腰痛の話

1.直立二足歩行との関連

 ヒトはゴリラやチンパンジーなどの類人猿から進化してきたと考えられていますが,その過程で獲得できた最大なものは直立二足歩行と考えられています.直立二足歩行のおかげで脳の容積を増大させることができ知能が発達したと考えられています.直立二足歩行するために,最もドラマティックな変化を示した構造物は骨盤と腰椎であります.骨盤は上半身の重量をがっちりと受け止めることができるようにより円形の構造をとるようになりました.腰椎は安定した直立姿勢が取れるように,前方に向かってカーブした前彎と呼ばれる形態を獲得しました.しかしながら,直立二足歩行は腰椎に多大な負担をかける結果となり,ヒトにとって腰痛は避けられないものとなりました.実際,厚生労働省の調査によりますと腰痛は最も訴えの多い症状で10人に1人が腰痛を訴えています.

2.腰痛の発生原因について以下のように分類すると分り易いと思います.

 A) 腰椎の異常に起因するもの
   a) 背骨の変形が周りの組織の神経を刺激して発生するもの
   b) 背骨や椎間板の変形が神経を圧迫して発生するもの
 B) 腰椎とは別の異常に起因するもの
   a) 精神的なストレスにより発生するもの
   b) 内臓の異常により発生するもの
   c) インフルエンザなどの全身感染症により発生するもの
   d) 頸椎で脊髄が圧迫されて発生するもの

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Minoru Hoshimaru, M.D.