ポジトロンCTってなに?


Positronとは

ポジトロンは電子の反粒子で、電子と出会うと消滅してエネルギーにかわります(β+崩壊)。11Cや15Oなどポジトロン放出核種は半減期が約20分,2分と極めて短いため、tracerの標識合成・動態測定に時間的制約を伴うという特性を有していますが、その反面、次のような優れた利点を有しています。@これらは生体構成要素の同位元素なので生理学的・生化学的な測定がtracerの修飾を受けることなく可能、A半減期が極めて短いため反復検査・負荷検査が可能、B半減期が短いので、比放射能が高く、極微量下での生命現象を探ることが可能、という利点です。

Positron Emission Tomographyとは

ポジトロンは電子と衝突する際に0.51MeVの2本の電磁波を互いに180゜方向に放出するので、一直線上に設置した放射線検出器で測定し、同時計数回路で計数すると原子核崩壊がその直線上で起こったことが確認できます。この検出器を360゜方向に設置するとX線CTとほぼ同じ原理でRI分布を断層画像化し、かつ、定量化できます。また、PETでは、体内のRI濃度を断層画像として作像しているため、任意の部分に関心領域(ROI)を設定すればその部分のRI濃度を知ることができます。また、使用したtracerの代謝が既知でかつ解析モデルが確立していれば、そのtracerの体内挙動を定量的に知ることができ、前述したように反復検査・負荷検査も可能です。したがって、PETではin vivo chemistryで生化学・生理学的機能検査が行えます。

ポジトロンCTの可能性

 tracerの代謝が既知であれば、そのtracerの体内挙動を定量的に知ることができると述べました。しかし、その前に、ポジトロン放出核種をもつtracerが合成できなければなりません。現在、比較的簡単に作成できるポジトロン放出核種は11-C,13-N,15-O,18-Fなどで、これらで標識したtracerが合成されれば肝機能評価に利用できます。肝臓では多くの物質が代謝を受けるため、それぞれの物質の肝における代謝を動態的に検索すればその物質に関する肝機能が把握できると考えられます。これらの物質の中に、現在合成が可能である一部のアミノ酸(11-C-methionineなど)や脂肪酸(11-C-palmitateなど)があります。しかし、残念ながらこれらの物質は肝以外(たとえば筋肉内)でも代謝を受けるため肝機能を正確に評価するtracerとはなり得ないのです。将来、ICGやbilirubinなどにポジトロン放出核種が導入できるようになることが期待されます。


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