そして森博嗣だけになった・・・


THE PERFECT MORI


S&Mシリーズ   Vシリーズ   短編集   Mシリーズ  その他


S&Mシリーズ


所謂、犀川 創平&西之園 萌絵シリーズ
N大工学部建築学科の助教授である犀川と、生徒である萌絵による師弟コンビが数々の事件に挑む!といったような感じ。
ちなみにこのシリーズの見所は「天才」です。色々な話に色々な天才が登場するというのが痺れます。
探偵役である犀川先生の思考は例えるなら分散型といったところで、萌絵は集中型といった感じ、その思考のギャップがこのシリーズを面白くしているのだとダメは思います。どういうことかと言うと、基本的に頭の回転の速い萌絵が事件に真正面から挑み、その持ち前の思考速度を生かして力ずくで事件を解こうとします。ところが犀川先生は多角的に事件を考えるのでいつも萌絵よりもショートカットして先に事件の真相に辿り着くといった感じ。(読者は萌絵サイド)


すべてがFになる  冷たい密室と博士たち  笑わない数学者  詩的私的ジャック  封印再度  幻惑の死と使途  夏のレプリカ  今はもういない  数奇にして模型  有限と微小のパン

[すべてがFになる]

≪あらすじ≫
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリィ登場。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
森先生のデビュー作。S&Mシリーズの1作目にあたります。(1996/04/05発行)
といっても森先生の作品を書いた順番というのは、冷たい密室、笑わない、詩的私的、すべてがF、封印再度、といった順番で、本来なら4作目にあたるのですが、編集者の人に冷たい密室のインパクトが無いために順番を変更されたという裏事情があります。(そんなわけで萌絵はこのとき大学1年生なわけ)
作品に関しては、シリーズ最強の天才「真賀田 四季」(女性デス)が登場するのでインパクトありありです。
また、物語の冒頭で彼女が言う「数字の中で、7だけが孤独なのよ」という台詞が結構あとになってから効いてきますし、ミステリということを抜きにしても結構面白い作品だと思います>出てくるキャラクタのほとんどが魅力的なので
ただ、作中でコンピュータ用語が普通に飛び交うので、コンピュータをあまり知らない人がコレを読んで果たしてわかるのだろうか?という疑問もあったり・・・・(メールやUNIXはあたり前、ディレクトリやFTPなんていう単語が何の説明もなく飛び交います)

一応、漫画やゲームにもなっていたりしますし、ミステリ界では「理数系ミステリ」なんて言われたら森作品!と言われるくらいメジャなので、一度は読むべき作品かも・・・


[冷たい密室と博士たち]

≪あらすじ≫
同僚の誘いで低温度実験室を尋ねた犀川助教授とお嬢様学生の西之園萌絵。だがその夜、衆人環境かつ密室状態の実験室の中で、男女二名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?
人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが・・・・。究極の森ミステリィ第2弾。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
森先生の書いた正真正銘の処女作です。(1996/07/05発行)
タイトルの通り密室ものです。これぞ本格!と言わずに何を本格と言うでしょうか。・・・・でもインパクト無いですorz

森先生はキャラクタの名前は周囲にいる人達から取ったりしており(犀川も西之園も実在する森研究室の生徒の名前から取ったとのこと・・・・・)、さらにN大学に関してはほぼそのまま作品に書いているのですが、この作品に出てくる舞台の極地研というのは、架空のセンターだそうで実際にN大学には存在しないとのこと・・・・う〜ん残念。

・・・・・あ、ちゃんと今回もコンピュータ用語が説明もなく飛び交うのでご心配なく(笑)


[笑わない数学者]

≪あらすじ≫
偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され・・・・。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。超絶の森ミステリィ第3弾。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫


[詩的私的ジャック]

≪あらすじ≫
大学施設で女子学生が連続して殺された。現場は密室状態で死体には文字状の傷が残されていた。捜査線上に浮んだのはロック歌手の結城稔。被害者と面識があった上、事件と彼の歌詞が似ていたのだ。N大学工学部助教授・犀川創平とお嬢様学生・西之園萌絵が、明敏な知性を駆使して事件の構造を解体する!(文庫版裏表紙より)

≪感想≫


[封印再度]

≪あらすじ≫
50年前、日本画家・香山風采は息子・林水に家宝「天地の瓢」と「無我の箱」を残して密室の中で謎の死をとげた。
不思議な言い伝えのある家宝と風采の死の秘密は、現在にいたるまで誰にも解かれていない。そして今度は、二つの死と家宝の謎に人気の犀川・西之園コンビが迫る。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫


[幻惑の死と使途]

≪あらすじ≫
「諸君が、一度でも私の名を呼べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才奇術師・有里匠幻が衆人環視のショーの最中に殺された。しかも遺体は、霊柩車から消失。これは匠幻最後の脱出か?幾重にも重なる謎に秘められた真実を犀川・西之園の理系師弟が解明する。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫


[夏のレプリカ]

≪あらすじ≫
T大学院生の簑沢杜萌は、夏休みに帰省した実家で仮面の誘拐者に捕らえられた。杜萌も別の場所に拉致されていた家族も無事だったが、実家にいたはずの兄だけが、どこかへ消えてしまっていた。
眩い光、朦朧とする意識、夏の日に起こった事件に隠された過去とは?「幻惑の死と使途」と同時期に起こった事件を描く。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫


[今はもういない]

≪あらすじ≫
避暑地にある別荘で、美人姉妹が隣り合わせた部屋で一人ずつ死体となって発見された。二つの部屋は、映写室と鑑賞室で、いずれも密室状態。遺体が発見されたときスクリーンには、まだ映画が・・・・。おりしも嵐が襲い、電話さえ通じなくなる。S&Mシリーズナンバーワンに挙げる声も多い清冽な森ミステリィ。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫


[数奇にして模型]

≪あらすじ≫
模型交換会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌悪がかけられたが、彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫


[有限と微小のパン]

≪あらすじ≫
日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に「シードラゴンの事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体とは・・・・。
S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫



Vシリーズ


所謂、瀬在丸紅子シリーズ
バツイチお嬢様の瀬在丸紅子とアパート阿漕荘に住む面々、女装趣味の武道家である小鳥遊練無、コテコテ関西弁キャラの香具山紫子、
まさにハードボイルド探偵!?保呂草潤平の4人が数々の事件に挑む!!といった感じのシリーズ
時代が昭和ということや、アパートの仲良しメンバーが、ということからか、森博嗣曰く、
ミステリ版「めぞん一刻」という噂がナキニシモアラズ。だそうです^^;
また、舞台がS&Mシリーズと同じく、那古野市(ぶっちゃけ名古屋市)ということから、
S&MとVシリーズのリンクを見つけるのも楽しいかも・・・・時代は違うけどネ

黒猫の三角  人形式モナリザ  月は幽咽のデバイス  夢・出逢い・魔性  魔剣天翔  恋恋蓮歩の演習  六人の超音波科学者  捩れ屋敷の利鈍  朽ちる散る落ちる  赤緑黒白

[黒猫の三角]

≪あらすじ≫
一年に一度決まったルールの元で起こる殺人。今年のターゲットなのか、六月六日、四十四歳になる小田原静子に脅迫めいた手紙が届いた。探偵・保呂草は依頼を受け「阿漕荘」に住む面々と桜鳴六画邸を監視するが、衆人環境の密室で静子は殺されてしまう。森博嗣の新境地を拓くVシリーズ第一作。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
記念すべきVシリーズの第一作目です。(1999/05/06 発行)
ストーリの謎としては密室ものなのですが、密室にばかり気が向いていると真の謎を解くことはデキナイでしょう・・・・っと、ネタバレになりそうなので余り口にできませんが、本作は非常に森テイストが強く、謎が多く登場します。ところがその謎についての解答は全て本には載っておらず、真の答えについては自分で解かなければなりません。
しかも、注意して読まなければその謎の存在すらも気付かない場合があります。つまり読み手によってこの作品は様々な顔を持っているというわけです。(普通はそうか)

ダメが感じた作品のテーマとしては「ルール」でしょうか?京極夏彦先生の「魍魎の函」に近いかも・・・・っと、調べたら、森先生自身も「魍魎の函」とテーマが同じだと日記で書いていました。一応どちらとも読んだダメの感想としては、どちらも同じテーマですが、作者により感じ方が違いますし、それによって作品の価値が落ちることはアリエマセンので機会があるのなら両方の作品を読み比べてみるのも面白いかも。

あ、ちなみにS&Mシリーズみたくコンピュータ用語は出ません(笑)


[人形式モナリザ]

≪あらすじ≫
蓼科に建つ私設博物館「人形の館」に常設されたステージで衆人環視の中、「乙女文楽」演者が謎の死を遂げた。二年前に不可解な死に方をした悪魔崇拝者。その未亡人が語る「神の白い手」。美しい避暑地で起こった白昼夢のような事件に瀬在丸紅子と保呂草潤平ら阿漕荘の面々が対峙する。大人気Vシリーズ第2弾。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの2作目です。(1999/09/05 発行)
森テイスト大爆発です。トリックについてはそう難しくないのでワカル人にはワカルといった作品なのですが(ちなみにダメはわかりませんでしたが)、わかった人は読み終えたあと気付くことでしょう。このミステリという名の糸・・・いや、「意図」に操られていた人形の存在に・・・・。

また、今回のストーリの舞台は長野県の白樺郷がモデルだったりします。


[月は幽咽のデバイス]

≪あらすじ≫
薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨なしたいが、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。
紅子が看破した事件の意外な真相とは!?(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの3作目。(2000/01/05 発行)
少しネタバレですが「月」「火」「白」の3つから連想できるもの・・・・、これの答えをすぐに出さないで欲しかったなぁ〜(少ししか考える時間が無かったので悔しさ倍増でドンって、何言ってるんだろ?>自分)

何かテーマを上げるとするならば「先入観と固定観念」といったとこでしょうか。
ちなみに今回はコンピュータ用語は出ないのですが、通信関係の話がちらほら出てくるので、そっち系に詳しい人は紅子さんの説明を聞いて、あぁ、上手い表現の仕方だなぁと思うかも。(えぇ、ダメは思いましたとも)


[夢・出逢い・魔性]

≪あらすじ≫
20年前に死んだ恋人の夢に怯ええていたN放送プロデューサが殺害された。
犯行時響いた炸裂音は一つ、だが遺体には二つの弾痕。番組出演のためテレビ局にいた小鳥遊練無は、事件の核心に位置するアイドルの少女と行方不明に・・・・・。
繊細な心の揺らぎと、瀬在丸紅子の論理的な推理が際立つ、Vシリーズ第4作!(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの4作目。(2000/05/05 発行)
今回は森先生のセンスの良さにやられまくりました。
まずタイトルのセンスの良さ!
「夢・出逢い・魔性」(You May Die in My Show)
物語中に何度か出てくるのですが、続けて読むと「夢で逢いましょう」となり、ダメはこのタイトルの良さに感動しました。口に出したときの音の響き、そして隠された意味、英題での遊びもかなりグッときます。もぅ、このタイトルだけでもこの作品は買う価値がアリです。
また、序章の「白」から始まり終章の「黒」で終わる各章のタイトルも必見ものです。

次にストーリでの会話のテンポの良さ!!(これは森作品全てに言えることなのですが)
以下、少し作中の会話を抜粋したものを反転さして載せます。読みたい人だけ反転さして読んで下さい。
どしゃ降りの雨の中、白いベンツに練無とアイドルの少女が乗ったときの会話

「ワイパ好き?」
「え?」練無は彼女の顔を見る。
「私、大好き、これ」
「へぇ・・・・・・、じゃあ、もっと沢山付けてもらったら?」
「これ、端っこは拭いてくれないのよ」
「うん、そうだね」
「そこが、少し嫌いなとこ」
「あそう・・・・・・」練無は肩を竦める。「誰だって欠点はあるよ」

最後に森博嗣らしいオチまであり、事件のトリックが解明されたからといって気を抜けませんし(ダメは抜いていて終盤に発狂しました)、森テイストが好きな方には是非召し上がって頂きたい作品です。


[魔剣天翔]

≪あらすじ≫
アクロバット飛行中の二人乗り航空機。航空に浮ぶその完全密室で起こった殺人。エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣をめぐって、会場を訪れた保呂草と無料招待券につられた阿漕荘の面々は不可思議な事件に巻き込まれてしまう。
悲劇の宝剣と最高難度の密室トリックの謎を瀬在丸紅子が鮮やかに解き明かす!(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの5作目。(2000/09/05 発行)
トリックうんぬんよりも、出てくるキャラクタの行動がどれも予想できずにカッコ良かったです。(めろめろ)
また、ストーリの鍵となる宝剣「Angel maneuver」を森先生は、「天使の策略」ではなく「天使の演習」と訳しているところがステキでした。持ち主が次々に死ぬと言われる呪われた宝剣ではなく、幸せになるための宝剣。まさに「天使の演習」と、思ったシダイ。

今回の舞台は、ダメは最初鈴鹿サーキットかな?と、思いましたが(ゴーカートでコースを回れるなどの説明から)どうやら各務原航空宇宙博物館のようですね。(地理的には名古屋空港の北、岐阜県の南)


[恋恋蓮歩の演習]

≪あらすじ≫
世界一周中の豪華客船ヒミコ号に持ち込まれた天才画家・関根朔太の自画像を巡る陰謀。仕事のためその客船に乗り込んだ保呂草と紫子、無賃乗船した紅子と練無は、完全密室たる航海中の船内で男性客の奇妙な消失事件に遭遇する。
交錯する謎、ロマンティックな罠、スリリングに深まるVシリーズ長編6作!(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの6作目。(2001/05/05 発行)
ダメの日記にも書きましたが、序章を読んだだけでこの本を読む価値アリアリだと思いました。ダメが長いことかけて文にしようとしていたことが、ココに理想に近い形で書かれております。
序章もそうですが、全体のストーリもダメの波長に一致していたため、凄く読んでいて楽しめました。

本作品は前作の魔剣天翔とリンクした話なので、前作を読んでからじゃないとこの作品の面白さは幾分パワーダウンしてしまうかも。

[六人の超音波科学者]

≪あらすじ≫
土井超音波研究所、山中不覚に位置し橋によってのみ外科医と接する、隔絶された場所。所内で開かれたパーティに紅子と阿漕荘の面々が出席中、死体が発見される。爆破予告を警察に送った何者かは橋を爆破、現場は完全な陸の孤島と化す。真相究明に乗り出す紅子の怜悧な論理。美しいロジック溢れる推理長編。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの7作目。(2001/09/10 発行)
久々にこれぞ本格!と唸るような作品でした。陸の孤島を舞台に起こる殺人劇、首無し死体、六人に隠された意味・・・・、あぁ、まさに本格!!
一度読了した後にも、人物紹介や各章のタイトルを見て欲しい作品で、それほどに作りこまれた作品デス。
もしもコレがVシリーズの6作目だったら・・・・と少し考えてしまいました。

[捩れ屋敷の利鈍]

≪あらすじ≫
エンジェル・マヌーヴァと呼ばれる宝剣が眠る“メビウスの帯”構造の巨大なオブジェ様の捩れ屋敷。密室状態の建物内部で死体が発見され、宝剣も消えた。
そして発見される第二の死体。屋敷に招待されていた保呂草潤平と西之園萌絵が、事件の真相に至る。S&MシリーズとVシリーズがリンクする密室ミステリィ。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの8作目。(2002/01/16 発行)
森先生が講談社ノベルス20周年記念のメフィスト賞作家による「密室」書き下ろしシリーズに参加した作品です。
あらすじにも書かれていますが、本作品ではS&Mシリーズのキャラクタが登場します。ただし事件現場に居合わせたキャラクタは萌絵と桃子さんだけで、犀川先生は現場に居合わせていません。それと同時にVシリーズのキャラクタも、現場に居合わせたのは保呂草のみで、他のいつものメンバは現場にいません。しかし、登場人物紹介の覧で「招かれなかった人々の覧」に犀川先生と紅子さんが並んでいるのを見て、ワカル人にはワカル「ニヤリ」となるポイントがあったりと、非常に憎い演出が様々なところに散りばめてあります。

ちなみに、この本はこれまでの森先生の作品中「一番短い長編作品」(<なんだそりゃ)となっています(P262)。ですが作品が短い分、文章の切れ味がいつにもまして鋭くなっているので心配はイリマセン。

[朽ちる散る落ちる]

≪あらすじ≫
土井超音波研究所の地下に隠された謎の施設。絶対に出入り不可能な地下密室で奇妙な状態の死体が発見された。
一方、数学者・小田原の示唆により紅子は周防教授に会う。彼は、地球に帰還した有人衛星の乗組員全員が殺されていたと語った。空前の地下密室と前代未聞の宇宙密室の秘密を暴くVシリーズ第9作。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズの9作目。(2002/05/10 発行)
本作はVシリーズ7作目の六人の超音波科学者の続きにあたるため、イキナリこの作品を読むのは厳しいかも・・・・てか、本作はやたらと色々な話とリンクしていたりするんで、個人的には地球儀のスライスに含まれている「気さくなお人形、19歳」と六人の超音波科学者だけでも読んでからじゃないと厳しいです。さらに欲を言えば魔剣天翔あたりも読んでから・・・・(以下略)。
ミステリ界では双子なんかで見た目で区別がつかないキャラクタが良く登場し、さらに使われるネタ(トリック)もほぼ毎回変わらないので、そろそろ耐性ができていてもおかしくないのでしょうが、いつもいつも絶妙なタイミングで使われるため未だに発狂してしまいます(´・ω・`)本作の森先生の使い所なんて、カナリの芸術的タイミング 

あ、ちなみに本作を読んでから、ダメのVシリーズで一番好きなキャラクタが練無から保呂草に移ったのは内緒デス。

[赤緑黒白]

≪あらすじ≫
鮮やかな赤に塗装された死体が、深夜マンションの駐車場で発見された。
死んでいた男は、赤井。彼の恋人だったという女性が「犯人が誰かはわかっている。それを証明して欲しい」と保呂草に依頼する。そして発生した第二の事件では、死者は緑色に塗られていた。シリーズ完結編にして、新たなる始動を告げる傑作。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
Vシリーズ10作目。(2002/09/10 発行)
シリーズの完結編、凄く読みたい!でも読みたくない・・・。この葛藤に苦しみながら、いや、もしかしたら楽しみながら読み進めたのが今作。

祭りの準備中や祭りの最中は楽しくてしかたがない、しかし後片付けの段階になると急に寂しくなる。それは作品の準備期間が長ければ長いほど、作品が面白ければ面白いほど寂しくなる。そういった点でこの作品は非常に寂しくなる作品です。
なぜなら森先生の作品は各々がリンクしあっているため、この赤緑黒白はデビュー作である『すべてがFになる』からの準備期間があるからだ。真賀田四季という天才の存在。秋野秀和という殺人者の存在。この、シリーズを通して読んでいる者に対してだけの、今までの作品が収束していく感覚。
まだまだ散りばめれられた謎やエピソードはたくさんあるだろう、それをそのまま読者に教えるのはなく、各作品にはヒントしか書かずに、謎を掘り当てるまで読め!といったこのスタイル。
なぁ〜んだ、終わりなんて無いじゃん。と思えているダメはきっと幸せ者でしょう。


蛇足だが、作中で語られ作品のタイトルにもなっている「赤緑黒白」についてだが、色々と解釈の仕方があるので間違っているとは言わないが、電気屋として語るなら色の順番は「黒白赤緑」になる。




Mシリーズ


所謂、工学部・水柿助教授シリーズ
水柿助教授と須摩子さん夫婦の日常を描いたアンチミステリィ(笑)といわれるシリーズ
ワカル人が読めばワカルのですが、
水柿助教授が森助教授、須摩子さんが森先生の奥さんスバル氏のモデル
というか、そのまんまデス。
そんな二人の恥かしい過去などを赤裸々に綴った日常ミステリで
「水柿君の日常」「水柿君の逡巡」「水柿君の離脱」といった巨編三部作になるとのこと

[工学部・水柿助教授の日常]

≪あらすじ≫
水柿小次郎三十三歳。後に小説家となるが、いまはN大学工学部助教授。専門は建築学科の建築材料。よく独身に間違われるが、二歳年下のミステリィ好きの奥さんがいる。彼はいつしか自分の周囲のささやかな不思議を妻に披露するようになっていた。きょうもまた、あれが消え、これが不可解、そいつは変だ、誰か何とかしろ!と謎は謎を呼んで・・・・・。

≪感想≫
Mシリーズ第1作目。(2001/01/10 発行)
主に森先生水柿君の若い頃を描いた作品なので、当然出てくるミステリ話は現実にあったものなので殺人事件や密室といったモノは存在しません。しかも、現実にあったというミステリの解答はどれもミステリ小説では許されない、現実にあるのだろうか?(あったんだけど)といったモノなので、本格ミステリを期待する人は読んではイケマセン。(ミステリ小説で出せば「こんなキャラ現実にいねーよ!」っていう人達が登場するので・・・・>しかし現実には存在する)
Eシリーズにも言えることなのですが、森博嗣フリーク(作品がじゃなくて作者が好き)な方だったり、森先生の奥様であるスバル氏が好きな方だったら読む価値大デス。(二人とも好きなら絶対に読みましょう、ただし噴出してしまう可能性があるので電車の中では大変危険です)



短編集

まどろみ消去   地球儀のスライス   今夜はパラシュート博物館へ   虚空の逆マトリクス

[まどろみ消去]

≪あらすじ≫
大学のミステリィ研究会が「ミステリィツアー」を企画した。参加者は、屋上で踊る三十人のインディアンを目撃する。現場に言ってみると、そこには誰もいなかった。屋上への出入り口に立てられた見張りは、何も見なかったと証言するが・・・・・。(「誰もいなくなった」)ほか美しく洗練され、時に冷徹な11の短編集。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
森先生の短編集第一作目です。(1997/07/05 発行)
長編と違い、短編集ならではの様々な角度から切り込んでくるストーリ。中にはミステリというよりファンタジィ(幻想的)と呼べる作品もあり、先生の普段の長編とは違った雰囲気が味わえました。ダメ的にこういったファンタジィな話も好きなので書こうと挑戦しては、その度に失敗しています。(ダメの場合だと幻想的というより妄想的だったりしますが)
S&Mシリーズの話が2作ほど入っており、知らないと少しキツイところもあるのですが、それを抜いてもこの本の価値はアリアリです。

また、各ストーリの最初には山田章博氏のイラストがあり、コレがとても写実的でステキでした。ストーリを読み終えてから見るとさらにGOODです。


[地球儀のスライス]

≪あらすじ≫
「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ二編を含む、趣向を凝らした十作を収録。『まどろみ消去』に続く第二短篇集。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
短編集第2弾。(1999/01/08 発行)
やはり森先生の短編はどれも切れ味が鋭くて良いです。読んでいて、こんな話だったら面白いだろうなぁ、と思ったらその通りになったり、さらにはその想像以上だったりと、読んでいてとても気持ちが良いです。
個人的には「小鳥の恩返し」「気さくなお人形、19歳」「僕は秋子に借りがある」が好きです。

また、文庫版だと解説が富樫義博さんで、森ミステリィ、理系、文系についての考察がありとても面白かったです。読む機会がある方は是非文庫版を。

[今夜はパラシュート博物館へ]

≪あらすじ≫
N大学医学部に在籍する小鳥遊練無は構内で出会った風変わりなお嬢様に誘われて「ぶるぶる人形を追跡する会」に参加した。大学に出没する踊る紙人形を観察し、謎を解こうとしているのだが・・・・。
不可思議な謎と魅力的な謎解きに満ちた「ぶるぶる人形うってつけな夜」ほか、魅惑の七編を収録した珠玉の第三短編集。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
短編集第3弾。(2001/01/10 発行)
この作品は短編集なのですが、シリーズ物の短編が収録されているため、この作品を読むまでにS&MシリーズとVシリーズは読んでいないと面白さは半減するでしょう。シリーズ外の短編も、もちろん収録されているのですが、まだS&MとVシリーズに手を出していない方は読むのを控えた方が無難です。

ミステリには珍しく血生臭い話はほとんど無く、各ストーリにそれぞれコジマケン氏(浮遊研究室などのイラストを書いているイラストレータ、とても特徴的でセンス抜群な方です)のイラストが入り、とても豪華な作品となっています。

[虚空の逆マトリクス]

≪あらすじ≫
西之園萌絵にとって、その夜は特別なものになるはずだった。けれどちょっとした心理の綾から、誘拐事件の謎解きをする展開となり・・・・・・(「いつ入れ替わった?」)。
上から読んでも下から読んでも同じ文章になる回文同好会のリリおばさんが、奇妙な殺人事件を解決(「ゲームの国」)など軽やかに飛翔する、短編7作を収録。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
短編集第4弾。(2003/1/10 発行)
ミステリと言えば、血生臭いことを想像してしまいがちですが、この作品は至って清潔。
そしてどれもオチが素晴らしいです。しか〜し、オチよりも、オチに至るまでの過程や、関係のない(<そう思っているだけで伏線という可能性もナキニシモアラズ)所がダメ的にツボに嵌りました。
特に回文サイコー。『面倒なうどんめ』や『萎め梅干』なんかも最高だけど、『寝るアルね』なんて堪らないです。
ほんと森先生は、良いよ。<これは回文と呼べるレベルなのだろうか・・・



その他

そして二人だけになった   堕ちていく僕たち   ZOKU

[そして二人だけになった]

≪あらすじ≫
全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊。その内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に科学者、医師、建築家など6名が集まった。プログラムの異常により、海水に囲まれた完全な密室と化した「バルブ」内で、次々と起こる殺人。残された盲目の天才科学者と彼のアシスタントの運命は・・・。
反転する世界、衝撃の結末。知的企みに満ちた森ワールド、ここに顕現。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
森博嗣のシリーズ外初の長編作です。(1999/06/18 発行)
タイトルからもすでに予想できることですが、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」のように、一人、また一人と人が殺されていき、最後には「二人」だけになってしまいます。

ダメは見事に騙されましたが、物語終盤で謎がワカリ最初から最後までヒントが出つづけていたことを知ったとき、歯車が一致するイメージを思い浮かべました。
要所要所で少しハードボイルドな作品ですが、これぞまさにミステリ!といった感じです。


[堕ちていく僕たち]

≪あらすじ≫
ある日突然、男が女に、女が男に変わったら・・・・・・? 神出鬼没の摩訶不思議なインスタント・ラーメンが巻き起こすミステリアスな五つの物語。
生まれてからずっと男でいつづけるのも、女で一生終わるのも、人間ってけっこう楽しいじゃない。性に悩めるあたなも、悩んだことなんて全然ないあなたも、さぁ、そんな綱渡りのような固定観念を捨てて、性差の呪縛ものりこえて、新しい自由な世界へとようこそ。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
実は森博嗣が昔描いた漫画が原作という、変わった経緯を持つ作品です。(2001/06/30 発行)

さて、お話の核となるのは今となってはあまり珍しくない、男女の性別が入れ替わるといったもの。
え?それだけ?と思う人がいるかもしれない、実際、性別を変えるなんて不可能でもなんでもないわけで、もっと転校生と階段を転げ落ちて身体が入れ替わってしまう!ぐらいのインパクトが無いと、なんて具体的なことを言う人がいるかもしれないんだけど、ソコはソレ、アレはコレ。

『性別が変わる』ということがもたらす五つのミステリ(最後のオチなんて気付いたときには最高)。しかし、ソコには性別なんて関係ない五つのミステリもまた存在する。
例えダメの性別が変わろうが、日々の日課は変わらないし、ご飯を食べて、お風呂に入ってベッドで気持ちよく寝るのであるマル。
結局、性別なんて些細なものなのヨ〜ン。とまとめてみる。<まとまっているのか?


[ZOKU]

≪あらすじ≫
犯罪未満の壮大な悪戯を目的とする非営利団体<ZOKU>と、彼らの悪行を阻止せんとする科学技術禁欲研究所<TAI>。その秘密基地は真っ黒なジェット機と真っ白な機関車!謎の振動、謎の笑い声、ばらまかれる芸術作品・・・・・・。一体何のために?
被害者が気付かないほどのささやかな迷惑行為をめぐり、繰り広げられる悪と正義(?)の暗闘。
痛快無比の物語。(文庫版裏表紙より)

≪感想≫
今ある科学技術を駆使し、リアルにヤッターマンを描いた作品(注:描いてません)
(2003/10/21 発行)

読んでいて思ったことは、地味〜な悪戯を行う技術や、悪の組織の経営状況、そして人間(<これに関しては全ての森作品で言えるか)、これらが非常にリアルだということ。良い意味でね。

子供向けの番組(特撮やアニメ)に出てくるような悪の秘密組織、出てくる今週のビックリドッキリメカ、ツッコミを入れればボロボロとおかしな点が出てくるようなもんだけど、内容を地味にして、それをちゃんとした技術と資金でカバーしてやると悪の秘密組織(?)はこうなるのか・・・。
きっと、こういった悪の秘密組織がある世界こそが、1種の平和の究極系なんだと思う。


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