扉3

宍戸先輩は本当になかったことにするらしい
俺はなかったことにされたことがこれほど辛いと思わなかった
相手にはダメージを与えず
相手へのダメージがそのまま俺にきたみたいだ
こんなことならあのあと殴られた方が良かった
俺は今この心の行き場を求めている

はやく行き場を求めないと俺はどうなるのだろう…

宍戸亮という先輩に興味はなかった
ただ、鳳に正レギュラーの座を先に奪われて
宍戸先輩には俺がようやく正レギュラーにあがることが
決まった瞬間にその座を奪われた。
正しくは宍戸先輩は返り咲いたと言うべきか。
俺が準レギュラーにいるのに何故能力では負けていないのに
運だけで俺の欲しいものを持っていくんだ?

そんなことであの二人を恨めしく思うのは
逆恨みというのは自分でもよくわかっていた。
しかし、俺が正レギュラーにあがるときに邪魔をされ
今あの二人は仲良くダブルスコートにあがっていた。
あの光景を見ると壊したくなる
眩しいほど綺麗すぎる空間
あまりに汚れをしらない二人。


いらだち
怒り
破壊
刹那

もう衝動としか言いようがなかった

宍戸先輩は一人いつものように居残り練習を行い、部室に戻ってきた。
俺は色々と雑務をこなしていたらいつの間にか日が暮れて宍戸先輩と時間が重なった。
「悪いな、日吉。鍵なんて置いておいてくれて良かったんだぜ」
これは本当に偶然のこと。鳳が委員会の招集で部活に顔を出さず
練習後には今日の鍵の当番の俺と練習を最後まで残る宍戸先輩だけ
という普段ではあり得ない状況。
「いいえ、俺も今雑用してましたから」


「…なんだ?」
相手が気を緩めている隙を狙って背後に回り
後ろから抱きしめて
身動きを取れないようにネクタイで腕を縛った。
多少の抵抗をされても日頃から古武術の鍛錬を怠らない俺には
赤子を諫めるも同然だったので難無く組み敷くことができた。
鳳が大事にしてやまない身体に触れた
男を抱くなんて自分でもよくわからなかった
これは衝動に駆られただけ
男に何て興味はない
そう思いながらも
気がついたら宍戸先輩の身体を貪欲に貪っていた。
コトが終わると宍戸先輩は手早く着替え
「…日吉、何もなかったことにしてやる。お前も忘れろ」
俺の顔を見ずに出ていった。
残された俺はなぜか涙が出てきた。

宍戸先輩を無茶苦茶に壊せば宍戸先輩だけでなく
鳳にもダメージがあり
俺はこの気持ちから解放されるのだ
このワケのわからない状況から抜け出せる
そう、その予定だったのに

実際に触れたらさらに心が苦しくなった
しかも、身体的にはダメージを受けたはずの宍戸先輩は
凛とした空気を纏ったまま

更に深い傷が俺の心にできたような気がする
癒されるどころか傷はどんどん浸食されていく
このままだと俺はどうなるのだろう

ふらふらと部室を出たらすっかり夜も深まり
闇の世界だった
俺はこのときからこの闇に囚われたまま抜け出すことが出来ない