| 浅ましい空想 | |
|
学校は完全な空調設備だから、教室のドアは基本的に閉まっている それでも、休み時間は開けられて人が出入りしやすいようになっている 「おい、忍足」 「んー、何や?」 休み時間ごとに開けられる扉の先には、いつもいた。 開けられる扉を見るたびに自分ではないことを確認させられる。 わからないように軽く視線を向けるが こちらに向くことはなかった これがアイツだったらと そんな都合のいい願いは叶うわけはそうそうないけど アイツの心だけは手に入らない どうにもならないことへの苛立ちは隠せない それでもひたすら願うのは、あの扉が開くこと アイツの心の扉が開くこと ただそれだけ 「跡部、んなに休み時間ごとに来んでもええやん」 「っせえ」 「結構俺って愛されてるん?」 わざとらしくいやぁんと両手を頬にあてて可愛らしく振舞う。 跡部にはもちろん面白くはないので近づく忍足を振り払う。 「冗談やって。」 忍足はあっさりと両手を挙げて避ける。 ふと合う目線の先には宍戸の顔があった。 忍足と目が合うと、すぐに逸らす。 その目は何か言いたげな表情だと気づいたけどあえて知らないふりをした。 そんな二人とはさらに離れた場所で慈郎と岳人はお菓子を広げて食べていた。 「こんなにバレバレなのになんでわかんねぇのかな」 「近すぎてきっと見えないんだよ」 「っても、わかってねえ方が楽しいんだけどな」 「まったくだ」 他人事のように(実際、他人事)ははっと笑いながら、ばりばりと手元のお菓子を食べている。 その様はテレビを見ながらの感想を言い合う主婦のようであった。
|