襲名披露も終わり、外に出ると五代目を襲名した『郷田仁』がいた。
何処へ向うのだろうか?手には見覚えのある刀を手にしていた。
「会長・・・・。」
刀を持っていたせいか気になり、私は会長を呼び止めた。
「おぉ・・。高島か・・・。」
彼は足を止め振り向く。
「その刀・・・・。どうされるんですか?」
私にとって刀など、どうでも良かったのだが。
「龍司にやろうと思ってな。覚えているか?高島。これは、あの子が幼い頃欲しがっていたものだ。」
そう言えばそんな事もあったか・・・
「私はあの時から決めていたのだ。この時が来たら、これをやろうと・・・。」
そう言い、会長は遠くを見た。
「あの子は、母親と離れてから笑わなくなっていた。
ただ・・・・
ただ、この刀の前だけは違った。この刀だけは、いつも嬉しそうに眺めていたんや・・・・。」
そう言い、会長は刀を握り締め私に問うた。
「何一つ父親らしい事をしてやれんだ私が、今更あの時の顔をもう一度見たいと思うのは馬鹿げてるやろうか・・・」
子供の前ではこの人も只の『父親』なのか・・・
龍司が喜ぼうが、私はそんなものには興味がない。
只、この人は息子の為に『郷龍会』を立ち上げ、自ら『近江連合5代目』にのし上がった。
自分の大切にしていた刀を息子に託し、いずれ近江の跡目にするつもりでいるのだろう・・・。
血の繋がりもないのに、とんだ親馬鹿だ。
その想いは、あの龍司に伝わる日が来るのか?
その愛は叶う事があるのか?
どちらにせよ、何もかも貴方の思い通りにはさせる訳にはいかない。
あんな子供が跡目になど成り得る訳がない。
「そんな事ないですよ。喜んでくれるといいですね。」
私は、そんな当たり障りのない返事をした。
感ずかれない様に。
『6代目』はヤツではないと将来を確信して。
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