◎ お勧めエッセイ・小説 ◎

王たちの行進曲
落合信彦
ISBN 4-08-775236-4
集英社
1700円+税
「オロロ畑でつかまえて」
集英社
萩原浩
ISBN 4-08-774316-0
1400円+税
時代は、1980年代後半。
ソ連はゴルバチョフによるペレストロイカの推進により、国内は、政治、軍ともに腐敗、脆弱している。
さらに、つけ込むかのように、マフィアの勢力が、大きくなる。
同じく、東欧諸国では、ソ連の支配力が弱まり、長年にわたる共産支配から、危険を冒してまでも、人々は、西側諸国へ逃れようとする。その数は、日を追うご とに増えている。


物語は、そういった社会情勢の中で、総合商社のサラリーマンを辞め、単身でヨーロッパにやってきた日本人が、
リスキーな「オペレーション」を、独自の方法で、進めていきます。偶然が重なり、多くの協力者が助けてくれる
ことになります。

「計画は、100%の成功はあり得ない。最後まで分からない。」

と言われるように、最後の最後まで、物語は、目が離せません。

混沌とした時代の中には、希望を持つ人、私利私欲にうつつを抜かす人、悲しむ人、 傷つく人、一儲けを考える人
信念を貫こうとする人、悩む人など、様々な人物が登場してきます。


それぞれが、活き活きと動いている。そんな物語です。
「フタマタカズラ の花が咲く年は、村に異変が起きる。」ではじまるこの小説は、昨今の農村の村おこしの奮 闘を、
おとぎ話の世界のように、語られています。

一度、都会で暮らしていたことがあった米田慎一が、東京のとある広告代理店に”村おこし”を持ちかけます。
学生時代の友人が勤める大手広告代理店では、体よく、断られてしまいます。しかし、慎一は、あきらめません。
たまたま、飛び込んだ広告代理店で、そこであるブームを引き起こします。
・・・・あとは、読んでからのお楽しみです。

イベント・お祭りの好きな方に、一押しの本です。


「いつもの雑踏 いつもの場所で」
新潮文庫
山田 太一
ISBN4-10-101812-X
\360
「ともかく静かに」
講談社文庫
伊集院 静/長友 啓典
ISBN4-06-185362-7
\440
「ふぞろいの林檎 たち」「異人達との夏」などを作られた山田太一氏の エッセイ集です。さりげない日常会話が
新鮮な発見をもたらします。
  • 日本の都会は、どの都会も無理矢理ズボンを履いている。
  • 人は、「年の功」を認めるという不合理が、どれだけ人の心を救っていたのか気 付く。
  • 愛は敗れても、親切は勝つ。
  • 枝葉の魅力
  • 映画は、カメラ1台で、編集作業をするが、テレビは数台のカメラで、編集作業 するように
    なりつつある。
  • 笠智衆さん

以上、著書より、引用。

黄金コンビ・作家 伊集院 静氏とアートデレクター長友 啓典氏との文章と挿し絵のコラージュが素晴らしい。
伊集院氏が書く、繊細な文章と長友氏の一筆書きで書かれた挿し絵が、見事に作品として仕上がっています。
伊集院氏の文章もいい。”京都”を表現した文章は、特にいい。
  • 京都は不思議な街である。棲んでいる時は、さしてこの街の良さに気付かない。 なのに離れていると
    京都のことがふとしたときに思い出される。何でもない時にふいに背後から、京都の手のようなものが抱きしめるのだ。
  • 京都は犬まではんなり歩く。?
  • 地図の上で見ると、京都は寺社だらけである。なのに、私は不思議と寺が多いと 感じたことがない。
  • 「この世で一番美しい器は、人間が水を掬って飲む時に両手でこさえる器だよ。 十人いれば十の器が
    あるんだな。三歳の少女だっていとも簡単に両手を合わせて美しい器をこしらえてしまうんだ。」

(著書より引用)

画と文章が創り上げた、やわらかで、あたたかみのある世界を、本の中で、繰り広げています。


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