを、読むことが出来るんなら。
そこには一筋たりとも、そんな気配は、なかったように思う。
すべてを内包して閉じ込めて、静かに生きる……滅却師の姿が、そこにあった気が、する。
それが、俺が、役者、石田雨竜に感じたことだった。
後から聞くにつれ、もともとはそこには居なかったらしく、舞台の練習が終わったから、顔見せに来て見たんだと、笑っていた。
そんな登場の仕方すら…らしすぎる。
気づかねーで当たり前かぁーと返せば、それでも、気づいたんだねと、笑う。
そういうところが、なんか、黒崎なんだね、と。
どの黒崎を、指すのか。
どの黒崎に、思うのか。
それが、妙に、引っかかっていたのだ。
………今でも。
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