窓の外から聞こえる、スズメのさえずり。カーテンの隙間から差し込む、一筋の朝日。
昨日の慌しい目覚ましが嘘のように、クロノはごく平和で、爽やかな目を覚めを堪能した。








Act.3






「(昨日は帰ったのが遅かったし。ロゼット、まだ寝てるだろうなぁ)」
先ほど淹れたコーヒーを飲みながら、クロノは簡単な身支度を始めた。講演会に普段着で参加するわけにもいかないので、普段はあまり着ないYシャツを着込む。
空いた朝食の皿を流しに漬け込んで、そうだ、と玄関に向かった。
「(新聞とってこなきゃ。3泊だし、やっぱり『新聞いりません』の張り紙はしといた方がいいかな…)」
そんな事を考えながら鍵をはずし、玄関を出たところで2軒隣のヨシュアと鉢合わせた。こちらに気付いたらしく、あくびをしながら近づいてくる。
「おはようクロノ」
「おはよう、ヨシュア。なんだか眠そうだね?」
「眠そうも何も、元はといえばクロノのせいだよ…」
あくび交じりに見に覚えの無い事を言われて、クロノは少し慌てた。

「僕?」
「そ。まったく、ロゼットも何もあんな時間から頑張らなくてもいいのに…クロノ、ちゃんと責任取ってよね」
「 ? 」
話の先が全く読めないクロノを取り残して、ヨシュアはさっさと家に戻ってしまった。

「(なんだろ…僕とロゼットに関係あるのか?)」
張り紙をして家に入り、ぐるぐると考えながら郵便受けから新聞を取ると、ふと、一緒に小さな包みが入っているのに気が付いた。
「(これは…)」
薄ピンクの包装紙に、決して器用とはいえない様で結ばれた赤いリボン。間に、差出人の書かれていないカードが挟まれていた。

『たまたま気が向いて、偶然材料もそろってたから作ってみました。ホワイトデーは3倍返しよ!』

「…だったら、素直に名前も書けばいいのに…」
クロノは呆れたように呟いて、とびきり優しい笑顔を浮かべた。自分の分のチョコが無いといったのも、これでうなずける。
ヨシュアを巻き込んで、一生懸命にチョコを作るロゼットの姿が、目に浮かぶようだった。

「(手作りって事は、もしかして…)」

本命を期待しても、いいのかな?

笑みをさらに深くしながら、クロノは早くも1ヵ月後のホワイトデーに思いを馳せた。
わがままで意地っ張りで、優しくて大切な彼女のために、とびきりのお返しを用意しなければならない。

「…まったく、世話が焼けるよ」

そういったクロノの顔には、言葉とは裏腹に楽しそうな笑顔が浮かんでいた。

箱がいびつなのはロゼットの不器用さのせいにしてみる。



Fin.









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はい、いかがだったでしょうかバレンタイン小説〜
燃え尽きました。
は、話がまとまらないまとまらない、コーシャが目立たない目立たない。(汗)それでも修正を加えながら、なんとかかんとか書き上げました…。
書きたかったのは缶を握り潰す(潰してないて)クロノだったなんてそんなそんな。夫婦に間違われるクロノとロゼットだったなんてそんなそんな。