私のこと。

 私の名前はエド。もちろん本名ではないが、まんざら偽名というわけでもありません。

 先にも書いたとおり、私はこの家の主人ではありません。この家は、私の家内の実家で、私は、まあいわゆるマスオさん。とても庭付き池付き一戸建てを持つほどの甲斐性はありません。義父は地元で建設業を営んでおり、俗に言う地元の名士。この比較的裕福な家で、家内とその両親、そして義理の弟とともに、これと言った不自由もなく暮らしているわけだ。
 そもそもが都会育ちではない私は、この農村に棲むことも別段の抵抗はなく、ご近所ともすぐ馴染み、田んぼの水の引き方や、畦の草刈りの手順、梅の咲かせ方など教わりながら、ここでの農村生活を楽しんでいるのである。
 私の故郷、それはもう滅多に思い出すものではないけれど、は、ここから1000キロ近くも離れた地であるが、おそらく帰ることはないだろうと、思う。おそらく、ここで産まれたような顔をして、この地で年を取って行くのだろう。それには、あまりに十分な環境が、そろっているのです。
みち
ただの田舎道である。この道をずっと行けば、あの山に着くのだろうか。
この道は、家内の通学路であった。きっと、全く違った景色が見えているのだろう。

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