なぜここまで痛いのか



今日は調理実習だった。どういう基準でグループを作られたのかはわからないが、

跡部、忍足、宍戸、向日はテニス部同士仲良く同じグループだった

「じゃあ、はじめるか」

「それじゃあ、俺とりあえず米を研ぐぜ」

「せやな。で、跡部と岳人は・・・」

「あーん?俺に命令する気か?

包丁どころか、ポットでお湯も沸かしたことがないのに口だけは本当に達者なヤツやな。

ここで呆れてても始まらないから、気を取り直し

「何すればいいんだ?言ってみそ」

って、こっちもおったんや・・・

はーあ、なんとかせんと今日の実習は笑えないことになるのは確実だ。

「跡部はなべに水を張ってお湯を沸かす。岳人は干ししいたけを水につける」

「「それから?」」

「それを見張るんや」

頼むからいらんことをせんとって

と本音では言いたかった。

「「んなのすぐできるだろう」」

こういうときばっかり頭はよく回ることで・・・

「ええか、跡部。お湯は大切なんやで。お湯の温度一つで味は大きく変わる。

焼き具合だって火加減一つやろ?」

「ああ、そういわれてみれば」

「せやから、簡単そうに見えてとても重要な役割やねん」

「わかった、見張っておこうじゃねーか」

「そうや、がんばってや。んで、岳人」

「な、なんだよ」

「干ししいたけも同じやねん。

戻しすぎるとしいたけのうまみが逃げて全然おいしくないねん」

「へぇーそうなんだ」

「せや、だから岳人の戻し方一つで味が大きく変わるねんで」

「よっし、わかった」

適当なことを言ってうまく二人の気を逸らしたなと宍戸は米を研ぎながら感心していた。

今日の実習のメニューはちらしずしとお吸い物だった。

米を研ぎ終えた宍戸は炊飯ジャーに水と米をセットしてスイッチを押した。

続いて手際よく、薄焼き卵を焼き始める。

あとは合わせ酢を用意すれば、余程のことがない限りは失敗はないなと

忍足と宍戸は内心計算していた。

もちろん、声には出さない。出せば二人が勘付くから。

慎重に気づかれないように二人をごまかしながら料理を進めた。

調理実習はみんなで分担してわいわいするものなのに、なぜかこのグループは殺気立っていた。

お湯が沸く前にお吸い物の具とちらしずしの準備を終えないといけなかったからだ。

宍戸と忍足は絶妙な連係プレーを駆使してなんとか間に合わせた。

「おい、お湯が沸騰したぞ」

「しいたけもふやふやだぜ」

「「わかった」」

二手に別れ、次に進もうとしたその時。

岳人のしいたけがふやけすぎたのは、まだマシだった。

問題は跡部のお湯だった。

「なあ、跡部。なべに何か入れたか?」

「水だろう」

「緑色なのは?」

「さあな?」

問題は今からお湯を沸かし直す時間はない。

仕方なく宍戸は得体の知れないお湯の味見をして判断するしかなく、

勇気を振り絞って味見をした。

とりあえず、味にも臭いにも不振な感じなしなかったから、

そのままお吸い物を作ることになった。

忍足も宍戸が平気そうなので作業を続けることにした。

「まあ、ここは綺麗な仕上がりね。いただきます」

先生は一班ずつ回って味見をしている。

忍足と宍戸の努力の甲斐があって、なんとか形になった

ご飯を混ぜる時にも、誰が混ぜるかでもめて四苦八苦もしたが

そんなにできに差が出るものではないのではじめの苦労に比べればマシな話

と思いたい二人がいる。

さて、先生の気になる評価は

「おいしいわ、このちらしずし。こっちのお吸い物は・・・」

一瞬言葉に詰まったのを忍足と宍戸は見逃さなかった。

「なんていうか、別のものだったのを無理に整えたような・・・

うーん、おいしいけど複雑な味がするわね」

流石に家庭科の先生は先生だと忍足と宍戸は思った。

光景を見てないのにあたかも見たような評価には内心どきどきだったが、

それだけ言い残して去っていった。

その言葉は負けず嫌いの跡部には、

お吸い物を実際に味付けしたのは宍戸だから宍戸の評価だと思っている

ので都合よく解釈されて幸いだった。






焦燥と躊躇の側面的話でも可かな、と思ったり。元ネタは彩雲国CDです。料理ネタって好きです