アイツはズルイ。

…俺の気持ち知ってて…態と焦らすから…。



- 年下の意地 -





!!」
俺は前方に居る幼馴染に向かって名前を呼ぶ。

今は学校までの通学途中で、俺は徒歩通学なためその前に居る人物に向かって走っていった。


そして今日は…2月14日、バレンタインデーだ。
俺は毎年のようににチョコをねだるのだが、は無理の一言。

甘いモン好きだし、他の女子に貰えるのも結構嬉しいけど…じゃないと意味ねぇのに。
確かに、一つ年上のにとって俺はまだまだガキかもしんねぇ…。


だけど俺だって…。



「頼むって!」
顔の前で両手を合わせて頼み込む。

自らバレンタインのチョコを求めるのもどうかと思うが…
この際俺にとってはそんな事どうでもよかった。
言い忘れていたが、というのは俺の幼馴染のの事。
一つ年上で中3なんだけど、家が隣同士って事で結構仲が良い…のか?

そして、テニス部の朝練がある俺と何故同じ時間帯の登校なのかといえば、
がテニス部のマネージャーだからである。


「無理。…つかブン太、アンタさっきからウザイ」
そう言って俺を睨むと、スタスタと早歩きで行ってしまう。
追いかけた所で、さらにウザがられるだけだ。

学習力のある俺はそう判断し、これ以上の深追いはやめた。




「…なんだよ…」
俺はその場に立ち尽くせば、下に俯くようにして小さく呟いた。



「好きなだけなのに…」







そしてその日の放課後まで、学年の違うとは会う事はなかった。
しかし、部活があったため必然的にとは会う事になる。

だが、テニス部のファンクラブやら他の女子やらがバレンタインデーろいう事で煩く、
場所移動という事になってしまった。
俺達立海テニス部レギュラー面々が向かったのは、学校近くにあるストリートテニス場だ。


そこへ移動する間、は俺と目を合わせようとせずに仁王と話していた。
ちなみに、3年はというと引退してもう居ない。
だがマネージャーが一人なため、卒業するまでマネージャー業をしてもらっている。

と仁王が何を話しているのか気になるのだが、聞くに聞けない。
そのため、俺は何でもないようにジャッカルと話していた。

もちろん、ジャッカルが何言ってるかなんて頭に入ってこないけどよ。






「…ええんか?」

「何が?」

「ブン太の事じゃよ。…スッゴイこっち見とる」

「…へぇ」

「へぇって…」

「………」

「アンタも素直じゃないのぉ」

「煩いよ」




「…………」
気にしないようにしようと思えば思うほど、気はと仁王の方に向いてる。
俺みてぇなガキより、大人っぽい仁王のがにはつりあってると思う…。


…嫉妬ばっかしてる俺って何なんだよ…。


バカみてぇ



そして、横断歩道を渡るその時…。
一台の信号を無視したトラックがの方へ走ってくるのに気づいた。

だが、思ったより体はそう早くは動かず…。



ッ!!」

キキィッ


大きなブレーキ音と共に、ドカッと言うぶつかった音が聞こえた。
…いや、他人事のように言ってるが、それは俺の身が吹き飛ばされた音だ…。


を押す事で精一杯だった俺は、そのままトラックにはねられた。
自分自身で、この状況に気づくのには少し時間がかかったが、身体全体の痛みと、
朦朧とした意識、そして少し離れた所にトラックがあったことで、事態を飲み込む事ができた。



「ブン太…ッ!ブン太!!!」
必死になって俺を揺するのは、一番愛しい人。


「………ッ…」


「なんで…っ、なんで私なんか…」
声を絞り出すようにして言うの瞳からは、止めどなく涙が零れ落ちていた。
そして、それはの頬を伝って俺へと落ちてくる。



「好きだからに…決まってんじゃん。
ずっと…好きだったぜぃ。俺にとっては…お前だけだった。

ずっと、だけを…見てた…から…っ」

意識が朦朧とする中、の声だけでなんとか持ちこたえれているようなものだった。

まだ、死ぬわけには…いかない。



「やだっ…、なんでそんな事言うの!?
好きだったって…、それじゃまるで、もう好きじゃないみたいじゃないっ…!!

もっと傍に居てよ…。もっと私の事で悩んでよ…っ
お願い…だからぁ…っ」
泣き叫ぶような悲痛な声に、俺は内心安堵する。


嫌われてたわけじゃ…ねぇんだな…。


そう思うと、自然と表情は和らいでいた。
自然と身体の痛みを忘れる事ができた。


…」
俺はある事を思い出し、を見つめながら名前を呼んだ。


「…うん?」
まだ止まる事を知らないの涙に、そのうち枯れんじゃねぇかと苦笑しながら、
出そうにない声を、意地でも出そうとした。



「…チョコレート…ある?」
ずっと欲しかった物。

を好きになった日から、ずっと望んでいた物…。



「それより今は…っ」
アンタの体の方が…っ。と首を左右に振った。

「いいから。…あるのか…?」
もう…いいや。俺の身体がどうなっても。

だから、最後に…。



「…………あるよ」
小さく呟くようにして言えば、は持っていた鞄から一つの小さめの箱を取り出した。


「食べさせて、くれねぇ?」
無理だとはわかっていても、今はそんな願いを言う事しかできない。

「え…?」


「腕、動かねぇから…」
先ほどから、腕を上げようとしても上がらない。

もう、テニスもできねぇんだろうな…なんて考えると、どっと恐怖が押し寄せてきた。


俺、やっぱこのまま死んじまうのかな…。


「…っ…」
俺の言葉に、は更に傷ついたような表情をする。
お前に、そんな顔させるつもり…ねぇのにさ。


チョコレートを箱から取り出し、ソレを口に含むと俺に顔を近づけてくる。



「ん…」
口移しでの、初めてのチョコレート。


「…上手ぇわ、やっぱ。…ありがとな……。
最後に、お前にちゃんと気持ち伝えれて…よかったぜぃ…」

そう言って、苦笑しながらも遠のく意識の中、にそっと呟いた。



「……愛してんぜ……」







ブン太が焦ったように私の名前を呼んだ時、
私は態と鬱陶しそうな表情をしながら、ブン太の方を向く。
だが次に待っていたのは、私を突き飛ばすブン太と、
突き飛ばされる瞬間に見た、トラックがブン太をはねる光景だった。


私は何かと嫉妬させるのが好きらしく、毎回のようにブン太にやきもちをやかせようとしていた。
素直じゃない…だけなんだけどね。

ブン太の事は昔から好きだし、ブン太が私の事を好きだって事も知ってる。
だから安心しきっていた。

最終、必ずブン太は私の方へと来る。
だから少しくらい、焦らしてもいいだろう。…そう思っていたのだ。
案の定、今までブン太は他の女子が言い寄ってきても断っていたし、
毎年バレンタインの日はチョコを強請ってきた。

だけど今年…、こんな風に終わってしまうなんて…誰が予想してただろう…?




「ブン…太…?」

ぐったりとしたブン太の身体。
私は呆然としたまま、ブン太の身体を揺すった。



「…ブン太ぁっ…!!
私の気持ち、まだ伝えてないのに…!!好きだよっ…私も愛してる…っ。

だから…目ぇ覚ましてよぉっ…!!!」

まだいっぱい言いたい事があるのに…。
自分だけ言いたい事言って、私の言葉は聞いてくれないわけ…!?

…」
泣き叫んで、力任せにブン太を揺する私に、仁王はやめるようにと私の肩に手を置く。
だが、そんな仁王の行動を振り払って私は声を上げ続けた。



「いやっ…お願いブン太…っ…!

 
いやぁぁぁああぁぁぁあッ!!!!!





そしてブン太は……二度と意識を取り戻す事はなかった…。


最後まで後悔しても、後悔しきれない思い…。

私が…貴方以外の人を好きになるなんてこと、できるはずないのに…。

私が…貴方の元へ行けばいいのかな…?
そんなバカな事考えんなって、貴方は怒るだろうけど…。



だけど好きなんだ…、愛してるの…。
私には…ブン太だけなんだよ…っ


…お願い、神様…


もう一度だけでいいから…あの人に言わせて…?




好きです…。誰よりも…貴方の事が…









−あとがき−

ブン太バレドリ…!
いや、前に1日で書き上げたモンなんで大した事ないっスけどもね(ははっ)
今回色々と修正してみました…?

バレンタインで悲恋かよ。って感じですが気にしちゃァいかんですよ。
年上のヒロイン…実は初だったりしなかったりそうだったり…(曖昧)

では、此処までお付き合いいただき有難う御座いました。
他の小説もお楽しみくださいませ。


2007.2.14 雲雀拝