開会式当日


全国大会開会式は全国の予選を勝ち残った学校がたくさん来ていた。

俺たち山吹中学もその一つ。

今年は開催地が関東ということもあって全国大会だって実感は、

正直なところまだないけどね。

知らない学校がたくさんいる中を歩いていると知ってる学校を見かけた。

「あ〜、幸村君だ。元気?」

立海大付属中学、別名王者立海の部長。見かけはどちらかといえば美人に入る。

「やあ、千石。久しぶりだね。」

柔和な笑みを浮かべているけど、

その笑顔を打ち消す黒いものを感じるのは俺だけなのか暗黙の了解なのか。

一度、副部長の真田に聞いてみたい話だな。

「そうだねえ。そういえば手術がうまくいってよかったね。」

「ああこれでまたテニスができるよ」

折角なので挨拶をしながら、世間話に花を咲かせているとなじみのある声がした。

「千石!点呼だって言ってるのに何やってるんだ。」

「あ、南。今さ、幸村君と話てたんだ。」

「こんにちは、南」

「あ・・・幸村。元気そうだな。」

「もうテニスはできるんだ。だからそんな顔しないでよ。」

「いや、そんなつもりじゃなくて・・・・・・幸村?」

「何かな?」

「顔が近い気が・・・」

「なかなか話す機会もないからさ、しっかり元気な顔見せようかなと」

「え・・・ゆ、幸村?」

「幸村!」

「わ−南!」

幸村、それはさすがにやりすぎでしょ!

どうみたってキスしようとしてたし

鈍い南は気づかなくたって俺にはわかる

どこから来たのか真田も同じコトを思ったらしく、幸村を止めていた

「痛い、千石。」

俺は咄嗟にガードに入るために二人の間に割って入り、結果南を抱きしめていた。

腕の中の南は苦しそうに離せと呻いている。

このまま抱きしめていたいけど、そうもいかないから南を開放してあげた。

「南さ、状況わかってないよ。」

そして、南の肩に両手を置いて真面目な顔で話す

「どんなに危ないかわかってた?」

「え・・・」

やっぱり気づいてないんだ。

俺ってやっぱり実は苦労性だよな〜

こんな鈍い人相手に日々頑張ってるなんてさ

もうちょっと報われてもいいはず

 

一方、同じく幸村を剥がした真田は幸村に逆に説教されているように見えた。

実際は柔和な姿勢は崩していない幸村だけど、空気が明らかに違った。

真田もよく付き合えるよな。あんな部長の下じゃ俺なら絶対ムリ

「なんだい真田?」

「幸村」

真田は毅然とした態度を崩さず、幸村を見据えている。

「何を怒っているんだい?」

「わかっているだろう」

幸村も真田に負けず悠然と構えている。

やはり、役者は幸村の方が上らしいな。

「真田、ちゃんと言ってくれないとわからないな」

真田は毅然と構えているけど、明らかに崩れてきているのが見ていてわかる。

やっぱり幸村には勝てないのか。

妙なことに感心していると、達人の異名で知られる柳がやってきた。

「精市、そのへんにしておけ」

「蓮二」

「弦一郎には荷が重たかったのは明らかだろう」

今来たのにすべて見ていました俺はって態度で幸村に話しかけている。

話しかけられた幸村も気にせず悠然とした態度のまま笑みを浮かべている。

真田は柳の登場に気を緩めたようにも見えた。

柳は天秤のおもりみたいに二人の間の調整をしているかのようだ。

「ふふ、わかってたけどね」

幸村は柳の含みのある言葉にさらに含みを込めて返した。

それを聞いていると立海の人間関係を少し垣間見た気分になる。

正直、見たくもない部分の気がした。

「あいつらもそろそろ痺れを切らして遊びに行こうとする時間だ」

「そうか。残念だけどここまでだね」

「弦一郎、固まってないで行くぞ」

「ああ」

「すまなかったな、迷惑をかけたな」

「二人とも。またね」

 

 

二人が促すと真田は大人しく立海の集合場所へとむかった

「なんだったんだ」

南は立海のやり取りに開いた口がふさがらなかったらしく、ようやく本音を口にした

よそのことを大会前にあれこれ言っても仕方ないので、明らかなことだけ言うことにした

「結局は幸村が一番だってコトじゃない?」

「立海の部長って肩書きですでに強そうだな」

「南も強いよ?」

「どこがだよ」

「わかってないんだ。」

「なんだよ、それ」

気づいてないのは俺にとってはおいしいけど、南にとってはどっちなのかな

その良さが南の強さにも繋がるんだけど、無自覚は紙一重かもね

「でも教えてあげない。それとさっきのとは話は別だけどね」

「教えろよ、千石。気になるだろ」

あんまりにもムキになって南は俺に教えろと言ってくる

意識すると近づかない距離に今は難なくいる南の存在が嬉しい気持ち以上に、

二人の時になんでそれをしてくれないのって非難したい気持ちの方が勝った。

それに、あんまり近づかれると公の場でもそろそろヤバイ

どれだけ短いんだろう、俺の限界って言うのはさ

まあ、無意識の南にも問題はあると思うんだけど・・・

「いーや。だって、幸村君にキスされそうになっても避けないし」

「あれは・・・」

俺はだから話を逸らすことにした。

「あれは?幸村の顔に見とれてたとか言わないでよ」

「・・・ごめん」

「素直に認めちゃお仕置きできないでしょ」

「え!?」

「南にいつもしてもらえないあんなことやこんなことをおねだりしようって目論見があるのにさ」

「千石!?」

「そんな顔は逆効果だよ」

「う・・・」

「ゆっくりとあとで俺の愛の深さを思い知ってもらおう」

「顔が気持ち悪いぞ、千石」

あからさまに嫌そうな顔をしている南だけど、

さすがに反省しているらしくいつもみたいに怒気をはらんだ声ではなく、

むしろ呆れてると言うか脱力した声だった。

「今日は開会式だけだし、試合も明日はないし。楽しみ〜」

俺は南の手をしっかり握って山吹中学の集合場所へ向かった。

ふらふら歩いていただけで南がボロを出すなんて、俺ってラッキー




書きたかったのは説教する千石、南にちょっかいかけて遊ぶ幸村
なのですが・・・マイナーなことしてますね