今も昔も変わらぬ乙一


OTUITI


ZOO1   ZOO2   

[ZOO1]

≪あらすじ≫
何なんだこれは! 天才・乙一のジャンル分け不可能の傑作短編集が「1」、「2」に分かれて、ついに文庫化。双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され・・・・・・(「カザリとヨーコ」)、謎の犯人に拉致監禁された姉と弟がとった脱出のための手段とは?(「SEVEN ROOMS」)など、本書「1」 には映画化された5編をセレクト。文庫版特別付録として、漫画家古屋兎丸氏との対談も収録。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
ダメが読んだ初の乙一作品。
裏表紙や、解説なんかには『ジャンル分け不可能』とされていますが、共通項はあります。
主人公が決して幸福でなく(<大抵が不幸)、切なさと、少々のグロテスクが入り混じった、ミステリ要素の強い作品。
話自体は短編集なので、色んな設定が出てくるのはわかるんだけど、この設定の発想は天才的としか言いようが無いです。

以下、短編集には異例の収録作品別感想

・カザリとヨーコ

真似をすると見分けが混乱になる双子ネタ。
コレ自体は割とメジャーなんだけど、そこに持っていくまでの流れが切なく・・・そして、やるせない。
最後、登場キャラクタの誰一人として救われないのだが、読了後に「おっしゃー!」と思わせてくれた為、読者は救われた感じがします。

・SEVEN ROOMS

普段、あまり仲の良くない姉と弟である主人公が拉致監禁され、限られた情報の中でのサバイバル・・・といった感じで始まるのだが。
脱出の目処が立たず、業を煮やして情報を無理に入手したところから世界は少しずつ変わりだす。
与えられた情報から導き出される未来(答え)を出したとき、読者と主人公達は新たな、そして確実な恐怖と対峙することになる。
最後、姉の高笑いに込められた感情を読み取ったとき。不覚にも泣きかけたさ。
たったの50ページほどのストーリ。でも、ダメの中で2007年度一番良かったと思える作品候補No.1は不動やもしれぬ。。。

・SO-far そ・ふぁー

SO(Significant other):親,配偶者,恋人
far:遠くへ(に),離れて

上記の様に、直訳すると『離婚』という文字が浮かび上がってくるこの『そ・ふぁー』。
主人公である『ぼく』を挟んでソファーに座る両親。この構造を維持したまま物語は進み、『ぼく』は望んである物へと変貌するのであった。
切ないです。。。しかし、それ以上に驚きがあります。。。

・陽だまりの詩

ちょっとしたファンタジー、でも優しく『死』について考えれる。
主人公は、ナくなって初めて気づくのだ。
こんな感情知らなければ良かった?それは違う、その感情があるから日々生きていられるのだ。
作者はそれを優しく説明する。
きっと本当のタイトルは「陽だまりの死」が相応しいのだろう・・・。
そう、ダメは優しく思う。

・ZOO

この作品を一言で表すと『自分ルール』まさにコレ。
それは自分で制約を付けて、その制約をバネにして自分をより機敏に動かす為の心理。
間違ってはいけないのは、その制約が確実なモノにするとたちまちバネは錆付き、自分の枷にしかならないということ。
主人公のバネが縮んだ状態で錆付き、バネが開放されることを望む主人公。
世間的で言うミステリに一番近い設定、だけど一番ミステリっぽくない作品に、もうダメはドキドキしっぱなしでした。


[ZOO2]

≪あらすじ≫
天才・乙一のジャンル分け不可能の傑作短編集その2。目が覚めたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇(「血液を探せ!」)、ハイジャックされた機内での安楽死の薬を買うべきか否か?(「落ちる飛行機の中で」)など、いずれも驚天動地の粒ぞろい6編。文庫版だけのボーナストラックとして、単行本に入っていなかった幻のショートショート「むかし夕日の公園で」を特別付録。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
本作品でも乙一節は健在。
でも、ZOO1を読んで何かしらの幻想を抱いて本作品を読むと、頭っからその幻想が吹き飛びます。
ミステリ要素を含んだ作品だというのに、笑いっぱなしの作品というのは初めてかも。<「血液を探せ!」

雰囲気がこうまで違う作品が並ぶ作品群。
1・2の2冊を読了し、一種のパレード感覚を感じたとき。
間違いなく、この2冊のタイトルはZOOが相応しいと思ったシダイ。



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