『星空の下で』
二人は川原に腰掛け、星を見ていた。
宿屋に着くにはまだ遠く、今夜は野宿になりそうな・・・二人が星を見ていたのは、実際そんな場所だった。
すぐ側を流れる川には満天の星空が映り込み、さながら季節外れの蛍を髣髴とさせる。
殷雷のとなりに腰掛けながら、和穂はうっとりしたような口調でつぶやいた。
「わぁ・・・綺麗だね、殷雷」
「・・・今夜は野宿だってのに、和穂お嬢様はえらく呑気であらせられますな」
「そう?でも、いいじゃない野宿だって。おかげで、こんなに綺麗な星空も見れたんだし」
こちらに振り返り、にっこりと和穂が微笑む。
・・まぁ、こんな笑顔が見られるのなら、野宿も悪くは無いかな・・・と、殷雷は心の内でつぶやいた。
そっと、和穂の横顔を盗み見る。当の本人は、気づかずに『綺麗』を連呼している。
ふと、殷雷は気づいたようにつぶやいた。
「・・・まさかお前ら、『和穂の方が綺麗だ』なんていう、歯の浮くような台詞を期待しているんじゃあるまいな?」
ぎくり。
「・・・?誰に話し掛けてるの、殷雷?」
「いや、なんでもない」
苦虫を噛み潰したような表情で適当に返事を返すと、殷雷はごろりと横になった。
怪訝そうな顔をしていた和穂だが、ふっと笑顔を浮かべ、殷雷の胸に顔をうずめた。
「?どうした、和穂?」
「・・・そんな台詞、いらないよ」
殷雷の温もりをかみ締めながら、和穂は囁いた。
「・・・どんな甘い台詞より、殷雷が側に居てくれる事が、私は一番嬉しいよ」
「・・・・・・・・馬鹿が」
照れた様子で一言だけ言葉を返すと、殷雷は少し不器用に、和穂の頭をなでた。
二人を見守るのは、満天の星空と、緩やかな春風だけだった。
・・・わけわからんっスね。ハハハン。
夜中に打つもんじゃないです。