>よく見る癖




試合の後、帰り道のバスの中。

満員というほど多くはないが、

夕方ということもあってそこそこ混んでいた。

幸い混む前に乗車できたので、

二人座席の真ん中あたりに座ることができた

「東方ぁ〜」

わざとらしいほどの猫なで声で体重を預けてくる。

千石の体重は決して重いわけじゃないから、苦痛ではない。

が、周囲の目を無視してされるとさすがに違う苦痛が伴うわけで。

そんな俺の気持ちなんてお構いなしに、もたれかかってくる

ハタから見たら男子中学生がわざとらしくじゃれてるようにしか見えないのか

忍び笑いが車内のいたるところから漏れていた。

目立ちたい願望がないわけではないが、

悪目立ちは御免という気持ちの強い俺としては、

とても不快な気持ちでいっぱいだ。

それでもその手を振り切れない理由も自分自身でわかっていた。

これは千石の送る救助信号。

 

 

今日の理由は

 

試合で負けたこと

 

こういうところは軽そうに見えて、結構ナイーブにできてる

顔には出さない分、無視するとあとで厄介なことになることは過去の経験から実証済みだ

仕方がないので千石の言いなりになるのが無難というのが結論

「バスじゃなかったらな」

「わかってるよん」

「お前、わかってて・・・!!」

「南と同じく常識人だよねぇ」

「・・・」

確信犯――

千石は肩にもたれながら、クスクスと笑う

返す言葉もありません

心の中で呟いた

すでに言いなりなのは悔しい気もするが、このくらいのバランスがいいのかもしれない

 

そう自分を言い聞かせて、千石の勝手を許した。




初の東千ss。