気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ!
9月の楽しみ
9/26ますむら版宮沢賢治童話集『カイロ団長/洞熊学校を卒業した三人』宮沢賢治原作、ますむらひろし、偕成社、1999.10、203p
連日のますむら版。『洞熊学校を卒業した三人』は以前にいろいろと調べたことがあり、興味深くビジュアル化されたこの本を開いた。食べたり溶けたり殺したりと、文で読むよりも印象がストレートに伝わってきて、ちょっと怖ろしさを感じた。
あとがきによると、蜘蛛をどう描くかでますむら氏は悩んだとのこと。蜘蛛学会へ問い合わせても、現存しない蜘蛛ということであったという。作品の後に付けられている「あとがき」を読むと、また違ったおもしろさが感じられる。
9/25ますむら版宮沢賢治童話集『銀河鉄道の夜』宮沢賢治原作、ますむらひろし、偕成社、2001.07、321p
ますむらひろしが宮沢賢治の童話を漫画というビジュアルで新鮮に表現している。この『銀河鉄道の夜』もアニメ映画で一躍有名になった。原作を読んでいて、途中で訳が分からなくなったり、飽きてきた人には、このますむら版は親しみやすく話の世界にすっと入り込める。きっと、ジョバンニやカムパネルラたちが猫の姿しているのが一つの原因だろう。賢治の名付けで、読者はどんな人間かを帰省の知識で組み立てようとするけれど、それではどうしてもおさまらない者がある。この『銀河鉄道の夜』もそうだ。
文庫版や、全集で何度もくじけたので、最後まで通して読めたという到達感?が嬉しい。
9/20『霧のむこうのふしぎな町』 柏葉幸子 作、竹川功三郎 絵、講談社、1995.06.20、191p
この夏話題の映画「千と千尋の神隠し」で、宮崎駿監督が話題にした児童文学、ということで一躍脚光を浴びた。もとは、児童文学創作シリーズで、随分前に発行された者で、今手にはいるのは、「子どもの文学傑作選」シリーズに収められている者である。だから、発行年が1995年と新しい。
主人公の少女が、美少女でもなく、何か特別の力を持っているわけでもなく、ただ普通の、しかも自分の容姿にちょっとコンプレックスを持っているという設定が好きだ。等jと卯する、魔女も怖さと温かさがちょうどよく交わっているし、魔法使いの子孫という人たちもはちゃめちゃでおもしろい。
柏葉幸子の作品は、どれもおもしろさと、人の温かさがうまく混ざり合っている気がする。
今回、「子どもの文学傑作選」シリーズを手にしたが、本にかけられた帯に大きくかかれた「千と千尋の神隠しに影響を与えた作品」というキャッチフレーズには驚いた。出版社の商魂をかいま見て、これもおもしろかった。
9/16『緑の森の神話』折原みと 作絵、ポプラ社、1996.08、190P
四年ほど前にこの作品を読む機会があった。その時にも思ったのだが、現実の社会で起こるいろいろら問題、たとえば環境問題などを作品の中で扱うとき、終末の描き方が難しい。ぐっと盛り上がったストーリーが、エンディングでうそっぽくなるきけんがあるからだ。実際、自然墓への警鐘は鳴らせても、さて、主人公は最後に何をするのかが大きな問題であろう。ここで解決させてしまえば、現実とのギャップが子ども読者には不快感を与えるであろう。そう思って、その時は読んだ。
2001年で7刷り、というのにも驚かされた。なにがいいのかなぁとあらためて思った。
今回読んでも、終末のとってつけたような「樹(いつき)がほんとうの勇者になるのはこれからである」というひとことに物足りなさを覚えた。
9/10『DIVE!! 3―SSスペシャル’99』森絵都 作、講談社、2001,07.20、198P
森絵都のこのシリーズに、ついにはまってしまったという感じ。何がそんなにおもしろいのかと言えば、それぞれの作品に登場する少年の個性の描き方だと言える。今回は、ダイビングスクールではリーダー的な役割を担い、オリンピック選手にも内定した要一が登場する。そて、このエリートをどう料理するのかと、興味を持って読みはじめた。
自分がオリンピックの枠の中で駒としてしか見られていないことにいらだちを覚える要一。そして、スランプに。けれども、そのプライドが誰かに相談することを許さない。自分で悶々とする要一の姿が生々しく、今まで以上に親密感をもてた。
三人の少年を描いて、これで終わりかと思えば、四巻に続くとある。いったい何が飛び出すのか楽しみだ。
このシリーズの魅力にはもう一つ、タイトルのネーミングの歯切れ良さがあると思う。第四巻のタイトルがどう来るかも楽しみだ。