扉2

「なんや、鳳?」
「珍しいよな、ずっと「宍戸さん、宍戸さん」てアヒルの子みたくついて回るのに」
「向日先輩、そんな…俺そこまでしてませんよ」
「知らぬは本人ばかりってやつじゃねーの?な、侑士。」
向日は忍足に同意を求めると忍足もわざとらしく頷いた。
そんなにおれくっついて回ってるのかな?
「ほんまにどうかしたのか?」
「え、いや…あの」
「いってみそー」
鳳は申し訳ないような困った表情で忍足に目で訴えかけた。
勘のいい忍足だけでなく、これには向日も勘付く。
「なんだと?俺には言えないのか?」
「えっと、あの…」
「すまんな、岳人。」
腹を立てる岳人を押さえながら耳元でなにやら話している。
「…ああー、侑士向きな相談ね」
「す、すみません」
「じゃあ、退散してやるか」
向日も気になると言えば嘘になるが、忍足が頼むのもあってこの場は鳳を立てて去ることにした。鳳は頭を下げてお礼を言う。
「向日先輩ありがとうございます」

誰もいなくなったところで忍足は遠慮無く鳳をつつきはじめた。
「で、なんや?○○でもなったか?」
「な、なるわけないですよ…!」
「冗談やん。気にせんと続きいいや。」
「宍戸さんがですね、犯らせてくれないんです」
「…はい?」
「犯らせてくれないんです。三日も…」
忍足は流石に固まってしまう。
「自分ら、そんなに頻繁にやっとんのか?」
「え?ほとんど毎日ですけど」
宍戸が見かけより頑丈で体力があると忍足は感心してしまった。
鳳にたいしては"えらい盛りすぎや"とも言いたくなったが、
あえて話の腰を折るのもどうかと思い、いわなかった。
この場合、忍足の判断は賢明なものともいえる。
「…お、忍足先輩?」
「あ、ああ…そうやな。っても宍戸かて体調とかあるやろ?」
「はじめはそうかなと思ってたんですけど、宍戸さん行動がおかしいんです」
「自分見たら、速攻逃げるんか?」
「いくらなんでもそこまでは…。ただ、宍戸さん暑がりでいつも半袖着てるのに、制服どころか練習中まで長袖ジャージ着てるんです。それに着替えは俺を近づけないし…」
「それは、怪しいな。」
「忍足先輩なら何か知ってるのかと、思ったんです」
「俺は何も知らんで?」
「芥川先輩から聞いてるとか」
「ジローちゃんがそんなこと言ってくれるかいな。宍戸がらみはまず口が固いで?」
「そうですか…」
「直接聞けばいいやん」
「聞ける雰囲気じゃないんです。持ちかけたら二度と口を利いてもらえなさそうな雰囲気が出てるんですよ」
それは、お前が宍戸の傷に触れることを極端に恐れてるだけと忍足は心でつっこんでおいた。ただ、あまりに真面目な話の上に終始凹まれると下手に茶化せば激怒しそうな危うさを感じる。キレるちょっと前のなんともいえない空気というのは不思議なほどわかってしまう。
「…もう自分が知らん顔して終わらせたらいいんちゃう?」
「気になるじゃないですか」
「でも、宍戸の口割ることできひんなら諦めて心を海のように広く持って大型犬のようにどんと構えておき」
「…」
忍足は鳳に逢わせて会話を進めることに決めていたので、鳳は忍足に助力を求めることを諦めるしか残ってなかった。
が、他にこういうときに頼る相手もいないため追求する方法がなかった。
しかし、常に鳳の頭ではそのことがグルグルと回っていたのは言うまでもない。