>それでも構わない



宍戸の平熱36

(ちゃんと計ったことはないけど、まあそんなもんだろう。)

 

そんな宍戸の現在の体温37.5

 

「ずずっ」

「なんだ宍戸、風邪か?」

「馬鹿は風邪ひかへんて本当やってんな」

いつものように登校すると、向日と忍足が話しかけてきた。

風邪を引いたのか、今日は朝から体が妙に熱いと宍戸は思っていた。

「うるせぇな・・・」

体が熱くてだるくて、声を出すのも億劫になっていた。

「まあ、無理せんと適当に休みいな」

「宍戸がテストでもないこんな時に学校来る理由なんかないだろ」

「何言うてんねん、あるやろ。今日は」

「んー・・・ああ、そうか」

「そうや」

忍足の謎かけがわかって嬉しいらしい向日は笑いながら宍戸の肩を叩いた。

「頑張れよ、宍戸」

「影ながら見守っておくわ」

「んねの、いらねー・・・」

何を頑張るっていうんだ。

いつもなら言える言葉も今日は言えなかった。

 

今日はバレンタインデー

女子はお目当ての男子のために用意したチョコを渡す日

男子の宍戸が今日来る理由は?

 

教室に行くと、跡部が待ち構えていた。

普段から無理矢理なところがあるが、今日はことさら酷かった。

教室に入ろうとした宍戸の腕を掴み、そのまま廊下を歩いた。

文句を言おうとする間もなく、保健室に連れてこられる。

保健の先生は、朝礼があるからと言って部屋を出た。

部屋は跡部と二人きりになった。

「馬鹿は風邪ひかねぇって言うのにな」

誰かさんが朝言ってきたことと同じことを言う。

失礼な話だが、ぼんやりとした頭はいつものように回らない。

「そこまでして学校出てきて何かあるのか?」

「・・・・・・」

宍戸はぼんやりしながら近い距離にある跡部の顔を見た。

いつもと変わらない端正な顔があった。

ただ、ものすごく不機嫌な表情だ。

宍戸にはその原因はわかっていた。

「なぁ・・・今日、何個もらった?」

「知らねぇ」

「・・・嘘だ」

「誰からも受け取らねぇって、約束しただろう」

それでも、跡部の言葉を信用できなかった

確かめずにはいられないなんて言えなかった

「そんなに信じられねぇのか?」

「・・・ああ」

いつもより近い跡部の顔を見ているとますます熱くなるのがわかる。

きっときっと風邪を引いたから、こんなに熱いんだ

宍戸は自分に言い聞かせる。

顔を上げれば跡部と視線がぶつかる

「信じられねぇよ」

熱いからか、いつもと違って本音が簡単に出た。

こんな簡単なことだったのかと宍戸自身驚くほど、とても簡単な言葉。

跡部は、宍戸の返答にため息を軽くついた。

少し間を空けて、再び宍戸に向かい合う。

「なら、わかるまで何度でも言ってやるよ」

意地の悪い跡部の笑みがこぼれる。

(いつもの跡部だ)

そう思うや否や、跡部は宍戸にキスを繰り返す。

跡部の触れる唇はとても冷たいと思えたのに、逆に熱を帯びる。

 

 

(はじめからわかってる。これは風邪なんかじゃない)

 

宍戸の平熱36

現在の体温38

 

まあそんなワケで風邪にはご用心




風邪とバレンタイン何度やったんだろうとか思ったら
跡宍ははじめてみたい・・・