「あー、起きた」
「ん…!」
目の前のジローの姿に忍足は思わず状態を起こすと、ジローはくすくす笑った。
「いつもと逆だね。ヘンな感じ」
「あー、せやな」
ジローに寝顔を見られた気恥ずかしさから視線をそらしてジローに応えた。
忍足のそんな姿を特に気にせず、ジローは思い出したように会話を続ける。
「あ、そうだ。忍足、お誕生日おめでとう」
「…!!」
「岳人が朝、教室に来て教えてくれたんだよぉ」
覚醒したばかりのぼんやりした頭はそんな不意打ちに頭がうまく働かない。
だけど、これは棚ボタというべきか?(反語)
「今日は大騒ぎで何が起きたのかと思って不思議だなって思っていたら、岳人が笑いながら教えてくれたんだ」
「そっか。そんな騒ぎやったんか」
「他人事みたいだね。っていうか、こんなところにいてていいの?」
「ええんや」
肩をすくめてため息をこぼした。ジローはそんなゼスチャーにまたくすくすと笑っていた。
世の中に興味のなさそうなといえば失礼だが、いつも寝ているジローの目にも明らかな騒ぎだったらしい。
「忍足はみんなに愛されてるねぇ」
ジローはくすくす笑いながら、呆気に取られた忍足の顔を覗きこむ。
「…そうやな」
肝心の『一番』に愛されないと意味がないと本人に口に出しそうになった。
しかし、それを口に出したところであっさりと成就するものでのない。
それは雲ひとつない空に雪が降るほどの低い確率なのに。
「逃げてちゃ、もったいないね」
「そうか?」
「たくさんプレゼントが用意されてるのに逃げるなんて、もったいない。俺ならプレゼントはみんなもらいたいよ」
「そこは価値観の違いやな」
忍足はプレゼントの山を思い出して、再びげんなりとした気持ちになってしまう。
「あー…でも、あんまりたくさんの気持ちは受け取ってもこぼれちゃうね」
「そうやな。誰彼構わず気持ちを受け取るのも節操ないと思わん?」
「うーん、確かに。線引きが難しいね」
「やろ。せやから逃げてたんや」
「そっかぁ」
ジローは何か逡巡して納得して頷いていた。おもむろに自分のカバンに近づいて
「ちょっと待ってね〜」
といいつつカバンをごそごそと漁り始めた。
整理されていないカバンからは色んなものが出てきて、よくぞこんなに入ってるなと感心してしまうほどの量だった。
妙な感心をしているとあったぁと取り出してきた。そしてそれを忍足に差し出した。
「はい。これをあげる」
ごそごそと取り出したのはジローの好きな『ムースポッキー』だった
忍足がそれを好き嫌いよりもジローが好物を自分にプレゼントしてくれたことだけで十分嬉しかった。
忍足自身情けのない話だと内心は突っ込みを入れつつ、好きな人から特別な日にプレゼントされるというのは特別な気持ちになる。
「めっちゃ嬉しいわ。ありがとう」
忍足は鏡で今の自分の顔を見たら、余裕がない情けない顔になっているのだと思う。
だけど、嬉しい気持ちも襲ってきてジローの目にはちゃんと笑った顔が映っていて欲しかった。
「俺の取っておきのモノをあげるんだから当然だよぉ」
くすくすと笑うジローに忍足は心の中で白旗を振っていた。
先に好きになった方が負けと何かで読んだけど、このときばかりは納得するしかなかった。
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