次の課題として、帝釈天と因縁関係にある1尺の阿修羅像を彫ることにした。
日本の仏像の中で、弥勒菩薩などと同等の人気があるらしい。雰囲気でも表現できたらよいなぁと思う。ポイントはお顔と細身のバランスと松葉蟹のような細い6本の腕、どれをとっても難しそうだ。
材料は昨年12月始めに入手していたが、最近ではその気になるまでに時間がかかり、正月明けから作業を開始した。
今後、適宜、制作途中経過を紹介することにした。(06−1−27記)

柱のような檜の角材をノコギリやノミな
どで余計な部分を落とした段階。
正面、側面から投影して不要な部分を取り除く作業である。
ノコギリは手動?のため真直ぐ切るのが難しく、また重労働である。
この段階はロボットのようだと何時も思う。

更に贅肉を削った段階。斜めの部分を出すように削って行く。
少し形が見えてくる。

全体のバランスをとりながら彫り進める。
この段階になると楽しみが倍増する。
腕の内部、胸など彫りにくいので、腕は一旦切断した。

お顔、紋様などはっきりしてきた。腕はゴム輪で仮止めしている。
胴が何時も太めになるので注意深く彫り進める。
全体のバランスもよくなってきた。雰囲気も感じられるようになってきた。
しかし、先は長い。
           (06−1−27記)

2月2日、もうすぐ寒波が来るということで、その前に奈良の興福寺を訪れることにした。最終仕上げまでに阿修羅像を見ておきたかったからだ。
 阿修羅像は国宝館に展示されていた。正面ガラス張りで側面、背面はよく分からなかったが、永遠の名像といわれるだけあって、しばし細部にわたり鑑賞した。
 習作を彫るときは、できるだけ本物を拝観することにしている。幸いなことに有名な仏像は殆どが奈良、京都にあり、関西在住を有難く感じている。しかし、結果的には十分習作には反映できないことが多い。

 三面六臂の第二、第三の腕を部品で制作。
下左の腕、手は制作途中の状態。
 闘うべき筋肉はすべてそぎ取っており、極端に細く表現されている。

六本の腕、手が完成、仮付けした状態。州浜座をイトノコで切断、その上に乗せてみた。
パーツは全て揃ったことになる。これから全体のバランス、接合面など修正し、細部の彫刻に取りかかる。
 完成まであと一ヶ月程度かかるかな?
                   (06−2−5記)

 実物はこれまで写真や図面で見たものとは印象が違っていた。清楚で神秘的であり、荒々しい阿修羅が仏門に入っていく時の謙虚さを感じた。もともと阿修羅は荒々しい妙法寺にみられる阿修羅で表現される。
 興福寺の阿修羅は1300年前に作られたという。今その現物が拝めるのも奇跡と思われるが、現在人の感性に相通じるものがあり不思議でならない。このような仏像が他にないのも名像として存在する理由かもしれない。

 さらに彫り進める。仕上げは根気がいるし、目が疲れるので一日の制作時間が余りとれない。
 三面の顔、首飾り、背面もできてきた。
         (06−2−12記)





制作着手から約2ヶ月、腕の接続、装飾品の仕上げなど完成。
州浜座も岩らしく仕上げて最終完成となった。
                                (06−2−22記)

阿修羅像の完成

これにて松田瑞雲先生の添削指導を受ける。
指摘事項
@腰の線を柔らかくし、少年らしさを表現する
A足が棒のように見えるので足首を細め、くる  ぶしを表現する。
B第2の手が大きすぎるようだ。
C目じりをぼかす。

最終の完成

先生の指摘事項および細部の点検結果をもとに修正した阿修羅像の最終完成像。


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       (06−2−27記)

天部3 (阿修羅像の制作)