001.初夏の出来事

 

 

窓の開け放たれた教室は、明るかった。
ふうわりと、気持ちのいい風が、ひらひらとカーテンを揺らしている。
少し汗ばんだ体には、涼しくて気持ちがいい。
そして、彼が居た。
窓際に、椅子を置いて。薄く閉じられた相貌は、どこを見ているのだろう?
さらりと風に流れる髪に、少し触れたいと思った。

「和穂」

こちらに気づいて、椅子から立ち上がる。

「用は済んだか?えらく遅かったが」

こくんと頭を振って、軽くお礼を言った。待っててくれてありがとう。

「別に、たいした事じゃねぇ。ほれ、さっさと帰るぞ」

もう一度、こくんと頭を振って、一歩先を歩く彼を追った。
ふうわりと、涼しい風が、私の背中を押す。
なんだか少し、勇気が出たような気がした。

「…なんだ?」
「なんでもない」

繋いだ手を、ゆっくりと握って。
今ならきっと、この気持ちよすぎる風のせいだと言える。
ある初夏の出来事。







わけわからん…初夏とか、関係ないじゃん!!(一人ツッコミ)