講演抄録 2018年度日本老年歯科医学会京都支部セミナー

 健康長寿に貢献する歯科の目指すもの

 

健康寿命と歯科医療

―口腔機能低下症への対応―

東京歯科大学老年歯科補綴学講座

櫻井 薫

 我が国の平均寿命は延伸しているが、健康寿命の延びの方が少ない。健康寿命の延伸は、すなわち介護状態の予防ということになる。そのような状況下で、国はフレイル予防に力を入れている。その様な状況下でオーラルフレイルという言葉が誕生した。口腔機能がやや低下してきたというあたりが、オーラルフレイルということになり、これは疾病ではなく状態を表す。一方でこれが疾病レベルになると、日本老年歯科医学会が提唱し、4月の改定で新たな病名として認められた「口腔機能低下症:口腔衛生状態不良,口腔乾燥,咬合力低下,舌口唇運動機能低下,低舌圧,咀嚼機能低下,嚥下機能低下のうち,3項目以上該当する場合」ということなる。口腔機能低下症は,う蝕や歯の喪失など従来の器質的な障害とは異なり,いくつかの口腔機能の低下による複合要因によって現れる病態である。口腔機能低下を適切に診断し,管理と動機付けを行うことで,口腔機能低下の重症化を予防し,口腔機能を維持,回復することが可能となる。そしてそれは健康寿命の延伸に繋がる。そのためには,中年期からの口腔機能低下症の診断と管理を適切に実施する必要がある

   「ライフステージを考慮し、チームで支える」

                      つがやす歯科医院 歯科医師

栂安 秀樹

 平成30年度の診療報酬改定は2025年問題を意識して、医療・介護の同時改定としては、大きなものとなった。可逆的に健康を回復できるステージでのアプローチとして、加齢に伴う口腔機能低下やオーラルフレイルに対する歯科医療者の介入が、住民の口腔健康管理向上や重症化予防に繋がるという評価が大きく取り入れられた。さらにこれらは、医療・介護を担う他職種との連携があって成し遂げられるものである事も多い。

今までのように、1歯科医院のなかで、完結するものという発想ではなく、地域とか他の専門職の力とかを意識することが必要と思われる。そのうえで歯科という専門性が「継続した健康的な生活」に大きく貢献する事を実践で示していかなければいけない。

「治療モデル」と「生活モデル」、そして食支援と栄養など歯科医療者の職域は確実に拡大している。認知症・がんはじめ口腔機能低下に対するその具体的な取り組みを示すことで、地域にあった包括ケアのチームづくりを再考してみたい。