自己矛盾


六角中学テニス部の部室は、HRが終わると誰かしらいる。

今日は用事がある人も特になかったらしく、いつもより人口は多かった。

「ねえ今日、運命の出会いをしたんだ」

「へぇ〜、そうなのね」

「それは、良かったね」

一年生で部長の葵剣太郎は嬉々としていた。その場にいる先輩たちに自分の素晴らしい運命について語っていた。

「運命だけにうんめぃ」

「くだらねえこというな、バカ天根」

お約束の駄洒落も黒羽以外は誰も取りあわずに、話を進めた。

黒羽に叩かれた天根は叩かれたところを抑えている。

「クスクスクス。相手は誰?そろそろ一年生制覇も近いんじゃない?」

「そ、それを言わないでよ」

「言いたくなるよ。酷い時は日替わりだもの。クスクスクス」

時には日替わりで運命は起こるらしい。

お手軽な運命だけど、恋にあこがれる中学
1年生ならそんなものかもしれない。

だけど、同じく夢見る女の子にとっては、剣太郎の態度は誠実には見えないだろう

剣太郎がそのことには気づいてないのは致命的ともいえた。


「そりゃあ、運命って割には確かに軽いな」

「あー、バネさんまで」

恋愛に鈍そうな黒羽にまで言われたと剣太郎の表情は語っていた。

それを察した黒羽はすかさず剣太郎を羽交い絞めにしていた。

「まあまあ、今回の運命を聞こうじゃないか」

「誰なのねぇ〜?」


そんな二人を止めるべく、佐伯と樹は質問を続けた。

解放された剣太郎は、けほけほとしながらも、再び目を輝かせて質問に答えた。

「同じクラスの女の子」

「それで何に運命を感じたの?」

「ああ、それはね・・・」

剣太郎の話を要約したらこうだ。

テニスの練習に行くために山ほど抱えた荷物を持って移動していた。

そのとき大量の荷物からうっかりタオルを落としてしまった。

そこを通りかかった女の子が、タオルを拾って小走りに駆け寄りすごくかわいい笑顔で渡してくれた。

「・・・そうかぁ、剣太郎はそれが運命って言うんだね」

「うん、そう。運命感じるでしょ」

同意してくれる佐伯に目を輝かせて、剣太郎はさらに力説していた。

「そうなのか?」

「バネさん・・・」

行き過ぎた乙女ちっく発言とはいえ、全く理解できない表情の黒羽にいつもは突っ込まれる天根は突っ込みそうになった。

小さな呟きだったので黒羽の耳には届かなかったらしいのは、幸か不幸か。

「えー!何でこんな素敵な出会いはもう運命だよ!」

「剣太郎」

「何?」

「とりあえず、行動するのが一番じゃない?」

佐伯は剣太郎の取り柄でしょ?俺は味方だよと言わんばかりに笑顔を剣太郎に向けた。

その笑顔を素直に受け止めた剣太郎は、さらに目を輝かせた。

「だよね、サエさん!頑張ってくるよ!!」

ばたんと元気のいい音で扉を開けて、葵剣太郎は走っていく。

どうせ、今日もダメなことは残されたものはみんな予感していた。


それが実現することも。



ただ、剣太郎があまりに前向きなので同情する方も何だかついついいじめたくなってしまうのだ。

「なんで、なんで〜?こんなことがわかんないのね〜」

「可哀想な気もするけど」

「だから面白いんじゃん、クスクスクス」

「まあな。」

黒羽は木更津の遮る言葉に同意して、木更津と二人で笑った。

側にいる樹は、首を傾げつつも、苦笑いを浮かべた。

「そうそう、見守ろうよ」

「サエさん、笑顔が怖い」

「え?そうかな」

にっこりを微笑む佐伯を見て、剣太郎がはやく目を覚ませばいいのにという気持ちが襲った。

でも、佐伯の言うことも激しく同意するものがあるから、結局誰も剣太郎には話さない。





ドリライ見たら書いてみたくなりました。初六角。
今は主張したいほどのCPはないのでオールキャラなのです。
バネさんは恋愛に鈍そうなの希望。自己矛盾てかたくさん矛盾があるようなないような
剣太郎はわりと突撃しまくる印象があったり。