扉4

忍足への相談後、特にこれといった打開策もなく宍戸に避けられている鳳は
偶然着替える時間が重なった日吉とたわいのない会話をしていた。
鳳が宍戸を好きで付き合っていることは一部では有名だった。
日吉も鳳とは仲が良かったため当然そのことは知っている。
なので、鳳は宍戸さんに避けられていることを愚痴のようにこぼしていた。
普段からおとなしく聞き役の日吉はつっこみ以外では聞き役だった
しかし、意外な言葉が日吉の口から聞こえる。
鳳は耳を疑い思わず聞き返した。
「え?」
「だから、俺が宍戸先輩を犯ったんだよ」
「日吉っ!」
鳳はその言葉を聞き今までの宍戸の行動の謎が解けた。理解した瞬間、
衝動で日吉は思い切り顔を殴るが、日吉の顔は妙に満足そうに一瞬鳳の目に映った。
「……ってぇな。顔思い切りやられたら喧嘩しましたってわかるだろ」
「お前がいきなりそういうこと言うからだろ」
「……喧嘩しましたってわかるところを殴るなよ」
鳳は殴り足りない顔をしているが、日吉の一言に我に返り拳を引っ込めた。

「…宍戸さんがオレにすら何も言わずに隠していたのに
オレがお前をここで気が済むまで殴ったら宍戸さんの気持ちを踏みつけることになるからこれ以上はオレも出来ない」
「…チィ」
鳳に聞こえない程度に舌打ちをした。
頭に血が上ったら少々のことで我に返らない鳳が宍戸の隠し事で我に返った
鳳が我に返ると同時に日吉の頭も妙に冴えてきた。





「おい!お前等早く出てこいよ。跡部が怒ってるぜ」
「宍戸さん…」
「日吉、どうかしたのか?」
宍戸はめざとく日吉の顔の傷を尋ねた。

日吉は何も言わずただうつむき黙っている。
宍戸は不思議に思い鳳にも同じコトを聞こうとしたが聞ける雰囲気ではなかった

「あはは、日吉と二人っきりになっちゃったな。」
「何でアンタが側にいるんですか?」
「ちょっと日吉と話したい気分なんだよ」
ジローは変な感じだねとくすくすと笑いながら隣に腰を下ろし単刀直入に会話をはじめる。

「日吉は、宍戸を好きだったんだな。」
「…違います。」
「お前、好きでもないのにそんなこと男と出来るのか?」
「出来たと言うことは、そうなんじゃないですか」
「かわいくねー…」
そういって日吉の顔を横目にちらっと見た。
疲弊しているのは判るが、詳しいことは表情だけでは判らない。
「ま、恋愛なんて個人の主観の問題だしな。
日吉が違うっていうならそうなんだろうな」
「そういうことで納得してもらいましたか?」
あくまで、表情は変わらない。
誰が見ても明らかなのに
日吉の心には許容量がない
認める力がないってことか
と考えると、そっとしておくしかない
それに、宍戸には鳳がいるのだから波風立たないのに越したことはない
「まあ、そういうことにしておくよ」

ジローの目には日吉の心の扉が
誰にも見られないようにそっと閉じていくのが見えた気がした。