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第2・4週の木曜日発行  2010.03.11. VOL.235
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《 今 回 の 内 容 》

 ■力の抜き方
          H.S.S.R.プログラムス  主宰者 魚住 廣信
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 3月に入り、私の学校も後卒業式を残すのみとなりました。現在4月から
の活動について調整中です。今のところは、H.S.S.R.プログラムス主宰
での活動となりそうです。それに伴い、ホームページも少しずつリニューア
ルしていく予定でおります。これまで1900名を超える方に登録いただいてお
りますが、再登録の方やアドレス変更とアドレスが不十分な方もおられるの
ですが、十分整理できておりませんでした。それでこれまで登録していただ
いている方で登録内容が十分でない方々について整理しております。まず住
所がなかったり不十分である方、職業などの情報が全くない方について整理
しております。4月8日のニュースレターが届かない場合は、これに該当した
方ですのでもう一度登録してください。また心当たりのある方は早めに再登
録してください。4月から登録方法も変わります。登録が完了すればその旨
のメールを返送いたします。詳しくは4月以降のホームページをご覧いただ
ければと思います。基本的に情報発信のホームページにしたいと思っており
ます。

 1月のニュースレターで紹介しましたDVDですが、内容がよくわからな
いのでどのDVDがよいのかわからないという声をお聞きしました。一度に
たくさんのものを紹介しすぎたと思っております。それで今回は、現場でト
レーニング指導されている方のためにお勧めしたいものを紹介したいと思い
ます。1本目はウォーミングアップのものです。これは私がプロ野球球団の
コンディショニングアドバイザーであったときに指導していたもので、キャ
ンプでのウォーミングアップの内容と投手のトレーニングなども含まれてい
ますので参考になると思います。また高校野球チームのウォーミングアップ
も含まれていますが、これは私の著書(指導に悩んだときのベースボールコ
ーチングマニュアル)の中でも紹介しているもので、トレーニングを考慮し
たウォーミングアップで、体力作りを同時に目指したものになっています。
2本目は台湾での陸上(短距離とハードル)キャンプの記録です。10日間
のキャンプでいろんな練習方法やトレーニングが参考になると思います。特
に、トレーニングのところはいろんな競技に役立つと思います。配布希望の
方は、下記の事項を記入し、hssr-lab@hssr.ne.jpまで申し込みください。

尚、領収書は発行いたしませんので、了承の上、申し込みください。申し込
みの締切は、3月20日(土)の24:00までです。

No.01 ウォーミングアップ(プロ野球・高校野球、トレーニング含む)
 80分  10,000円(送料500円)

No.02 T&F台湾キャンプでの指導 279分 10,000円(送料500円)

※HSSR登録の名前、メールアドレスで申込みください。

名 前:

メールアドレス:

職 業:

送り先:〒

電話:

希望DVD:(Noとタイトルを書いてください)


次に、今後の勉強会の予定は、次のようになっています。以前のニュースレ
ターでは曜日が間違っていました。申し訳ございませんでした。日時は変わ
っておりません。参加希望の方は、詳細について下記の世話人の方にお問い
合わせください。

 それから静岡・名古屋辺りで勉強会の開催を希望されている方を探して
おられます。
ご希望の方がおられましたら袴田悠仁さん(yuhito_321@yahoo.co.jp)まで
ご連絡ください。


3月14日(日) 14時から(大阪・住吉区長居):定員10名
テーマ:モビリゼーション
問い合わせ:栗田 興司 pcp1996@cotton.ocn.ne.jp


3月28日(日) 14時から(大阪・住吉区長居):定員10名
テーマ:ストレッチング
問い合わせ:西 正史 relax_and@yahoo.co.jp


4月18日(日) 14時から(埼玉・南越谷):定員10名
 テーマ:「身体調整ならびにリハビリに使える操体法と体操」
 問い合わせ:遊馬 広之 yuma2@nifty.com


4月25日(日) 14時から(大阪・住吉区長居):定員10名
テーマ:レジスタンストレーニング
問い合わせ:栗田 興司 pcp1996@cotton.ocn.ne.jp


さて、今回のニュースレターでは、「力を抜く」とはどういうことなのか、
ということについて考えてみたいと思います。力を抜けといわれても、どれ
くらい抜けばよいのか。そして、本当に力を抜くことはできるのか、そんな
疑問に答えていただいた論文がトレーニング・ジャーナル2009.12号に「ト
ップアスリートでも難しい力の抜き方」(木塚朝博・筑波大学大学院人間総
合科学研究科准教授)掲載されていました。非常にわかりやすい解説であり、
指導の現場において参考になると思います。興味のある方は、掲載記事を
お読みください。ここでは、抜粋して紹介します。


『スポーツの指導において「力を抜け」とか「リラックスしろ」という言葉
を選手が理解しづらいのは「力を抜けと言ったって抜いてしまったらやりた
いことができなくなってしまう」と感じるからです。つまり、バッティング
であれば、バットを振りにいく力は必要です。必要な力と無駄な力というの
を理解していない状態の選手に「力を抜け」と言っても、きっと選手は力を
抜きすぎるか、理解できないことで逆に混乱してしまい動作そのものが崩れ
るか、いずれにしてもパフォーマンスは低下してしまいます。実際には「抜
け」と言われたときに、どれくらい抜けばよいのかということが1つの大き
な鍵になります。

もう1つの鍵は、力を抜く局面です。私は最近、選手の口元に着目していま
す。バッティングでバットにボールが当たった後、口から息を吐いているよ
うな状態を見ることがあります。まだ呼称はつけていないのですが、今のと
ころこれを「ブレスアウト」と呼んでいます。バットを振った後にも力が入
っていると、結果的にですが、スイングスピードは遅くなってしまいます。
また最初からブレスアウトをしていると、きっと力を入れられないでしょう。
ですから、テイクバックからボールがバットに当たるまでは力を入れておい
て、その後に無駄な力を入れないために「フーッ」と吐きながら振るのです。

ボールがバットに当たった後、いわゆるフォロースルーの局面で力が入って
いてもよいと思うかもしれませんが、そこで力を入れないことで筋へのダメ
ージを減らすことができますし、スピードを保ったまま振り抜くことでそれ
以前のバットスピードを落とさないことができます。逆にフォロースルーで
力を入れてしまったり止めようと思うと、それまでにスピードを落としてし
まうのです。

これはテニス選手でも見られます。テニス選手の中にはラケットにボールが
当たった後で大きな声を出す人もいますが、これもブレスアウトの例でしょ
う。フォロースルー時のスピードを落とさないことで、スイングのスピード
を高めようとしているのだと考えられます。また100m走でもブレスアウトし
ている選手がいます。加速局面から中間疾走では顔や首に力が入っているの
ですが、ゴール前になるとプレスアウトしているのです。ゴール前でのスピ
ード低下を抑えるために、無駄なカを入れないようにしていると考えられま
す。筋トレもそうです。筋トレで息を吐きながら力を出しなさいというのは、
1つには血圧を上げないようにするためですが、もう1つには息を吐いたほう
がスムーズに動けるという経験からきているのです。このように力を抜くの
はその量と局面が重要なのです。』


『体育やスポーツの分野では、これまでの研究にしても指導の理念にしても、
どうやって力を出すかということについて述べられてきた部分が圧倒的に多
いと思います。それに比べると、どうやって力を抜くかだとか、どうやって
力を入れずに済ませるかということのノウハウは非常に少ないのです。また、
それが高度な指導技術であるために力の抜き方について触れる機会のあるコ
ーチも少ないのかもしれません。あるいは、企業秘密のようになっているの
かもしれまぜん。

また人間の能力としても、抜くほうが難しいということも力の抜き方が語ら
れてこなかった1つの理由でしょう。たとえばフィードバックを与えながら、
山の形のように徐々に力を入れて抜かせるというタスクを与えます。その形
に沿って力を上昇させるときは比較的うまくいくのですが、抜くときにはど
うしても階段状になってしまい、スムーズに抜けません。これは脳の制御も
抜くときのほうが難しいから起こることです。

神経の発火頻度を見るとよくわかります。力を出し始めると、出力は低いけ
ど疲労には強いタイプの筋線維につながる神経が発火します。それが徐々に
大きな力は出るけど長続きはしないという筋線維につながる神経が発火する
ようになります。若い人では比較的スムーズにこの順番で力を出して逆の順
番で抜いていけるのですが、高齢になると抜くときに順番通りに抜けなかっ
たり、一気に抜いてしまったりして波形が乱れてしまいます。

人間の脳は力を抜くときにキャンセルの指令を出しているのですが、それを
じわじわとは出せないのです。ある程度まとめてキャンセルの指令を出すた
めに、どうしても階段状の抜き方になってしまいます。

これは車の運転で感じることができます。クラッチを抜くときに一気にガン
と抜いてしまうことがあります。ゆるやかに半クラの状態に入らないわけで
す。また、ブレーキングのときのプレーキペダルの操作もそうです。酔いや
すい運転をする人は「ビューン、ゴンッ」と止まります。最初は緩やかにブ
レーキをかけていくのですが、最後のところでゆっくり抜けずにグッと踏み
込んでからドンと離してしまい、フワーっと止まれないのです。アクセルワ
ークでも同じことがいえます。高速道路を一定のスピードで走るのは結構難
しいことです。出しすぎたスピードを落とそうとしてアクセルを弱めるとき、
弱めすぎてしまうとガクンとスピードが落ちます。これはまずいと思っても
う1度踏み込むとスピードは上がりますが、これを繰り返すとグゥイングゥ
インという不快な運転になってしまいます。

このように人間はもともと抜くことが不得意なのです。研究でもスポーツの
指導でも、この分野にあまり手を出したがらない理由が分かります。しかし、
スポーツの指導の中ではその不得意な部分にアドバイスしなければならない
こともあるので大変です。』


『力を抜くということが難しくまたその機構も複雑であることがわかりまし
た。では実際の運動ではどうなのかというと、必要最小限の力を入れて過剰
な力を抜くということになります。では、何がどれくらい過剰なのかが気に
なります。

そこで、飛んできたサッカーボールを足の甲でコントロールするクッション
コントロールについて実験をしました。筋電計で大腿直筋、内側広筋、前脛
骨筋、腓腹筋内側頭の4カ所を測定し、同時に足関節の角度も測定しました。

まずはサッカー群と非サッカー群で比べてみました。非サッカー群とはいえ
体育専門学群の学生に手伝ってもらいましたから、それなりにうまかったの
ですが、ボールが足に当たる瞬間に足首がわずかに動いてしまっていて固定
できていませんでした。これは角度でいうと1゜以下程度の違いでした。足
首を固定するといっても、そんなに大きな筋力は必要ありません。少し背屈
させた状態で前脛骨筋の筋力を大きくして後ろに引っ張られないようにしな
がら、逆に背屈し過ぎないように腓腹筋もわずかに収縮して前後で同時収縮
することによって足首を止めるのです。

サッカー群ではこれが一定でしたが、非サッカー群ではとくに腓腹筋のほう
が大きく出てしまいました。この部分が無駄な力なのです。また、内側広筋
と大腿直筋については軸足のほうを測定していたのですが、軸足の膝関節を
ロックしてしまうことで筋活動量が多いことがわかります。

視覚的にこの違いはわかりますが、では実際にはどれくらい違うのかという
と、腓腹筋内側頭と内側広筋と大腿直筋の筋活動量を足して群間で比べたと
ころ、約3〜5%の違いでした。この3〜5%の差異とクッションコントロール
におけるパフォーマンスの違いには相関があります。

さらにサッカー上位群と下位群とで比べてみました。そうしたところ、やは
り腓腹筋内側頭と内側広筋と大腿直筋の筋活動量を足したものとパフォーマ
ンスとに相関はありそうでした。しかしそれよりも驚くべきは、筋活動の差
は1.5〜3%程度だったのです。このわずかな差が無駄な力になって円滑な関
節角度の制御を妨げており、適度な関節の固定ができないということにつな
がったのではないかと考えられます。

ではこの無駄な筋活動について、「この部分の力を抜いて下さい」と言って
も、それは無理です。それを感じて抜くためには、スポーツ選手は莫大な時
間を使って相当な練習の量をこなさなければなりまぜん。基礎的な練習を何
度も何度も何度も繰り返さなければ、このようなわずかな狂いを修正するこ
とはできないのです。また、これができたからといってレギュラーになれる
わけではありません。力を抜く能力というのは、パフォーマンス向上に関わ
るたくさんある要素の中のたった1つにすぎないのです。』


『無駄な力を抜くということを考えるのは、本当に難しいことです。その一
方で無駄な力を定量化できるようにはなりました。ではその先にどうすれば
よいかと聞かれれば、これまで言われてきたように「覚えるまで振れ」とか
「疲れるまで泳げ」ということが大事なのです。地道にやるしかないという
ことが科学から改めてわかってしまいました。結局、経験値が正しいことを
証明しただけとも言えます。もちろん、力を抜くべき局面や量というのは少
しわかりました。また力を抜くことは難しいということも改めてわかりまし
た。

またこういった科学的データとは別に、いろいろな選手を観察したことによ
って形も見えてきました。たとえば指が上を向いているとか下を向いている
とか、息を吐いているような口をしているとか、舌がどうだとかそういうこ
とです。力が入っていたらこうはならないという形を探すことができました。
これは定量化がしにくく、科学的論文にはなりにくいところです。

しかし、このような形というのはたくさんあります。ある世界的に有名なゴ
ルファーはパッティング動作のときによく歯を見せて口を噛んでいます。そ
れをよく見ると、下唇を噛んでいるのです。実際に噛んでみるとわかります
が、力を入れて噛むと痛いところです。ですからそれは力を入れないための
方策だといえます。また陸上競技やバスケットボールでも舌を出してプレー
している選手もいます。それを意識しているのかどうかは本人に聞いていな
いのでわかりまぜん。しかし、形としては存在しているのです。

剣道では面を打ちにいっているときに頭が後屈している写真をよく見ます。
これは対称性緊張性頸反射と同じ姿勢です。確かに頸を後屈させると手は伸
ばしやすいのです。しかしこれは反射を利用しているわけではありません。
頸部に力を入れすぎずゆったりと構えている状態から、バッと身体が前に出
ると重たい頭は遅れて動き、そのような姿勢になります。早く打ち込んだと
きに、このような形になるということです。ですから、このような形だけを
真似しても、それは本末転倒です。できていない人がこれを真似してもパフ
ォーマンスは下がるでしょう。ひょっとしたら舌を噛んでしまうかもしれま
せん。結果的にこのような形になるには、どうアプローチすればよいかを考
えることが大切なのです。』


2010/03/09


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