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世界の窓

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【 スイス・バーゼルレポート VOL.5】

井浦 幸雄氏


◆ 欧州結婚事情

約8年間フランス語を習っているマダム・ベライシュの一番上の娘さんがこの6月に結婚した。28歳で地元の州立病院・カントンシュピタルの女医さんである。お相手は弁護士で33歳との事であった。しばらく前に、アメリカのボストンから購入した、「母がよく言っていた事」(My mother always used to say)と言う本をマダム・ベライシュに見せた事があるが、大変気に入ってくれ、娘に与えたいと言う。彼女も一冊買いたいと言っていたが、なかなか手に入らないので、「わたしのコピーを結婚のお祝いとして、娘さんに差し上げて下さい」と贈呈した。9月になって、娘さんとご主人の二人の結婚式の写真が送られて来て、「お祝い」の品をありがとうと、こころのこもった丁重な礼状が添えられていた。

その写真とお礼状を見せながら、マダム・ベライシュに当地の結婚式事情を聞いてみた。彼女らはフランスからスイス・バーゼルに移り住んで30年近くになるが、こちらの結婚式はカップルによりさまざまであると言う。言語も、宗教も、場合により国籍も違う人が30万人近く住んでいるバーゼルのことなので、平均的な姿と言うのは絞り切れないようだ。ドイツ人、ドイツ語系スイス人のようなゲルマン系のひとはかなり金持ちであっても、簡素な結婚式を挙げる人が多いと言う。フランス人、イタリア人といったいわばラテン系のひとは親族をたくさん呼んで、規模の大き目の結婚式をあげることが多いと言う。親族だけで、教会などで結婚式を挙げ、レストラン、その他で披露宴パーティーを行うことが多い。そういえば地元のお城・レストランなどで結婚式をあげているひとをよく見かける。おなじ兄弟姉妹でもそれぞれのカップルの考えで千差万別であるようだ。マダム・ベライシュも二番目の娘さんはロンドンで結婚し、内輪だけの式となると言っていた。

わたしの職場でスイス人、ドイツ人、イギリス人などの若い仲間が結婚をすると、式は身内だけ20−30人くらいで、教会で挙げ、近所の人や職場のお仲間はコクテイルだけと言うのが多いようである。職場の仲間には、業後仕事場または、会社のスポーツクラブなどで、新婚のカップルがドリンクをオファーし、仲間がご希望に添って贈り物をすると言う形になる。50−60人の人が、集まってもドリンク、スナックだけ、かつ会社の施設なので5−6万円前後の出費、それと同じくらいの価格の贈り物をもらえるので“とんとん”でまかなえるようだ。コクテイルの2−3週間まえから、カードと「贈り物用寄附」を募る袋がまわされ、ひとり1−2千円相当くらいのコントリューションがなされる。コクテルでは直属の上司ひとりだけが、みなを代表して贈り物を差し上げ、ごく手短にひとことだけお祝いをのべ一時間くらいで終わる。

教会の式も簡素で、若いカップル、両親はそれほどの出費とはならないことが多いようだ。祖父母、叔父叔母のような親族は、若いカップルの「希望リスト」を見ながら、新所帯の家具、電気製品などを寄附させられるものらしい。われわれ職場の仲間もその「リスト」の一翼をになう事になる。

わたしも日本の結婚式に何回も出させていただいたが、これまでのところ日本では世間並みを維持するための、社会的なプレシャーが若いカップル、その両親にかかっていたような印象を持った。最近では日本でもいわゆる地味婚と称して、ホテルや結婚式場を使わず、近くのありふれたレストランで小人数の格安披露宴を上げている人が多くなっていると聞いているが、バラエティーに富んだ祝い方が増える事は結構なのではないかといつも思う。

結婚式だけでなく、冠婚葬祭のすべてにわたり、お祭りの寄附などに、また日ごろの人付き合いに日本ではお金がかかることが多いような気がするが、これはなぜだろうかといつも思う。それでは逆にヨーロッパではなぜそれほどお金がかからないのかと思う。これには、世間並みと言った規範とお金の集めかたに違いがあるようだ。たとえば、日本では大手会社の部長さん、課長さんがホテルでの部下の結婚式に呼ばれると、世間相場として、これくらいのご寄附は当然といった、暗黙のプレッシャーがはたらいている。受付で、お祝儀ぶくろを出すときに、表に名前、裏に金額を書かさ れる。これがないと、受け付けが補記したりする。少ない金額を出しにくい雰囲気がある。部長さん、課長さんといっても、実は内情に大きな差異があり、会社からこうした交際の費用に補助が出ているかいないか、自身の扶養家族にお金のかかるか、かからないかなど、それぞれに異なっている。ポストから言ってこれくらいという圧力には困っている人が多いに違いない。今スイスの国際機関につとめるわれわれの場合、職場の結婚式コクテルの際には、寄附は匿名で、それぞれの人の貢献金額は一切分からない。これにより、親しい人には大目に出すが、親しくない人にはうんと少 な目と言った、濃淡が付けられる。こどもの多い人は上役でも少なく、独身貴族はやや大目に出す事も自由だ。全体を見てみると、いつも大体同じくらいの金額が集まっている。

わたしの前の日本の職場のお仲間に部下の結婚式で50人以上あつまる大規模な結婚式には、列席しないという主義を貫きとおした人がいた。一金、5千円なりのご寄附は披露宴に参加しなくとも出すのである。おめでたい部下の式なのにと不満を言う人もいたであろうが、自分の考えをはっきり示すのはよい事と思う。

日本の結婚式披露宴がしだいに派手になっていった過程では、参列者のご寄附がかなりの部分これを支えると言った事情があったようである。若いカップルもある程度ご寄附を計算にいれているに違いない。これに対応するには、たとえば、15人呼ばれている同じ職場の仲間は総額でご寄附をしたい、ひとりひとりの貢献額は一切明らかにしない、それでもよいのならば、15人みなが参加する。それが不満であれば、15人とも欠席とすると通告するのはいかがであろうか。このときのひとりひとりの貢献額は自分で考え、適切と思う金額とし、一切他の人と情報交換しないし、他の人 の分は知りえない、というのはどうであろうか。本人が式場を選定する過程からご寄附が必ずしも当てにならないと言う事を前もって含ませておく事が大切のようである。

この点は日本だけでなくアジアの国くにに共通しているのかも知れないが、冠婚葬祭にお金をかけるのは、人の目を気にする社会と、自分は自分、人は人という、いわば個性主義の社会との違いに収斂してくるのかもしれない。

自分は経済的に豊かではないので、結婚式披露宴によばれた際には、3000円しかお祝いは出せません、それでもよければ是非声を掛けて下さい。お香典は2000円しかだせません。このようにはっきりといえる人が、ひとりでも増えてくるのが、これからの日本で望ましいのではないかと思うのだが、いかがなものだろうか?(以上)

ほかのライン随想録の記事については、ぜひ下記のURLをごらんください。

http://plaza4.mbn.or.jp/~yiura/rhein040.htm

(97/9/13  ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)





◆ 賢い旅行情報の集め方

みなさまは、国内・国外の旅行情報をどのようにして集めていますか?多くの ひとは、旅行ガイドブックをよく使っていると思います。「ブルーガイド」 や、「地球の歩き方・シリーズ」、最近では日本でも「ミシュラン・ガイドブ ック」の翻訳や、かなり詳しいガイドブックがたくさん発行されているようで す。ただ、多くの方が指摘されているように、ガイドブックにのっていたレス トランやお店などが実際に現地に行くと無くなっていたり、料金が変わってい たり、案内の内容が事実と違っていて、失望したり怒ったりする人が多いよう です。

この8月のはじめ、7−8年ぶりにニューヨークに、しばらく滞在する機会があ った。ニューヨークには、7年もの間住んでいたワシントンDCからなんども 訪れているので、ミッドタウンなど市の中心部には土地感もあり、知っている レストランも何軒かあるので、ゆったり構えていた。その日は昼、久しぶりに メイン州のロブスターでも食べにシーフード・レストランにでも行き、夜はミ ュージカルでも見ようと思っていた。確か、ヒルトン・ホテルの近くに、「ピ アー・51」というかなり大きな、シーフード・レストランがあり、それがな ければグランド・セントラル駅の近くの「竹寿司」か、それが閉まっていれ ば、同駅地下の「オイスターバー」にでも行こうと思った。念のため、ホテル でもらったミッドタウンのレストラン案内を見ると、「ピアー・51」は見当 たらない。電話番号簿には「オイスターバー・プラザホテル」と書いてある。 念のため、タクシーに乗り、ヒルトン・ホテルの近くの「ピアー・51」のあ ったところに行ってみた。そこは「レミ」というイタリア・レストランになっ ている。グランド・セントラルの前の「竹寿司」にも板が打ち付けてあり閉ま っているようだ。同駅地下の「オイスターバー」は改装工事中でいつ再オープ ンするか目処も書いていない。結局、プラザホテルに行き、そこで「オイスタ ーバー」を見つけ、念願のメイン・ロブスターにありついたが、お目当てのレ ストラン4軒のうち3軒までが、変わったり、つぶれたり、改装工事であったり していたのである。タクシーの運転手は、ニューヨークではレストランや店が 間断なく変わっていると話していた。

ホテルに帰って来て、ケーブル・テレビを見ていると、最近のニューヨーク案 内番組を放映しているではないか。それも観光客あてに20分毎に繰り返し繰 り返し放映している。シーフード・レストランは新しくかなり良いものが、3 つも4つできているようだ。この電話番号と、アドレスを書いておけば、予約 したり、出向いたりするのに便利に違いない。ホテルのキオスクで「今週のニ ューヨーク」という小冊子を買ってきておめあてのところを探したりするのも 良い考えのようだ。ホテルの案内に問い合わせるのも良い考えであるが、ここ は忙しい事が多い。

結局、日本などで、2−3年、4−5年前に作られたの旅行ガイドブックを買って 来て、その中でお目当ての、店やレストランを探してはみたものの、実際には なかったり、情報がことなったりすること、文句は言えないものだなとつくづ く思う。現実には浮沈がかなり激しいし、営業の場所がかわったりして、ガイ ドブックが十分にフォローしきれない事が多い。やはり、現地で自分の目で確 かめたり、現地ホテル、観光案内所でいま時点の情報を入手することが一番確 実と思う。お気に入りのショッピング街などに行き、その辺をぶらぶら散歩し ながら、お目当ての店を選ぶほうが、ガイドブック片手に、特定の店に直行す るより好みに合うものが得られるかもしれない。 それと、都市や町・村に行ったときには、時間があれば次回に備えて自分のと まったホテル以外に、気に入りそうなホテルを探し、中の様子を見て、パンフ レットなどもらって、値段などをチェックしておくのも良いと思う。やはり自 分の目で見ておくのが、一番的確と思う。 旅行情報を確実につかむには自分が何をしたいか、しっかり整理しておく事 が、大事のような気がする。ゆったりと過ごして、おいしいものでも食べたい のか、観光の目玉の神社、教会、建物をじっくり見たいのか、音楽を聴きたい のか、歴史を研究したいのか、考えておくほうが良いと思う。これは自分のい きざまとも関係してくるのかもしれない。 最近のコンピュータをつかった情報収集にかなり役に立つ事はありそうであ る。日本国内でも温泉情報、都市情報を満載したホームページが作られてお り、その管理者にメールで質問をしたりしてチェックすることができよう。更 に、メール・リスト(ML)のお仲間にいろいろ情報提供を呼びかけ、事前に 下調べをすることが可能となっている。相手に迷惑のかからないように注意す れば、コンピュータで通信していたお仲間と国内外の現地で、電話で話した り、コクテル・食事をご一緒したりしてアップ・ツー・デートの情報を教えて もらうのが、一番確実、的確のような気がする。

最近の日本のかたの海外旅行は家族、友達のような小グループのものがふえて きていると聞いているが、1個所に滞在し、そこを基点にあちこちに出かけた り、普段の生活を楽しんだり、自分の趣味にあう日々を過ごしたりということ が、楽しみになって来ているようである。それには、現地に住んでいる人に、 手紙、ファックス、電子メールなどで、自分のニーズに合うような情報をきめ こまかく、教えてもらっておく事が、たのしい旅行情報入手の第一歩とおもえ るのですが、みなさまはいかがでしょうか。最近ではヨーロッパや、アメリ カ、アジア、の各地に現地に住んでいる日本人のかたの旅行・エージェント (そのおおくは現地のかたと結婚した日本人女性)があるようですが、そうい うかたのアドバイスを日本からもとめるのも良い考えと思います。(以上)

このほかの、ライン随想録については以下をごらんください。

http://plaza4.mbn.or.jp/~yiura/rhein040.htm

(97/9/6  ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)




◆ ヨーロッパのひまわり

バン・ゴッホのひまわりを見たとき、なぜ彼はひまわりの絵をたくさん描いた のだろうと、ふと考えた事がある。アルザスにラ・ラーグ・ゴルフ場があり、 バーゼルから月に3−4回はこのゴルフ場に出かけているが、約40分のドライブ のおり、あちこちにひまわり畑があるのに気がつく。夏の日差しを浴び、強烈 な黄色の花をつけたひまわりが数千本も畑に植えられているのである。見つめ るといつも頭がくらくらするような強い衝撃を受ける。このあたりと同様に、 ゴッホがよくスケッチにでかけたフランス・プロバンスの田舎でも、たくさん のひまわりが植えられていた事は、容易に想像がつく。スーパー・マーケット にいくと、ひまわりの種からとった食用油はオリーブ、大豆からとったものよ りも、豊富に出回っており、値段も割安のようだ。このあたりではひまわりは 重要な作物であるようである。ひまわりの種を煎ったり、茹でたりして、サラ ダ、添え物に加えているのに時々、お目にかかる事がある。それに鑑賞用の切 り花としてのひまわりにも根強い人気がある。郊外の切り花用農園(自分で切 り取って代金を箱に入れておく)でも、また市内の花屋さん、引きうりのトラ ック・花屋さんでもどこでも、ひまわりは良く出まわっている。ゴッホは近く の畑から、2−3本手軽にとってきていつも眺めていたものだろう。ひまわりは 実に身近な花なのである。それに、沈んだ心を力強く勇気づけてくれる。

実はこの話を書こうと思ったいきさつは、今年、5月のある日わたしの家の二 階のプランターに、5cmくらいの双葉の植物が覚えはないのに突然芽をふい たためである。水をやっているとあれよあれよと言う間に、50|60cm、さら に1メートルものひまわりに成長し、立派な花をつけた。仲間のひとに聞いて みると、これは良くある事らしい。鳥が種をたべたりして、遠くから運んでく るもののようだ。さらに、自分の食べ物を確保するために、空き地に意図的に 種を運ぶ賢い鳥もいるということである。聞くところによると、ひまわりはそ の強烈な黄色の花から容易に想像がつくように、どのような土地にも生え、育 てやすく、生命力にあふれた作物らしい。ちょっと調べてみると、ひまわりは 砂地でも、粘土質の土地でも、双方で良く育ち、アルカリ性の土地もきらわ ず、乾燥にも極めて強いと言う。霜にも耐性が強いそうだ。来年は今度は意図 的に自分でプランターとか空き地に植えてみようと思う。食用油は自分で作れ ないものの、鑑賞用の花としては、なかなか良いようだ。

ひまわりは英語では、sunflowerというが、ドイツ語では、英語と同じ意味 の、Sonnenblume 、いわば「太陽の花」という。フランス語では、tournesol, スペイン語ではgirasol, tornasol, 日本語と同じ「ひまわり」の意味であ る。多分イタリア語でも同じであろう。

さらに、明るいイメージ( oすために「ひまわり」「サンフラワー」と言う名 前をつけるものも多い。しばらく前に東京―紀伊・勝浦間で乗ったカーフェリ ーは「サンフラワー」と言う名前で、船体に大きなひまわりの花の絵が描いて あった。気象衛星も「ひまわり」というなまえのものがあるらしい。

人間とひまわりの関係はきっても切れないものがあるようだ。それも洋の東西 を問わないもののようである。バン・ゴッホの「ひまわり」をINTERNETで鑑賞 したい方は、下記のURLでどうぞ。

http://www.bccom.com/eastern/sunflowe.html

http://www.secondnature.com/vincentv.htm (以上)

なお、ライン随想録の他の記事については、下記をごらんください。
http://plaza4.mbn.or.jp/~yiura/rhein040.htm

(97/9/1  ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)