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世界の窓

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【 スイス・バーゼルレポート VOL.4】

井浦 幸雄氏


◆ 歯の健康維持について

明眸皓歯とは美しい眸と、白い歯で美人の一つの条件であったらしい。高齢化 社会を迎えて、歯の健康維持がますます大切になって来ているようだ。アラブ のらくだ売買でも買手はらくだの歯の状態をまっさきにチェックするらしい。 丈夫ならくだは、歯の状態が良好なものに多いと、経験で知っているからであ ろう。

今日の話は、わたしの経験から日本の歯科医療に疑問を投げかけるものであ る。とくに、歯石の除去は診療報酬の点数が低いためか、日本フ歯科医はどこ でもかなりおざなりである。また、患者はこれが歯周病の大きな原因になって いるのに気がつかないで、気がついたときにはもう手後れということが多いよ うだ。

子供のころ終戦直後で甘いものが少なかったためか、わたしは小さいときか ら、幸いな事にいままで虫歯が一本もない。ただし、歯の健康維持と歯石の除 去のため、日本の歯医者に6か月に一度、定期点検にいっていた。日本の歯医 者では、良い歯並びですね、虫歯はありませんね、軽く歯石をとりますと、簡 単に除去作業をするだけだった。また朝晩の歯磨きは励行していた。

1985年に第二回目のワシントンDC勤務となり、人に紹介され、DR.シフレとい う市中心部の歯科医に歯の定期点検に出かけた。2−3回目の検診のときだっ たと思うが、軽い歯周病のきらいがあり、手術をすすめるといわれた。歯茎の ポケットを削除し、歯茎を歯にしっかりと、結びつけ歯周病の進行をとどめる ものであった。近くのDR.ミラーというひとのところに通い、3か月ほど掛 けて4回にわたり、前後左右数本の歯茎を切開・縫合する手術を実施してもら った。幸い経過は順調で、その後歯周部分(ワめ、何ら問題は起こっていな い。1989年からのスイス・バーゼル居住では、スイス人の歯医者・シュッ ツにかかっているが、ワシントンでの手術のあとはうまくいっているとの評価 であった。

それにしても釈然としないのは、日本で定期的に歯科医に通っていたのに、歯 周病の警告がまったくなかったことである。スイスにいく前、若干東京で時間 があり、DR.ミラーの紹介してくれた、青山の川崎歯科という、保険が利か ないという歯周病の専門医を訪問した事がある。日本の医療保険制度のもとで は、相当歯周病がi行しないと手術とはならない、開業医の歯石の除去もおざ なりである、との話であった。

確かに、歯の矯正、治療ではコストがかさみ、歯科医療保険のカバーも日本で はグループごとにばらつきがあるようだ。ただ、アメリカでは歯並びの矯正や 歯周病の予防にかなりの努力と資金が使われているのに対し、日本ではかなり いい加減にされているような気がしてならない。女性の歯のやいばも日本では 「かわいらしい」とポジティブに評価されているが、アメリカではドラキュラ の歯のようだとして、ただちに矯正の対象になるらし「。一方で、歯周病のた めに歯が抜けてしまった人に対しては、顎骨などに、金属ないし、シリコンの ネジを埋め込み、新たなさし歯をする技術などは日本は進んでいると聞いてい る。

国により、歯科医療の力点の置き方がことなり、一概に比べる事はできないだ ろうが、日本に住んでいる人は、40歳台ころから歯周病には細心の注意が必 要のようだ。歯が抜け落ちるのを好まない人は、保険でカバーされていない、 歯周病の専門医に年に一度くらいは相談にいき、歯の手入れの仕方、歯の健康 維持の仕方を良くおしえてもらったほうが良いように思う。(以上)

ライン随想録のほかの記事については以下のURLをご参照下さい。

http://plaza4.mbn.or.jp/~yiura/rhein040.htm

(97/8/26  ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)




◆ E2・航海記、その6――食事中の会話・日本人と中国人などなど。

乗船後3日目になり、プリンセス・グリルの食事のときにお仲間をさそって、大きなグループで夕食をともにしようと思い始めた。たまたま、AFSの同じ年にアメリカに行っていたドイツ人がバーゼルの製薬会社・ノバルティスに勤めているという。わたしもバーゼルに住んでおり、グリルもプリンセス・グリルで同じということで、夕食を彼のアメリカ人の奥様とともにご一緒しようという事になった。夕食の前、アペリティフを飲んでいると、ベルギー人のカップルもジョインしたいという。6人で、席に就くと、今度は、英国人とフランス人のカップルが仲間にいれてくれと入って来て、8人の大テーブルになった。

ベルギー人がアペリティフを払ったので、ドイツ人とわたしが白と赤のワインを一本づつ提供した。例のベルギー人が建築家でなんども、日本に行った事があるという。

「ときに、日本人と中国人はお互いに言葉が通ずるのかね」
「日本語と中国語は、ちょうど、フランス語と英語のように、そのまま話してもお互いに理解できない。ただ、日本人は中国から漢字をならっているので、漢字を中国人の前で、書けば、筆談でかなり理解することができる」
「漢字は日本と中国で違った発展をしているのではないか」
「たしかに、中国では漢字の簡略化をすすめたので、若干違いが出ている」
「中国人と日本人はお互いの国の新聞をよめるのか」
「7−8割かた、大意はつかめる」

香港返還直後であったので、みな、中国に関心があるらしい。それに、中国と日本の関係にも興味があるようだ。

「それについて、面白い話がある」と、わたしが切り出した。「2−3年前、あるパーティーで中国人民銀行の若いひとと話していた。彼はミスター・イウラ、日本人は中国から漢字をならって、その代金をいまだ支払っていないのではないかという。その時は絶句して、言葉もでなかったが、後に日本銀行の先輩にこの話をすると、イウラ君、この次はこう言いなさいという。日本人は中国から複雑な漢字を習わせられたため、近眼に苦しむ人が多い。本来は損害賠償を請求してしかるべきであるが、長年の友好のよしみとして、この賠償請求はいまのところ留保しておく、こう言うのだ」。

中国人がそんなロジックで賠償金などはらうかねえ、と一同大爆笑となった。

「それにしても、香港のひとは中国変換後、いままでの自由が保障されるか不安だろうね」とベルギー人。

「たしかに、変換後いろいろ制約がでてこようが、香港で過去百年以上自由を享受できていたのが、本土の目からは贅沢と写ったのかもしれない。これからある程度中国本土並みになっていくのは、仕方がない点もあるのでは」

「それでもいちど、享受した自由の味はなかなかわすれられない。いろいろ摩擦がおきてくるのではないか」
「でも、香港の中国化ではなく、中国の香港化ということは、考えられないのかね」と、イギリス人。
「10億もの中国人がそう簡単に変わるものとは考えられない」
「ときに、日本人はアジアで、どういう役割を果たしてくれるのかね」
「イギリス人はちょうど、イギリスが欧州とアメリカの橋渡しをしているように、日本もアジアとアメリカの橋渡しをしたらどうかと、言っているようだね」と、わたし。
「でも本当に、日本人は中国人と親しくつきあっていけるのかね。生活のレベルもかなり違うし」とドイツ人。「ドイツでは東西ドイツの統一時に同じドイツ語をはなしながらも、かなり摩擦が起きた。」
「でも日本人の多くは、過去2千年、3千年の中国とのつきあいを通じて、基本的には中国文化に理解と敬意をもっているのではないか。たとえば、漢方薬、針灸、指圧などの東洋医学は西洋医学が入ってきた後も根強い人気を得ているし、太極拳、などの運動も日本人の間に人気が出ている」と言った。

夕食では、ワインと話とか、、ニューヨークでの予定、休暇の過ごし方、QE2の印象などが、話題に上ったが、この船は巧みな環境作りで「英国のいわゆる階級社会」を再現しているのではないかということを言い出す人がいた。

「たしかに、むかしの船旅と違って、パブリック・スペースはどの等級のひとも共通に利用できる。デッキに出ようと、ラウンジに出ようと、パブに行こうと自由だ。しかし、エレベーターの運行がすべてのフロアーに平等に止まるというのではなく、下の等級のひとが、上のデッキに行きにくいようなしくみになっている。」
「たしかに、食堂は等級、値段により厳格に区別されているのはしかたがないとしても、船長主催パーティーも一日目は上級船客向け、二日目はその他の船客向けと別れている。ウエイターの質も違うようだ。ただ、それが、さりげなく価格により区別されているので、違和感を感じない人が多い。」
「でも、それはQE2だけでなく、ロンドンやニューヨークのホテル、いやどこでも同じではないか」、ということで、この話はお開きになった。

最後に、国籍・言語が違うひと同士で結婚しているカップルは、家でどの言葉を使っているかというのも、興味のある話題である。ドイツ人とアメリカ人のカップルではドイツに住むときはドイツ語、アメリカに住むときは、アメリカ語(英語)になり勝ちという。ただし、喧嘩になるときは相手を言い負かすため母国語になるという。これは、ゴルフでも当てはまり、ミスをしたときには誰でも「こん畜生!」に相当する母国語を叫んでいる。

プリンセス・グリルの食事でも、皆が聞いているときには、英語を話しているが、となりの人と私語を交わすときには、二人の共通言語、フランス語とか、ドイツ語、日本語となる。英語が堪能なひとが、となりにすわれば日本語しか話せない人でも楽に会話が楽しめると思う。

「ただ今回のQE2のひとつの楽しみは、みながかなり英語、アメリカ語を話すので見知らぬひとに話し掛けるときに、言葉に気を遣わなくても良いという事ですね」というと、「そうだ、そうだ」とみな賛成してくれた。ヨーロッパ大陸諸国ではそうではない。誰が、どの言葉をどの程度はなすかを常に把握しておかなければならない。
「結局、言葉の面でも、制度の面でもいわゆるグローバル・スタンダードができるようになるのは、まだまだ先の事になりそうだが、それまで共通の経験を持つもの同志が力を合わせて、なんとか協力していこう」と、べルギー人がとりまとめて、ディナーが終わりとなった。(以上)

(97/8/23  ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)





◆ QE2.航海記・その5――幻のグルメ・スコティッシュ・キッパー

クイーン・エリザベス2世号に乗船し、初めて幻(?)のグルメ・スコットランドの燻製にしん、キッパー(kipper)を味わうことができた。実は今わたしの勤めている国際決済銀行(BIS)にはイギリス人、わけてもスコットランド から来た人が多い。さらに、わたしはBIS.ゴルフ・クラブに所属しており、いろいろな泊りがけゴルフ・ツアーに行くのだが、その折、スコットランドの名物グルメの話が良く出る。おまえは日本人だから、燻製にしんは好むのではないか、ぜひ一度試してみてみろ、と言うわけである。ロンドンに行ったことはあるが、スコットランドにはいまだ行った事がないので、Kipper なるものに、お目にかかった事はない。聞くところによると、海岸などで、たき火をし、沈む行く夕日を眺めながら、モルト・ウイスキーの原酒など飲みながら、このKipperを味わうのが最高らしい。日本では、にしんが消え失せてから久しいので、生のにしんはおろか、燻製のにしんなど、あじわったことはなかった。

QE2に乗船し、最初の朝食のとき、われわれに指定されたPrincess Grill に出かけて、朝食用メニューを眺めていると、“Kipper” と書いてあるではないか。早速はこれは、“smoked herring"であるかと、きくと「そのとおりだ」と応える。オレンジ・ジュース、タマゴ、パンに加えて、この”キッパー“なるものを、注文してみた。独立した皿に出てきた”キッパー“は長さ15cmくらい、頭を取り、三枚におろしたにしんを真ん中の骨の部分は取り除いてある。あめいろの”キッパー“は軽くあぶってあり、口に含むと、燻製独特の香りと、にしんのこうばしい味がいっぱいに広がる。なつかしい海のかおりがあたりに立ち込める。にしんのごく細い骨がのこってはいるが、気になるほどではない。

朝のため、沈みゆく夕日はなかったし、モルト・ウイスキーもでなかったが、なかなか、味わい深い。7月28、29、30、31日、と毎朝、この“キッパー”なるものを、一皿注文した。ウエイターも手慣れたもので、向こうから“Kipper,again?"と聞いてくる。最後の朝の8月1日には、わたしが全部食べたためではなく、上陸の朝で忙しいためであろうが、”キッパー“はメニューから消えていた。

日本人のうち9割以上の人は、この“キッパー”なるもの、口に合うと思う。イングランドや、スコットランドに行かれたかたは、ぜひ一度おためしになり、感想をお聞かせ願いたいものである。キッパーは手に入らないものの、生のにしんはわたしのすんでいるバーゼルから程近い、フランスの町、サン・ルイのスーパー、ロン・ポアンで入手できる。10−15cmくらいのにしんを入手し、自分でワイン・ビネガーとサラダ・オイルでマリネーを作り、なんどか味わった事がある。黒つぶこしょうを加えると風味が増すようである。

ときに、1500人もの船客のいるQE2では、7つもの指定レストランで、朝、昼、晩と食事を取る事となっている。わたしどもの指定された、Princess Grill は約40名もの船客が食事をしていたが、最初のころは、二人がけのテーブルから席が埋まっていったが、次第にお互いが親しくなるに連れ、8人がけ、4人がけ、のテーブルに人気がでて、大勢で食事を楽しみたくなる。ワイン、その他の飲み物をシェアーしたり、会話を楽しんだり、大きなグループで交歓するのが、クルーズ最大の楽しみという事が分かってきた。

レストラン、グリルのことなるお仲間とは、お茶の時間とか、食後のバーでごいっしょする事になるが、こうした施設は随所に設けられていた。

ご参考までに、QE2.Princess Grill の7月31日、ディナーのメニューを以下に掲載しておいた。このメニューは当然日替わりで、毎日グリルごとに異なり、専属の印刷所で印刷して配布される。最終日のディナーのときに、各人に毎日のメニューのコピーを手渡してくれるという念の入れ様である。この標準メニューのほかに、Chefs Suggestion というお勧めメニューがあり、さらにワインリストが添えられている。各グリルに専属のソムリエが配属されており、ワインを勧めているが、ワインはクルーズの費用には含まれておらず、自己負担である。以下、関心のないかたは、どうぞ読み飛ばして下さい。

PRINCESS GRILL MENU
(31st July 1997)

HORS D'OEUVRE

Beef Steak Tartar finely minced Fillet Onions,Capers, Anchovies and
Pumpernickel
Grilled Mozzarella with Olive Oil, aged Wine Vinegar, Sun dried
Tomatoes

Spring Rolls with hot Plum Sauce

SOUPS

Consomme with Meat Dumplings, Vegetables and Sherry

Creamof Vegetables and Herbs

Chilled Pina Corada Soup

SORBET

Kiwi Sorbet

ENTREES

Paupiette of Flounder "Americaine"

Zitte Pasta with Roquefort Cheese

Roast Duckling a L'Orange

Grilled Lamb Cutlets

Sauted Medallions of Veal

VEGETARIAN DISH

Panfried and served with a Ragout of mixed Beans and Brown Rice Timbale

DESSERT

Kiwi Sorbets

White Chocolate Brownie with Chocolate Fudge Sauce

Orange Bavorois with tangy Rasberry Sauce

Coffee Souffle with Vanilla Sauce

Diabetic Dessert: Fruit Compote with Diabetic Ice Cream

Ice Cream: Vanilla, Chocolate, Pistachio

Dessert Sauces: Rasberry, Vanilla, Apricot

Assorted International Cheeses

Freshly baked Breads

Chilled Whole Fruit

Beverages

Ceylon and China Tea

Coffee, Decaffenated or Regular, Cappuccino, Espresso

Cunnard serves only 100% Colombian Coffee

Hot Chocolate

Iced Tea, Ice Coffee

(以上)

(97/8/21  ライン随想録・スイス・バーゼルレポートより)