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回 復

 今日、多くのハイレベルのアスリートたちは、量が多く強度の高いワークアウトをしているのだろうか。それは事実であり、その傾向は多くのスポーツにおいて明白になりつつある。あるアスリートたちは、一日6−8時間トレーニングをしている。それはトレーニングの時間が増えるだけでなく、ワークの量と強度も増えている。

 Verkhoshanskyによると、「多いことがベター」という哲学によってストレングスワークの量に規模の大きさと機械的な増加がある。加えて、リフトされるウエイトの量は、ほぼ夜通し増加している。リフテイングの分野で破られた記録を見ればわかる。今日使われているウエイトの量は、数年前では不可能と考えられたものである。

 トレーニング量の増加は、あらゆるスポーツにおいて見られ、筋力とパワーの分野に限られるものではない。長距離のサイクル的な種目(ランニング、水泳、自転車など)で記録されたタイムとワークアウトで使われている距離と強度を見るとわかる。そして最近の傾向は、今日のトライアスロンを見ればわかる(2.4マイルの水泳、次に120マイルの自転車、次にマラソンと続く)。

 Zalesskyによると、身体負荷のそれ以上の増加は(同様のことが継続して起こると)、生理学的な基準を超えることがアスリートの中に起こり、機能的な状態が悪くなり、作業能力が低下する。このために、アスリートの作業能力を高める最も効果的な方法は、さまざまな回復方法を広範囲で活用することである。言いかえれば、今日のアスリートは、以前には考えられないほどトレーニング時間が長くなり、よりハードになっている。そしてそれをやろうとするなら、からだがその負荷に耐えられるように対処する回復方法を使わなければならない。

 ソ連のコーチ、アスリート、科学者は、回復方法の組織的な使用は、トレーニングの量と強度の顕著な増加(いくつかのケースでは急激に)を可能にすることを確信した。加えて、Talyshevは、効果的な回復方法を使うことによって、アスリートの骨格筋システムの障害や慢性的な病気を増やすことなく、減少させると述べている。

 正常な回復プロセスにおいて3つの段階が認められている。進行中、回復はそれ自身の活動中に生じる。すばやい回復はワークアウトを中止するとすぐに始まり、老廃物を取り去り、消費されたエネルギーが補充される。第3段階は、回復が送れ、回復レベルが開始レベルをしのぐ(超回復)段階である。 内分泌学、生理学、薬学の研究から、最良の回復プロセスはアスリートの身体機能の能力が増加する超回復の段階で生じると現在は信じられている。この超回復は、身体資質とエネルギー消費レベルの開発を進めるために鍵を握っている。

 専門的な回復方法は、回復の3つの段階のために使われている。ウォームアップで使われるそれぞれの方法は、回復を進める上でより効果的なものである。トレーニング中とトレーニング直後に使われる方法は、第1と第2段階を援助する。さらに他の方法は、トレーニングの8−48時間後に使われる。重要な研究は、異なった有効な方法を使う最適な時間を決定するために行われている。

 異なった回復方法について詳細を述べる前に、回復について、また復帰や再生として知られることについて正確に述べる必要がある。この論文で使われている回復は、わずかな休息の後どのようフィーリングであるかと言った身体の一般的な回復ではなく、アスリートの能力を決定する筋肉の再生や生理学的なプロセスである。言いかえれば、それは非常に特別な機能であり、客観的に測れるものである。またここで使われる回復は、障害、病気で使われる回復やリハビリテーションで使われるオーバートレーニングとは明らかに異なるものである。

 マッサージは、もっとも広範囲に使われる回復方法のひとつである。それはワークアウトや競技から回復するために用いられたり、作業能力を増加するために用いられる。広範囲で受け入れられることから、若干の欠点を持っていてもセルフマッサージに多くの強調がおかれている。特定の筋肉に特定のマッサージテクニックを使うことは、可能ではない。そして背部の筋肉のいくつかは、セルフマッサージできない。しかしながら、あらゆるアスリートは、マッサージ師を持っておらず、そのテクニックが難しく、容易にマスターできないので、セルフマッサージを使っている。Sharipovによると、ウォームアップ中の自動マッサージは、差し迫ったワークのために筋肉のエネルギー資源を動員したてしまうという。主要なテクニックは、こする、こねる、振るといったものである。ワークアウト(また競技)の後、回復のセルフマッサージは、ゆっくりとしたソフトなテクニックによって用いられる。トレーニングタイプの自動マッサージは、その日の最終ワークアウトの後、2時間かそれ以上行われる。それは通常より長く続けられ、身体機能の能力を増加するために、多くの異なったテクニックが使われる。

 バイブレーションマッサージは、ソ連のリフターに何年もの間使われていた。そして多くの異なったスポーツで使われ出していることがわかった。Kopysovによると、低い頻度のビブロマッサージは、トレーニングセッション後の回復を加速させ、障害を防ぐ最も効果的な方法のひとつであるといっている。この結論は、漕艇、スキー選手、ランナーに行われた研究に基づくものである。ウエイトリフターといっしょに、回復効果に加えてバイブレーション的なマッサージは、高い強壮効果(ワークの準備ができるからだを得る)がある。

 Turinは、器械体操選手とランナーのビブロマッサージの研究において、非常に興味深い結果を得た。彼は、トレーニングにおいて使われた場合とかかわりなく、ビブロマッサージの後、すべて非常にポジティブに神経筋システムの機能状態が増したり、筋の緊張と興奮が増加したと言う。例えば、ランナーがトレーニング後、心拍が早くなる割合は、マッサージをウォームアップで行った場合、顕著に少なかった。また心拍数は、アスリートがトレーニング後マッサージを受けると翌朝回復した。

 バイブレーションマッサージは、アスリートの専門的なトレーニングにおいてもポジティブな効果が見られた。たとえば、器械体操の選手は、マッサージ後だけ器具の上でワークするとき(専門家のパネルによって審査される)、全く同様のルーティーンが実行できた。ランナーは、マッサージをウォームアップで使ったときのみ、2−3分の休息で100mを6回繰り返した場合、安定した結果を示した。

 近年ソ連では、筋力トレーニングにおける可変性が筋力と他の身体的資質を獲得するためにどれだけ重要であるかを示した。回復方法での可変性(同じテクニックでさえ)は、同じ理由で非常に重要であると言う証明がある。同じ回復方法を使うことによって、からだはそれらの有効性が顕著に減少さした後、すぐ適応する。

 現在多くの水治療法と空気マッサージが行われ、専門家の意見は身体のより深部でよりオールラウンドな効果があると言う。ハイドロマッサージバスの例は、図1に示した。

 さまざまな水を使った方法は、回復にとって重要である。これらには、異なった種類のシャワー(円形、尖った先端など)、トータルバス(新鮮な水、塩水、松、炭酸水など)、そしてそれらの溶液と温度のバリエーションによって区別されるパーシャルバスも含まれる。加えて、スチームとサウナバス、熱室は、消耗と有害な新陳代謝のすばやい除去を促進するために使われる。それらはまた、一般的な循環と強くなることの効果を供給する。

 近年、理学療法が回復のために使われることが多くなった。そのひとつの方法は、筋への電気刺激で、局所の血液循環と筋中の代謝プロセスを改善し、疲労を取り去り、筋力を増す。超音波が適用され、腱と靭帯またそれらの付着部での痛みを軽減したり排除することができる。超音波は、実質的ないくらかの激しいワークアウトでは避けられない顕微損傷に対する消炎効果がある。これらの方法もまた、リハビリテーションで使われ、回復とリハビリテーションが組み合わされる。

 他の方法には、静電気学の使用が含まれ、筋をリラックスさせ、血圧を下げ、興奮と抑制過程を正常にし、睡眠を改善する。反射学は、早い治癒のために見込みのある回復方法として今注目されている。それには耳介とcorporal(体、腺)な電気鍼が含まれ、診断にも使える。反射学的療法の例は、図3に示した。

 さらに他の理学療法は、紫外線の照射、空気イオン、電気イオン導入法のようなものが使われる。気圧室は、多大な成果を持って使われている。その例は、図3に見られる。各々の方法は、医学の専門家によって処方され、実行された場合、特別なコンディション下において効果的である。

 近年、心理―規制するトレーニングの異なった方法が医学の専門家によってなされ、アスリートによって自分自身スポーツにおいて重要性が増加している。これには、特別に選択された音楽、color-musicなどが含まれる。

 回復方法の可変性のすばらしい例として、Kopysov、Poletayev、Prilepinの論文が参考になる。これらは、ジュニアのナショナルウエイトリフティングチームによって使われた方法であった。それは国際競技において顕著な結果を示した。

 最後にけして軽んじるべきではないが、回復の重要な部分として栄養の役割を見る必要がある。カロリーの摂取:たんぱく質、脂肪、そして炭水化物の割合;ビタミンとミネラルの使用は、回復と同時にパフォーマンスレベルを上げるために重要である。鉱物塩もまた、回復に特に重要であることがわかった。それらはほとんどの生化学的な反応の正常な流れのために必要であり、神経と筋組織の興奮性と筋の収縮性、そして他の身体プロセスに影響する。

 ヘビーな身体的負荷は、水分と塩分のバランスを崩す。このために、回復プロセスと作業能力の維持に大きな重要性を持っている。スポーツドリンク、ジュース、卵白―炭水化物製品のよう物を準備することは、ダイエットを補い、より早くより完全な回復を助けるために現在使われている。

 薬理学的な準備もまた、回復プロセスに使われる。これには、ビタミンの準備(aerovite,ascorutin,dacamevite)と同時に個々のビタミンが含まれる。そのような準備の使用は、トレーニングのコンディションとアスリートのコンディションによって決定される。例えば、もっと多くのBzとBzgは、高地での適応に勧められ、ビタミンEはスピードワークのために勧められる。たんぱく質、炭水化物、脂肪を促進するグルタミン酸は、激しいトレーニングの後に勧められる。lipotropic物質(cholinとmethionine)は、脂肪の新陳代謝に影響するので勧められるが、ドクターによって処方されるべきである。

 トレーニング負荷と回復方法の間には、強い関係があることは証明されている。高い強度のトレーニングの場合(特にプレ競技期間中)、すべての回復方法が使われる。競技前の何ヶ月間ものトレーニングにおいて、最小の回復方法の使用で激しいワークアウトを行うことはしばし勧めることができる。これは、からだは内的な資源のより大きな動員で反応するので、必要である。超回復と同じように、アスリートの機能的な能力の範囲を広げることを可能にする。

 休息もまた、回復方法と考えられる。しかしながら、ソ連では回復的な方法の適用と同時に回復方法として(普通、積極的休養と呼ばれる)、必須卯として異なった休息状態を考慮する。これらの休息期間中に何が生じるかは、幾度も危険なことがある。Yakovlevは、例えばトレーニングと疲労の分野で多くの研究をし、休養の構成は、疲れさせるワークロードに続く回復のために非常に重要であると述べている。彼は、急速に疲労が表れる休養期間に、回復プロセスをスローダウンさせる残余の興奮があることを見つけた。したがってそのスポーツ種目と違った軽いエクササイズや非スポーツの方法と言った残余の興奮を軽減するすべての方法は、より早い回復を促進する。ゆっくり開発される疲労の場合、高いレベルのアスリートにおいて、回復プロセスが起こる重大な部分の時期に静かに休養し、熟睡する必要がある。

 すべての答えは、いつそしてどのような回復方法を使うかと言うことに関するものではない。しかしながら、Talyshevは、多くのコーチが使えるいくつかの一般論を持ち出した。彼は最大の作業能力は、短いスパンの後回復すると言うことを午前と午後のワークアウト間の例を用いて証明した。そしてワークアウト直後の回復方法として使うことがベストであると決定した。しかしながら、もし次の日に高い作業能力を持つ必要があれば、ワークアウトや競技の6―9時間後に回復方法として使うことがベターである。もしワークアウトや競技がその夜に終わったなら、 疲労が起こり始めて短い時間である翌朝に回復手順をはじめることがベストであるという。

 結論として、今日のアスリートが最も高いパフォーマンスレベルに到達するために、回復方法の使用が必要であると言うことがわかった。そのアスリートは、今まで以上により永くよりハードなトレーニングを行っており、身体を極限にさらしている。アスリートを支援するために、ソ連の科学は、量の多い高い強度のワークアウト中にからだに起こる変化を調べた。これは、よりすばやく効果的にアスリートを再生する方法を見つけるために行われたものである。回復方法は、アスリートがより高いパフォーマンスレベルに到達する傾向にあると思われるさらに多くのワークができるように用いられる。このような方法だけが、アスリートが完全な可能性を開発し、最も高い結果に到達することができるであろう。実際のワークアウトプロセスの一部を取り除くことができる手っ取り早い方法はない。しかしながら、適切な回復は、アスリートが彼の最大のパフォーマンスレベルを獲得するプロセスをスピードアップするだろう。


[NSCA journal 1982.Vol4.No3.を参考]



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