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世界の窓

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【 スイス・バーゼルレポート VOL.10】

井浦 幸雄氏


◆ インターネットとわたし(その4) モービル通信環境など

98年4月5日から4月18日まで、バーゼルを離れ、日本に一時帰国して きた。東京、大阪、京都で多くの友人とお会いしてきた。この中には インターネットを通じて知り合った友人が多く含まれている。 よく、インターネットにアクセスするひとは玉石混交だと言う人が いる。わたしはそう思わない。すべてのかたが個性豊かなが、すばら しい人と思う。

スイス・日本グループ、新日本・ユーロネット、シニアグループの お仲間、職場をともにしていたかたがた、いろいろな集まりに 参加させていただいた。わたしのように、10数年海外で暮して いると、日本のかたがたとの、お付き合いが希薄になってくるため、 インターネットを通じての交流は貴重である。

電子メール、ホームページ、ニュースレターに加え、最近ではICQ, チャット、インターネット・フォンを使っての交流が盛んになって来て いるようだ。自分のこのみにあったかたちでの交流がふさわしいと思う。

今回の日本訪問で、大阪・京都に観光に出かけたときに、始めて、 携帯電話とノートパソコンをつなぎ、大阪のホテルの部屋から インターネットにアクセスすることが出来た。大阪の携帯からDREAMNET の電話番号につなぎ、そこから、バーゼルのMAGNETに送付されてきた、 小生あてメールを読み、かつ、返信することができた。今後ヨーロッパ でも旅行中に交信できるよう携帯とノートパソコンをつなぐことに決めた。 それにはIBMnetにプロバイダーを広げることが、必要になってくる。 これが可能となると、バーゼル・東京の自宅からにくわえ、旅行中 での交信が出来るようになり、いろいろなグループのお世話役を 引き受けているので、便利である。

もう一つの問題は、ハードとソフトのことである。今、1996年5月に 購入したGateway2000のノートパソコンを愛用しているが、ハード ディスクが1.2GB、メモリーが16MGと当時としては、まずまずの セットアップであったが、最近ではおおきな容量のプログラムが増え ているので、アップグレードをしようと思った。そのメモリー増設 などが、生産停止、品切れなどで上手く行かず、WINDOWS98に対応 するような、最新機種を購入するように、すすめられた。当然、 最新機種は求めるつもりであるが、今までの、ノートパソコンは 出来るだけアップグレードして、バックアップないし、リース用 として使いたいと思っている。それがなかなか困難ということが、 分かってきた。また、WORD98も購入してみたが、WIN95搭載の ノートブックでは、HD,メモリーの容量が足りずに、十分に稼動しない。 ここでも最新機種へのアップグレードが要求されている。 誰にも共通の悩みであろうが、旧来の機種のアップグレードに付き、 メーカー側も工夫して欲しいと思う。

最近になって、出身の高校や大学のサークルのお仲間から、インター ネットを通じて交流をしたいとのお誘いが増えてきた。わたしのように 国外に住んでいるものは、こうした同窓会などの集まりに参加でき ないが、インターネットの交流を通じて、近況を報告したり、集まりの 案内をすることが、可能となってきた。日本に一時帰国するときに たまたまタイミングが一致する集まりに参加することが、可能に なってきている。

それにしても、コンピューターを通じての交流をはかっておられる 方々は、シニアのかたがた、若手のかたがたを問わず、みな、 ダイナミックで溌剌としたひとが多い。新しいことに挑戦してみたい という意欲が元気さを支えるのだろうか。小生もこうしたグループ つくりに若干の貢献をしてきたつもりであるが、これからもいろいろ 工夫を重ねて、貢献の度合いを増したいと考えている。みなさまの ご指導、ご協力をお願いしたいものと思う。



(98/4/23 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)



◆ 家事・ハウスキーピングの工夫

関係者の失笑を買うかもしれないが、わたしは家事の手伝いを比較的苦にしないほうである。それから、男性も女性も、子供も大 人も、若者も老人も、それぞれにできる範囲内で家事を分担するこ とが、お互いのためになると固く信じている。これは多分、わたし が日本のそとに長いあいだ住み、男性・子供が家事を良く手伝って いるケースを多く見てきたからであろう。買い物、炊事、洗濯、掃 除、ごみ処理、子育て、介護、これらはすべて、それぞれの家庭に より実にケース・バイ・ケースで、そこの家庭の所得水準、好み、 家族構成員の体力、健康状態などにより、当然微妙に異なるだろ う。それでも、家庭内で主婦、女性に家事の負担を多く課すのは、 主婦、女性に苦労を与えているというだけでなく、夫、男性、子供 に対し貴重な「生活の知恵」を学習する機会を奪っているというマ イナス点におおくの家族は気づいていない。   ○○(男の子でも女の子でも)ちゃんは受験ですから、勉強をなさ い、家事はわたしがしますからねと多くの家庭で母親は言っている であろう。机にばかり、向かっていては、10代の子供は退屈し、夢 想にふけり、能率が上がっていないことに気づいていない。週に 1,2度はどら息子を、どら娘をつれてスーパーなどに、買い物に 行くべきである。少ない予算で、どこで割安のものを手に入れ、鮮 度をチェックし、どのような、ロットで売っているかを良く教えよ う。食事の準備、後片付けも、どのように能率的にするか、食べ残 しが「ごみ」となり、その処理にみながどれほど苦労しているかを 子供に体験を通して良く教えよう。英単語を一つ余分に覚えるよ り、その後の子供の生活にどれほど役にたつか実にはかりしれない ものがある。それに漫然と机に向かっているより、生活に「めりは り」をつける方が、勉強自体に格段、能率があがることは間違いが ない。

わたしは仕事での出張先、観光に行った先、イタリア、スペイン、 ポルトガル、フランスなどどこに行ったときも、時間があればスー パーとか市場を覗くことが大好きである。何をいくらで売っている か、ひとは何を買っているか、そこは実に貴重な情報の宝庫であ る。魚、肉、野菜、家庭用品の種類、価格、量、質などは国によ り、地方によりかなり異なり見ていて興味がつきない。それに日本 であまりよく知られていないが、東京・築地の魚市場観光がガイジ ン観光客(とくにビジネス関係)に人気があるらしい。世界最大の 生鮮食品のマーケットで朝7時までにすべての食品に値がつきさば かれるという点が魅力らしい。

最近、「70才にして厨房に立つ」などという本が売れているとい う。女房に先立たれた、または病にたおれた妻に面倒をみてもらえ ない男・夫どもが、やむなく自分で苦労しながら、炊事のしたくを 生まれて始めてしているのである。30−50代には会社人間として精 も根も企業に捧げてしまったのであろう。妻も台所を汚されるより も、「ゴキブリ亭主」に自分の領域を侵されるよりも、無能な亭主 にしておいた方が、便利と考えていたのかもしれない。それが高齢 になったときに自分で自分の始末ができない男どもを輩出させてし まった。「男子厨房に入らず」などと虚勢を張っているうちに、大 事な生活上の知恵を母親、妻からまなぶ機会を逸してしまったひと がたくさんいる。停年になったとき以後も、妻が現役時代と同様、 家事のほとんどをしているケースが多いのではないかと思う。夫が 停年になったときには、妻も家事の停年年齢に差し掛かっているこ とに多くのひとは思いが及ばない。

それから、わたしは炊事、洗濯、買い物のような家事は単調で「面 白味がない」、「つまらない」とこぼし、損な役回りだと嘆いてい る専業主婦がたくさんいることも承知している。ただ、この専業主 婦の夫が会社でこの主婦以上に「面白味のない」、「つまらない」 仕事をし、家族のために黙々と励んで、給料を稼いでいることにま で考えが及んでいないのである。ちょっと視点を変えてみると、家 事は単純反復作業であるがゆえに、能率を上げ、工夫する余地の極 めて大きい作業であるということもできる。それに子育ても含め、 極めて個性的、創造的な仕事であり、夫のつまらない、会社の仕事 より、しかたによっては、実に奥の深い仕事であると思う。ちょう ど、藤吉郎が「信長の殿」のため、ぞうりをふところで暖めるとい う追加サービスをしたように、同じ草履とりでも、一味違うサービ スを考えているとそうではないのとでは大きく違う。賢明な主婦は 自分の台所における動線を考え、能率のあがるような器材の配置を しているに違いない。こうした工夫が実は、子供の勉強や、夫の仕 事の段取りを進める工夫と共通しているのである。机に向かってい るだけよりも、家事を手伝うことで、子供は多くことを学ぶ。賢明 な主婦、母親は家事の能率的な進め方を子供に体験させることで、 効率的な勉強の仕方を同時に教えていることになるのである。

そのように思って周囲を見渡すと、家事をするうえで、どこの家庭 でも多くの工夫の余地があるように思えてならない。家事について の夫・子供の協力はどこでも良く相談し、教え、徐々に協力の輪を 広げるのが望ましいと思う。工夫のうちの一つは食料品、洗剤など 家庭用品の購入を効率化することである。それぞれのところで異な るだろうが拙宅では、最近一週間分をまとめて、木曜の昼休み1 2:30−50分ごろ、勤務先から昼食に帰る道筋で小生が車で近 所のスーパーに行き家内が作成しておいたリストですべての買い物 を済ませる。足りないものをすこしだけ買いに走ることは極力避け 次週の買い物のときまで待つ。土曜にはレジが混むので食料品の買 い物はしない。夫婦ふたりという小世帯ということもあるが、一週 間分のすべての買い物をこの20−30分で済ませる。能率的に買 い物を済ませるように買い物リストはスーパーでの売り場の順序に 従い配列しておく。リストは過去3週分を冷蔵庫のとびらに貼って おき次週分の参考に供する。

食事の支度も単身者・共稼ぎ世帯の効率化がどこの家庭でも参考に なるのではないだろうか。当然、時間をたっぷりかけて、好みのも のを作るときと、時間をかけずに、簡単に済ませるときの、差をは っきりとつけるのが良いと思う。単身者・共稼ぎ世帯では土日に一 週間分の献立を考え、準備できるものは土日に調理・冷凍し、週日 は電子レンジで解凍し食べるところが多いと聞く。好みももちろん あるだろうが、高齢の世帯もこうした工夫が必要になっていくこと と思う。最近、日本ではかなり味の良い冷凍食品が豊富にでまわっ ていると聞くが、これも忙しいときに便利と思う。スイスのわたし どものところでは、スーパーで冷凍のほうれん草が豊富に出回って おり、4cm立方くらいの大きさにわけて袋つめしてある。朝、冷 凍庫から冷蔵庫に移しておけば、昼、夜には和風、洋風のほうれん 草が食べられ便利である。いまの時期には、グリーン・アスパラガ ス、ブロッコリーが豊富に出回っており、和風・洋風にも使え重宝 する。また、好みの問題もあるだろうが、わたしのところではご飯 を時折、通常の2倍ほど炊き、一膳分づつ、サランラップで包み、 冷えてから冷凍しておくと、のちに解凍して食べられるので重宝し ている。日本では、かなり味の良い冷凍ごはんパックが売られてい るらしい。

買い物、炊事だけでなく、洗濯、掃除などもどこの家庭でも工夫の 余地が多くあると思う。家族で分担して能率的に家事をすすめ、生 み出された時間、余暇で主婦、妻および家族の構成員の生活の質を さらにたかめるよう考えていく。このような工夫を重ねることでわ れわれはこれまで暮しを豊かにしてきたように思うのだがみなさま はいかがお考えでしょうか。

(98/3/1 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)



◆ ヨーロッパとミネラル・ウォーター

1989年に始めてスイス・バーゼルに来たとき、勤務先の産業医 ドクター・ノールのところに、健康診断にいくように言われた。無 事診断も終わり、帰ろうとすると、「ミスター・イウラ、水を毎日 たくさん採りなさい、一日1リットル以上は必要です。ミネラル・ ウオーターはなおさらよい。室温での水が良く、アメリカ人のよう に、冷やしたり氷をいれたりしてはいけない」とのはなしであっ た。

奇妙なことをいわれるものだと思った。日本で医者から水を飲むよ うに言われたことはなかった。そう言われて、あたりを見渡すと、 スーパーでは、フランスでも、スイスでも大量の各種ミネラル・ウ オーターが1リットル瓶で売られているし、勤め先でも、ミネラ ル・ウオーターが無料で希望するひとに提供されている。なぜ、多 くの勤め先で水が勧められているかというと、従業員の健康維持の ために会社側から提供するものとしては極めて割安のものというは なしであった。なぜか、ミネラル・ウオーター産業の陰謀ではない かと思われるような普及ぶりである。

日本に一時帰国したときに、従来からのホームドクターに「スイス では水をたくさん採るようにいわれました」というと、「水を採り すぎて悪いというはなしは聞いていませんから、良いのではないで すか」と、プラスにもマイナスにもならないような話であった。

ただ、日本でも尿酸値が極端にたかまることによって発作がおきる 「痛風」では、医者は大量の水を採って尿酸を排出することを勧め る。発作が起きていない通常のひとも、常時水分を多めにとること によって老廃物を体外に流し出しておくことは、悪いことではなさ そうな気がする。老人になるととくに睡眠中に血液の濃度があがる ので夜中にトイレなどに起きたり、一時目覚めたときに水分を採る よう勧める医者が多いようだ。わかいひとにとっても水分補給は悪 かろうはずがない。いまでは運動などで汗を大量にかくときなどに は十分に水分を補給するようにと勧める人が多い。

そうこうしているうちに、職場でも、家でもこまめに水分を採るよ うになってきた。車で旅行に行くときも、飛行機で移動するとき も、小型のミネラル・ウオーターの瓶をいつも荷物にしのばせてお くようにしている。航空機のなかは予想以上に乾燥しているので、 水分を常時補給することがこのましいような気がする。

食事のときにも、ガス入りのミネラル・ウオーターを飲んでいる と、ビールの代わりになる。午後から仕事があるときなどはビジネ スランチのときに、ワイン、ビールよりも、ガス入りのミネラルウ オーターにとどめておく方が良いときが多い。日本から来たお客さ んを食事にご案内すると、ガスなしのミネラルウオーターを好まれ る人が多いが、ヨーロッパに長く住んでいる人はガス入りを好む人 が多い。ガスなしでは水道水と見分けが付かないこともその一因と 聞いているが、ガス入り・炭酸水の爽快感が好まれるのであろう。  

スイスでも、国境を越えたフランスのスーパーでもミネラルウォー ターのブランド、選択の幅が多いのに驚かされる。エビアン、ヴィ ッテル、ビシーなどの名前だけでなく、ガス入り、ガスなし、弱塩 分入り、塩分控えめ、など5種類も6種類もバラエティーがある。 わたしの住んでいるところのスーパーでは、たとえば1本80ラッ ペン(70円くらい)の1リットルプラスチック瓶入りミネラル・ ウオーターは空き瓶を返しに行くと50ラッペン(40円くらい) を戻してくれる。コインで受け取ることもできるが、レジに持って いくと、代金からその分を差し引いてくれる。

通常、ミネラルウオーターないし、フィルターで漉した水を飲んで いるが、水道水を飲むことも短期間であれば特に問題を生じないと 思われる。日本から旅行に来た人は、スイスで一週間程度水道水を 飲みつづけてもとくに問題はないように思う。ただ、長期滞在して いると、水道水に含まれる石灰分は気になり、フィルターで漉す か、自分の好みのミネラルウオーターを買い求めたほうが良いよう な気がする。

衛生状態にいまひとつ信頼がおけない地域を旅行するときには、ホ テルの水道水を飲まないで、必ずミネラルウオーターを買い求めて 飲むようにしている。ヨーロッパの他の地域に行くときでも、でき るだけ自分の好みに近いミネラルウオーターを常時買い求めて置い ておくことにしている。

人間の身体のおおくの部分は水分からなっており、われわれには健 康維持のため、水分補給が不可欠のようである。最近日本でもミネ ラルウオーターがかなり普及して来ていると聞いている。自分の飲 む「水」の質と量についてもっともっと関心を持ったほうが良いよ うな気がするがいかがなものだろうか?

(98/2/23 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)



◆ ROM(Read Only Member) 対策

パソコン通信の世界でメールグループやディスカッション・グルー プのお世話役(管理人)をしている人の間で、よく話題になるの は、ネチケット(ネット上でのエチケット)と並んで、ROM対策を どうするかという話がある。ROMとはRead Only Member のことで、 自分からメールを書いて出すことをせず、人の書いたメールをただ 読んでいるだけのメンバーである。ニフティーのあるフォーラムで は、会員が2万人から3万人もいるが、積極的にメールを書いて参 加する人は、10人から15人くらいに過ぎないというところもあ るようだ。管理人はメンバーの人々に、まんべんなく発言してもら おうと、水を向けたり、いろいろ無口の人からのメールを書いてく れるように誘導したり気をつかうことが多い。「**さん、この問 題に詳しいのですよね」、などと振ってみる管理人もいる。

この98年2月はじめから、NJP-EUNETという、日本・ヨーロッパを結 ぶメールリストのお世話役を引き受けた。このグループは松原さん というかたが、もともと始めたもので、わたしも彼から入りません かと誘われて、2−3年前に入会した。日本からみた、ヨーロッ パ、ヨーロッパからみた日本を話題にするもので、欧州在住の日本 人が数多くメンバーとなっている。この松原さんの行方が不明にな り、サーバーの管理会社からこのメールリスト閉鎖の通告を受けた が、200人ほどのメンバーからグループの継続を求める声が上が り、何人かのグループが努力して存続させたものである。New JP-EUNETはメンバーをすべて、前のグループから継承したが、この 新グループ発足を契機にできる限り多くのかたに、積極的にメール 交換に参加してもらうにはどうしたら良いかを管理グループのかた がたと話し合ってみた。

発言しないかたは、新グループに参加させないのはどうかとかいろ いろな意見がだされたが、結局この区別には手間ひまがかかるの で、全員を一括移行してもらい、ゆっくりと新メールリスト発足を 契機に自己紹介をしていただくこととした。自己紹介をしてくれた かたを、ホームページ上に作ったメンバーリストに掲載させていた だくので、ぜひどうぞと水を向けてみた。この間、「ROMをしてい るかたが、快適にROMを続けることができるような雰囲気作り」を 心がけた。つまり、ROMをしている人が、関心を持ちそうな話題を できるだけ提供する、専門語・術語を使って事情に通じていない人 に疎外感を感じさせるようなことは避ける、といったことである。 北風と太陽の話で、太陽を前面に押し出したメールグループ運営を してみたのである。2週間ほどで、約60人のひとが自己紹介のメ ールを書いてくれた。最近では実は自分はROMメンバーであった が、今後はすこしづつ参加してみたいとのメールが増え始めてき た。

あるひとはRWM(Read Write Member)は舞台の役者であるのに対し て、ROMは観客であるという。確かにショウでは役者と観客は両方 いないと成り立たない。声なき観客が十分満足しているかどうか は、グループの活動が上手くいっているかどうかの試金石になると 思う。

あとROMが満足しているかいなかは、退会するひとが多いか、入会 するひとがおおいかにも現れているようだ。メールグループの管理 者が心しなくてはならないのは、ROMの人がぜひ参加するようにと 強く勧めるのではなく、声なき人たちが、十分に楽しみ、満足する ような話題をそだて、補強していくようつねに心がけるべきと思う のであるが、いかがなものだろうか。

(98/2/16 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)



◆ インターネット・三種の神器

インターネット・三種の神器とは、わたしが作った言葉である。そ れはホームページ(HP)、メールリスト(ML)、ニュースレター(NL )の三つを有機的に組み合わせたグループ作りである。当然、これ は、企業内のローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、企業グル ープ内でのイントラネット的なものに、そのまま利用できるし、す でに利用しているところが多いのかもしれない。

わたしは、1985年ころ、草の根BBSを経営していたが、これはかな り固定的なグループを対象とするものだった。入会・退会も手間が 掛かった。インターネットが普及してくると、ホームページ・電子 メール・掲示板により、読者との対話が始まった。1996年のはじ め、わたしは苦労して「ライン随想録」というHPを作ったが、随筆 を書いて待っていただけでは、そうみなが読んでくれるわけではな い。そこで、2−3のメールリストに自分の随筆をプッシュ型でポ ストしてみた。すると、メールリストのメンバーの中には、関心を 示してコメントしてくれる人が増え始め、これをきっかけに、HPに も訪れて、随筆を読んでくれる人が増え始めてきた。

こうした動きに、転機を与えたのは、1997年の12月から動き始めた 「スイス・日本サイバーグループ」の活動である。これはスイスで 日本語HPを作っている人と、日本でスイス関連HPをつくっている人 を中核として結び付け、インターネットを通じた交流を深めようと いうものである。日本からスイスに仕事、留学で訪れようというひ とは事前にスイスに居住している人と、子供の教育の問題、生活の 問題、引越しの問題、などに付き情報を日本語で集めることができ る。スイス各地に住んでいる日本人同志、それもスイス人のご主人 と結婚している日本人女性の間の情報交換も大切である。こうした 人々を結び付けるにはメールリストが重要だが、幸いなことにDNS (Digital Network System)という無料・広告付きのメールリス ト・サーバーが目に留まった。メールリストでは、一つの共通のア ドレスにメッセージを書くと、たとえば60人なら60人のメンバーす べてに、同一のメッセージが一斉送信される。ややメール数が増え る感はあるが、みなの情報交換から自分も利益を受けることにな る。スイスでドイツ語環境のパソコンを日本語環境が使えるものに 変えるには、などといった情報はだれにでも関心が有る。

メールリストは、情報量が多いため、重要なメールは自分で記録し て取っておかねばならない。ここで、アルカイブ、Home Page、ニ ュースレターの必要性が出てくる。 アルカイブはIIJ・NETのような、有料メールリストが提供している もので、メンバーはパスワードで保護された過去のメール記録をす べて読み出すことができる。いつ頃、だれが書いたものかだけ知っ ていれば、すぐに取り出すことができる。ホームページはグループ のメンバーリストを掲示したり、メールリストへの申し込みの仕方 などを、説明するファイルなどを置いておける。また、ニュースレ ターの過去の分なども一括してポストしておくことができる。スイ スに関する質問と回答、などもポストしておける。

ニュースレターは、MLメンバー用とノンMLメンバー用がある。MLメ ンバーには、毎週メールリストのお知らせ、主要話題などを載せる ことにしている。ノンMLメンバーには、まぐまぐ通信のような無料 のメールジーンを通じて、MLメンバー向けとほぼ同様なニュースを 流している。メールリストに入るほどの情報は要らないが、週一く らいのダイジェスト版をほしいひとには便利である。ニュースレタ ーでMLの主な話題を取り上げたり、HPの変更点を知らせたりでき る。   このHP,ML,NewsLetter の三つの組み合わせが絶妙なので、まえか らHomePage を中心に活動してきた「平成つれづれ草の会」という 随筆グループにもメールリスト、ニュースレターを取り入れること とした。メンバーの書いた随筆をメールリストに流してもらい、こ こでコメントを加えあったり、それをベースにHPに載せたりできて 便利である。

こうした作業をひとりのひとで、行うのは到底無理なので、「スイ ス・グループ」も「つれづれ草」グループもメールリストを複数の 人で分担し管理している。ニュースレターも3−4人のひとが1か 月ごとのローテーションで担当するようにしている。

こうしたメンバーによる協力体制ができると、いくつかのプロジェ クトを同時並行的に処理することが可能となってくる。先日、ロン ドンのJP-Eunetが管理者の不在により、閉鎖寸前になったときも、 メンバーのかたがたと、連携・協力して維持存続することができる ようになった(2月2日以降、新ML・njp-eunetが発足)。

こうしたグループではメンバーリストの管理が負担になるが、必ず しも主催者が手がけなくとも、ボランティアーのかたに、作成・管 理してもらい、そのかたのHPにポストしてもらいグループのメイ ン・HPからそこへリンクするのが便利である。

グループ作り、維持管理、有料MLの利用には若干のコストが掛かる が、上手にわずかな寄附・コントリビューションを集めると自発的 なものだけで、そこそこの資金があつまり管理者の負担を幾分軽減 できる。また、メンバー数が増えてくれば、有料MLのメッセージや ホームページにもコマーシャルの入ったバナー広告をつけたりする ことも考えられるのではなかろうか。  

(以上)

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井浦幸雄、Yukio Iura,E.Mail address:yiura@magnet.ch NIFTY:GFA04423
http://plaza4.mbn.or.jp/~yiura/index.htm    (ライン随想録・HP)
http://www.chjp.net/index.htm   スイス日本サイバーグループML.HP) http://www.as.lancenet.or.jp/heisei   (平成つれづれ草.HP)
http://www.japanglobe.net/njp-eunet/ (njp-eunet ML.HP)
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(98/2/2 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)



◆ Portable telephone


昨97年1月のはじめ、ちかごろ都ではやるものと称して「携帯電 話」の話を書いた。ぴーぴー、人前で鳴って迷惑だと言う点を強調 したように記憶している。それを書いて2か月後にスイスでの仕事 の関係でエリクソンの携帯電話をなかば強制的に保有させられこと になるとは、想像もしなかった。

いまは充電がやや面倒であるが、いつも電話を携帯している。仕事 の関係で、そう頻繁ではないが、昼休みに早くオフィスへ帰って来 てくれという電話が掛かる。面倒な点はあるが、使いようによって は仕事、プライベートの用事のため、有効に使うことも可能である と思うようになってきた。

仕事中、通常電話を掛けていると、緊急の通話が携帯で掛かってく ることがある。また、家でパソコン通信、ファックスなどで通常電 話がふさがっていると、携帯に急ぎの通話がかかってくることがあ る。気が付かなかったが、携帯は2本目の予備電話の要素もあるの である。

ひとに携帯電話の使い道を聞くと、いろいろな病気を持っている人 が、家族、医師とのホットラインに使っているケース、小学生の子 供が塾からの帰りに親と連絡するケース、若い女性が夜、駅から家 族の迎えを頼むケース、配達が届け先の留守の場合に帰宅後の連絡 を待つケースなど便利な使い方があるようだ。

先日、パリのオルリ空港に着いたとき、ダウンタウンまで行くバス の中で、ホテルに着く前にレストランに直行するための予約ができ 便利であった。

また、ひとと待ち合わせをするときにも相手に自分の携帯電話番号 を教えておけば、遅れる場合や行き違いになったときに、相手の動 静を公衆電話と携帯との交信で確認しあえる。二人ともが携帯を持 っている場合には、たとえば夕方6時ごろ、新宿付近でという約束 だけをしておき、その時に相手の都合を聞きながら、時間・場所を 特定できるという便利さがある。多忙で予定がなかなか確定しない 人には便利であろう。

駅で電車を待っている時間、町で疲れたのでベンチに座り休んでい るとき、携帯を持っていると電話を掛けるタイミングがかなり広が ることが分かる。家との連絡では予定が変わるときに連絡すること が役に立つ。知人と会食の席にいたときに、奥さんが車で迎えに来 ていて、会の終わりごろ、下から携帯で呼び出しているのには、驚 いた。到着したので、早く出てきなさいというわけである。

ただ、スイスと日本の仕様が違うので、一時帰国、出張で日本に行 くときには、エリクソンをスイスにおいておき、東京でドコモを一 時使用するのであるが、そのたびに切り替えることになり実に不便 だ。東京で2週間ほど使用し、また停止してくる手続きが必要にな っている。早く、世界仕様のものが出てこないかと思う。エリクソ ンは日本・東京で使えないが、香港や多くのアジアの国では使える と聞く。

欧州では携帯電話はそれほど、普及していないので、それほど気に ならないが、東京では電車の中、駅のホームでもピーピーとうるさ い。しだいに、人が周囲にいようがいまいが、気にせずに携帯電話 を使用するひとの比率が大多数になり、これを甘んじて受け入れな ければならないのがやや不満であるが現実のようである。

それでも、わたしは一人で運転しているときには、携帯がなっても とらないで、自動録音モードにしておいて運転し終わってから、ゆ っくりと聞く。この自動車と携帯電話の組み合わせであるが、わた しの場合、ひとを車で迎えに行くときに、車の中から今おたくの前 に着いていますので出て来てくださいと連絡するのに便利だ。家内 が助手席に乗っているときには、あと2−3分で着きますので、家 から出て来ておいてくださいと走行中にお願いすることも可能だ。 パーティーなどに呼ばれて、交通渋滞などで、時間に遅れそうなと きなどに、助手席の家内から主宰者側に連絡しておけるのは助か る。また、まだ経験はないが、自分の車が故障を起こし、スイス自 動車クラブに修理の援助を求めるときなど、近くに公衆電話が無い おりには、携帯は便利と思う。

また、われわれのようにスイス・フランス・ドイツの三国国境地帯 に住んでいるものには、それぞれの国の公衆電話のカード、コイン が異なっていて、それぞれを持っていることが面倒なときには、携 帯電話を持っていて、動き回ると便利である。車で五分も走り、フ ランスに行くと携帯の電波域がフランス・テレコムに変わり、スイ スまでの国際電話になる。わたしのゴルフ場がフランス・アルザス にあるので、ゴルフのあと遅くなる旨家に連絡するときに携帯は便 利だ。

会議中には原則、スイッチをきるが、もしきり忘れたときには、失 礼といって、室外に出る。参加メンバーが同意すれば、会議中に外 部の部下などに携帯で問い合わせることなども技術的には可能であ る。

携帯と通常電話が同時に使える場面では、携帯は割高なので使わな い。わかいひとのなかには、通常電話を解約して、携帯電話だけに するひともいるらしい。わたしの場合には、携帯の方が音声が悪い ので、通常電話は解約しないで使っている。しかし、国外に住んで いるため、通常はアイドル化している東京の通常電話は止めて、携 帯だけにすることもいいかなと考えている。

携帯電話の電話番号をどのように人に与えるかは、業務上の大切な 配慮である。仕事の上では、通常電話に録音機能があり、緊急の場 合、秘書が電話を取ったり、秘書に電話が掛かるので、連絡が付 く。それでも、携帯へのアクセスをどの程度許すかは大事なもの で、わたしはある程度限定的にしている。携帯はわたしの場合、自 分から掛けるのが4に対し、掛かってくるのは1くらいである。

このように、携帯電話は忙しい現代の生活を支援するものではある が、ないで済ませることができれば、そのほうが良いと思う。オフ ィスと家に行ったりきたりする時、外出のおりに、電話を携帯して いるか否か、いつもチェックしていなければならない。また、常に 携帯の充電状態をチェックし、機能するよう維持しなければならな い。わたしの場合、背広のうちポケットに入れているが、机のかど などに打ち付けて壊したりしないように注意しなければならない。 私用と公用の電話の使い分けもかなりわずらわしい。

今のところ、携帯電話とハンド・ヘルド・コンピュータを接続し た、携帯端末はコストの面から折り合わないため、利用する気はな い。オフィス、家でもコンピュータを使っているので、旅行先まで アクセスする気にはなれない。

昨年、はじめて携帯電話を持ったときには、歩いているときにも、 胸のポケットにある携帯電話と世界とが結びついているようで静か な興奮を覚えたように記憶している。しかし、仕事を辞めた場合に は、自分のお金で携帯電話を買うことは無いと思う。便利さとここ ろの平安の間にどのようなバランスを保つか、古くて新しい課題の ように思えてならない。

(98/1/21 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)



◆ SENSE OF HUMOUR(センス・オブ・ヒューモア)

今回のタイトルはあえて「ユーモアのセンス」としなかった。 Sense of humour と"u" を入れて、米国語と一線を画そうとした のも、英国人のお仲間の多くの生きざまに、いろいろ感銘を受けているためである。どうもこの Sense of humour というものが、 英国人の教育のバックボーン、生き方の指針となっているのでは ないかと思われる。わたしは英国の教育、考え方に詳しくないので、むしろこの点に詳しい人から、お教えいただけるとありがた いと思う。

 この英国流センス・オブ・ヒューモアを身に付けた人に、第二 次大戦直後日本を指導した吉田茂元首相がいたのではないかと思う。彼は駐英大使の後に、首相になったが、首相時代のある日、 占領司令部の米国人高官から、「日本の統計はでたらめで、何の役にも立たないではないか」と厳しく糾弾された。吉田はその高官に「そのとおりです。だからこそ、日本はアメリカとの戦争にやぶ れ、あなたはそこに立っているのです」とこともなげに、答えたという。米国人高官は言葉を失ったと推察される。また、吉田は、長 寿の秘訣を聞かれたとき、「いつも人を食っているからです」と答えたという。冗談とも、本音ともつかない、わたしの好きな返答の 一つである。わたしは1942年(昭和17年)生まれなので、吉田が首相のときの時代をあまり良く覚えていない。新聞記者にコップの水を掛けたり、「ばかやろー」と叫んで、国会解散の引き金になった り、有能であると共に、あまり沈着でなく物議もかもした一面もあったようである。

 第二次大戦中、英国ロンドンの大手百貨店(たしかハロッヅでは なかったかと思う)がドイツ軍の空襲にあい、正面入り口を大破さ れた。翌朝入り口に貼り紙が出されたという。「親愛なる顧客のみなさま。当店はみなさまのご愛顧にお応えするため、入り口の大きウを2倍に拡幅し、ご来店をこころからお待ち申し上げております。 ぜひ、ご利用ください」。

 仕事の場などで、英国人の仲間と付き合っていると、もちろん人 にもよるが、多くのひとが実に忍耐つよい。相当議論が白熱し、一 触即発のようなときでも、怒ること無く、ディプロマティックな言葉をつかって、沈着・冷静さを維持するひとが多い。逆境、ディフ ェンシブになったときに、冷静さを失わないのは、りっぱである。 教育水準の高い人に多いので、良い教育のもたらしたものという気 がしてならない。

 英国では、冬場には全土が霧におおわれ、忍耐づよくないと、生 きていられないような風土が何世代にもわたって、受け継がれてい ったことは容易に想像が付く。わたしの周りを見渡しても、また世 界中の過酷な風土のところや、遠隔地を見ても、英国人はいとわず 出かけていって定住している。流刑人はともかく、自分の意思でオ ーストラリア、ニュージンランドに出かけていった英国人はどのよう な思いで移住していったのであろう。孤独に強く、逆境に強い人でなければいたたまれなかったのではないかと思う。

 先ほどの、吉田元首相の統計の話、敗戦国のトップとして、惨めな 、屈辱的な場面が多々あったことは想像に付く。「統計が十分でなかったから、戦争に負けたのだ」というセリフは自分を客観的に眺めるものでなければ、出てこないものだろう。大手百貨店が爆撃の後、顧 客のため入り口の拡幅を行ったというのは、「ユーモアのセンス」で はなく、「センス・オブ・ヒューモア」だと思う。読んだ人はそこに 、逆境にはくじけない、沈着な意思を見つけ、口元がほころんだこと だろう。それは単に「笑い転げるような面白さ」ではなく、高潔な教 養のもたらす、同感の微苦笑ではなかっただろうか。

  SENSE OF HUMOUR(センス・オブ・ヒューモア)とは、単に日本語 で言う、ユーモアのセンスにとどまらず、「自己抑制と自己節制を追 求する美意識」ともいうべきもののように、思われるのですが、みな さまはどのようにお考えでしょうか?


  (98/1/7 ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)