>つつましく触れる




学年が一つ違うオレと宍戸さんは部活が共通なことを除けば、

同じ学校に通っていること以外接点がない。

そんなの初めからわかってるんだけど、改めて認識すると悲しくなってきた。

女々しいけど、オレとしては好きな人とずっと一緒にいたいと思うわけで

宍戸さんはそういうことを余り口には出さない。

一度聞いたら、「無理なものは仕方ない」て一蹴されたし

うーん、オレと宍戸さんの相違なのか照れ隠しなのか悩みたいところだ

悩んでも、答えが出るものじゃないけど好きな人の新たな一面を発見できるかも

と思えば楽しいことになる。

結局、何が言いたいかって言えば、

昼休みに一緒にご飯を食べましょうと朝練のあとに誘ったら見事に振られたんだ。

だからオレは時間をもてあまして目的もなくふらふらと校内をうろついていた。

本当だったら、一緒にご飯食べて幸せなひと時をすごす予定だったのにな

世の中うまくいかないって本当だなってかみ締めてしまう。

あれこれ考えながら歩いていて、目に留まった何か

とても、とても大事なもの

前に進めていた足は、くるっと今来た方に方向転換して急いで戻った。

大事なものは見落とさないものだなぁ

今までずっと思いをはせていた人が目の前で寝ていた。

 

「宍戸さん?」

とりあえず声をかけてみたけど、規則正しい寝息だけが聞こえる

本気で寝てるんだ。

こんなところで気持ちよく寝られるのはちょっとだけ面白くないな。

少しむっとしたオレは宍戸さん髪に触れた

とてもとても綺麗な長い髪はあの時になくなったけど

短くても変わらない綺麗な髪に触れてみたかった。

親が小さい子に触れるようにおでこから髪をかき上げるようにそっと触れる

起きている宍戸さんは触らせてはくれないから

今だけ、今だけは

 

ほんの少しの間、とてもオレには長い時間に感じられた

そのくらい幸せをかみ締められた

軽く触れて起きちゃ困ると思ってその場を後にした

「ばーか」

宍戸さんが起きていたことは知らなくて

その声もオレには届かなくて

もちろんどんな表情だったかなんて知る由もなかった