荻原ワールドに出かけよう


Ogiwarawara


神様からひと言   コールドゲーム   母恋旅烏   ハードボイルドエッグ      メリーゴーランド

[神様からひと言]

≪あらすじ≫
大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉涼平。
入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要因収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する涼平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやいなや・・・・・・。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説! (文庫版裏表紙より)

≪感想≫
素直に面白いです。笑いあり、涙ありだけでは終わらず、辛い仕事も頑張ろう!と元気づけてくれました。

元バンドのギターである主人公の涼平は、決して気が強いというわけではない。しかし、間違ったことに対しては怒れる後先をあまり考えないヤツ、というのがダメの地元の友人T君に似ていてとても好感をもてました。
もっとも、主要な登場キャラクター(主にお客様相談室)は全員好感を持てたんですけどね。みんな個性たっぷりなくせに、さらに癖のある設定があったりして・・・・。

物語のラスト、涼平が神様と崇める浮浪者から何でもないひと言を貰うわけですが、その何でもないひと言に含まれた思い・・・・、くぅ!ダメのツボに完璧に嵌ったよアータ。

チクショウ!こんな作品があるから読書はヤメラレネー!!ティンバーウルフ萌え!!


[コールドゲーム]

≪あらすじ≫
高3の夏、復讐は突然はじまった。
中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われていく・・・・・・。犯行予告からトロ吉が浮かび上がる。4年前、クラス中のイジメの標的だったトロ吉こと廣吉。だが、天候したトロ吉の行方は誰も知らなかった。光也たち有志は、「北中防衛隊」をつくり、トロ吉を捜しはじめるのだが――――。
やるせない真実、驚愕の結末。高3の終わらない夏休みを描く青春ミステリ。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
青春モノです。しかも主人公が17歳と、非常にGOODな歳です。
世界の仕組みを頭では理解していても、心では理解できない、そんな青年とも少年とも呼べない主人公サイコー!青春ミステリサイコー!!

『神様から一言』を読んだときにも感じたのですが、文章がとてもユーモアなので読んでいて実に楽しいです。それでいて、感動のアップダウンといった読み手側にとっては非常に難しいアクロバットを難なくこなさせてしまうあたり、文章力の高さにも驚きです。
まだ荻原さんの作品は2作しか読んでいませんが、完璧に荻原さんに嵌りました。これぞまさにコールドゲーム(゚д゚)カンパイだわ


[母恋旅烏]

≪あらすじ≫
レンタル家族派遣遺業というけったいなビジネスを営む花菱家は、元は大衆演劇の役者一家。父・清太郎に振り回される日々に、ケンカは絶えず借金もかさみ、家計は火の車。
やがて住む家すらも失い、かつてのよしみで旅回りの一座に復帰することになったのだが・・・・・・。はてさて、一家6人の運命やいかに!?
刊行時、たっぷりの笑いと涙を誘い、最大級の評価と賛辞を得た傑作!
待望の新装文庫化。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
みんな一癖も二癖もあるキャラクタで普通じゃない、でも、普通じゃない一癖も二癖もあるキャラクタだからこそ、この劇(物語)の中ではそれが当たり前になる。
劇が進み、1幕、そして1幕が終わるごとに登場人物達は成長していき終わりへと向かう・・・・、そこには人によってはハッピーエンドに写るかもしれないし、バッドエンドに写るかもしれない結末が待つ。
何が良くて、何が悪いのか・・・、一般的な答えは出せても、やっぱり本質的なところは人それぞれだと思う。
1人で天国に行くことと、みんなで地獄に落ちることのどちらが良いのかなんて、答えなんて出ないのだ・・・・。
劇を最後まで読んでどう思うかは読み手次第・・・・そう思う。
Go to hell さぁ行くぜ Go to hell さぁ二人で・・・。


[ハードボイルドエッグ]

≪あらすじ≫
フィリップ・マーロウに憧れ、マーロウのようにいつも他人より損をする道を選ぶことに決めた「私」と、ダイナマイト・ボディ(?)の秘書が巻き込まれた殺人事件。タフさと優しさを秘めたハードボイルド小説の傑作。【読むときの注意点】1・笑いじわに気をつけること。2・ぽろぽろ泣けるから、人にいるところで読まないこと。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
ハードボイルドエッグ、直訳で固ゆで卵という意味だ。
じゃあ、半熟英雄よろしく完熟軍が攻めてくるのか?といったらそうじゃない。え?誰もそんなこと思っていない?こりゃまた失礼。
あくまでハードボイルド!孤独で渋い探偵に憧れ、職業に探偵を選んだ主人公。物語と現実のギャップ、そしてハードボイルド物語の主人公と本作の主人公とのギャップ。でも、まぎれもなく本作は最初から最後までハードボイルド!!
文庫本の裏表紙にある注意書きの、笑いと泣きに気をつけることも偽りなし、気分はまさに心を茹でられた感じでハートボイルド・・・・・はい、コレが言いたかっただけです。


[噂]

≪あらすじ≫
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。
香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実になり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫

噂が現実になる・・・・。

このフレーズだけで何杯ごはんがいけるだろうかってのは置いといて、ペルソナ2を思い出したりするのも置いといて、錯綜する情報の中で、何を汲み取り、何を信じるのかが鍵となるこの「噂」。
物語が進むに連れて、伏線が多く浮上してくるミステリの境地。
思わず、前のページを捲り確かめたくなること多々・・・・、そして物語の根底を覆しかねない、最後の1行の存在。
まったくの予想外!!ノーチェックや!!まるで初めて読んだミステリ(十角館の殺人)のときのような衝撃と破壊力がありました。

こういった感動を味わいたいが為に、ミステリというジャンルは存在し、ダメは読み続けるのだろう・・・・そう思いました。


[メリーゴーランド]

≪あらすじ≫
過労死続出の職場を辞め、Uターンしたのが9年前。啓一は田園都市の市役所勤務。愛する妻に子供たち、あぁ毎日は平穏無事。・・・・・・って、再建ですか、この俺が?あの超赤字テーマパークをどうやって?!
でも、もう一人の自分が囁いたのだ。(やろうぜ。いっちまえ。)
平凡なパパの孤軍奮闘は、ついに大成功を迎えるが―――。笑って怒って、時々しんみり。
ニッポン中の勤めの人の皆さん、必読。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
古い会社に顕著な因習、事なかれ主義、公務員である主人公の前に大きく立ちはだかる壁。
これが滑稽なほど描かれていて、主人公の友人は「まるで他の惑星上の出来事」と形容する。
当事者でない人間からすれば笑い話でしかないかもしれない、しかし、一社会人としてのダメからすれば、それは全て笑い飛ばせるような内容ではない、「過去にこうこうこういった実績があるから」「注意書きをするのは、不具合が起こったときに言い逃れができる」、そう、これは現実にある『笑えない滑稽な話』でもあるのだ。

先人が残した経験等を蔑ろにする気など毛頭ない、しかし、新しいことにチャレンジしていかなければ先は無いのだ。

「千年先までそうしてろ」

この恨みの篭った呪いの言葉は、作者による『変わろうとしない人』に対しての警告なのだろう。


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