気ままに読書・のんびり読書
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この本読んだ!
5月の楽しみ


5/28『イサナと不知火のきみ』たつみや章、東逸子絵、講談社、2006.05.10、286
 「霊力を持つ海の民の娘イサナと、父を海でなくした銛うちの名手クレ、そして不知火の海を支配する龍一族の最後の生き残り、ヒコナ。不知火の海を恐怖と悲しみで汚すものに、彼らは敢然と立ち向かう!」が帯の言葉。
 たつみや章の「月神シリーズ」は縄文と弥生のせめぎ合いが目の前に繰り広げられた。そして、異文化の融合が決してきれい事ではなく醜いものであったことも含めて、思いを誇大に馳せることができた。今回は、海洋民族として何を求め、何を依りしろにして生きてきたか、を語りかけるシリーズだ。
 ヒコナを守るため、「命に代えて」と頼もしく答えたワニザメの死に様から目をそらさなかったイサナ。だから、娘であることよりも、海にこぎ出て悪しき妃と闘おうとする。物語の壮大なテーマと大人と子どもとの狭間で揺れ動きながらも命を謳歌しようとする三人の当たり前さが混ざり合って一気に読ませる。
 物語は始まったばかり。どう展開するのか楽しみだ。

5/22『祖国とは国語』藤原正彦、新潮社、2006.01.01、236p、(新潮文庫)
 本を読むこと、読書すること、語彙を増やすこと、情緒を忘れぬこと…説得力のある文章。なぜ読書が大切なのかの問いに、すっとその必要性をのべてくれる。

5/20『ハリーポッターと不死鳥の騎士団 下』J・K・ローリング、松岡佑子訳、静山社、2004.09.01、701p
(再読)
『謎のプリンス』を読んでいると、『不死鳥の騎士団』中の事件がよく取りざたされる。記憶が曖昧で、再読した。

5/19『ハリー・ポッターと謎のプリンス 下』J・K・ローリング、松岡佑子訳、ダン・シュレンジャーイラスト、静山社、2006.05.17、509p
5/17『ハリー・ポッターと謎のプリンス 上』
J・K・ローリング、松岡佑子訳、ダン・シュレンジャーイラスト、静山社、2006.05.17、493p
 
スリリングな展開で、一気に読み通せる。シリウスの死後、何とか立ち直ろうとするハリー。それを見守るダンブルドア、ロン、ハーマーイオニー。主人公達が成長し、悩みも思考も複雑になってきた。ダンブルドアとの関係も、全く庇護される立場から、信頼され頼られる立場へと変わりつつある。ハリー自身だけの物語を取り出しても、新しい恋に悩み、友情を気遣い、将来を現実の物として見据える成長物語となっている。
 少しマンネリ化しかけた『炎のゴブレット』『不死鳥の騎士団』から一転、ヴォルデモードの過去を訪れたり、魂を分けた箱を探すなど、新たな要素が組み込まれていて読み手をあきさせない。最後に、ダンブルドアとスネイプの息詰まる対峙がある。ダンブルドアの死によって、ハリーは自分の踏み出す次の一歩を確信した。しかし、スネイプによって命が絶たれたことに対して、何か最後の最後にどんでん返しがありそうな予感がしてならない。

5/13『ルイスと魔法使い協会 魔法博物館の謎』ジョン・ベレアーズ、三辺律子訳、北砂ヒツジイラスト、アーティストハウス、2003.11.30、190p
 「呪われた巻物、執拗に迫ってくる大グモ…悪霊から親友を救うべく、ルイスが敢然と立ち向かう!」
と、帯の言葉にある。ここだけ読むと、ルイスは勇敢で何事にも挑戦する少年のように思えるが、実は、恐がりで、ちょっと優柔不断。そんなに見てくれもかっこよくなく、みんなからからかわれていることの方が多い。ただ、「今、何をするのがベストなのか」を周りとの関わりの中で選び取れる強さを持っている。
 物語の素材は、古代エジプトのまじないでよみがえろうとする悪霊との戦いだし、肝心の呪文の秘密はルイスが解くわけではない。その部分の不満はあるが、思春期の少年の描き方に共感できる。

5/7『少年陰陽師 儚き運命をひるがえせ』結城光流、あさぎ桜イラスト、角川文庫、2005.01.01、250p
『少年陰陽師 羅刹の腕を振りほどけ』
結城光流、あさぎ桜イラスト、角川文庫、2005.07.01、254p
 陰陽師ものは、謎が多く妖しげな世界に浸らせてくれる物がいい。その意味で、安倍晴明は群を抜いている。
 安倍晴明の母親は信田キツネだとも言われているが、このシリーズでは、その母親が登場する。司阿Kも、最大の妖力を持った存在としてである。追われる実であったがために、我が子の存在を隠すため名も呼ばず姿を隠したという設定になっている。晴明の孫が主人公だが、晴明の存在なくしてはおもしろみがなくなる。まして、晴明が使役する十二神将の活躍なくしては、である。
 
5/6『ランプの精1 イクナートンの冒険』
P・B・カー、小林浩子訳、あつみよしひろ画、集英社、2004.12.20、380p
(再読)


5/4『ランプの精2 バビロンのブルー・ジン』
P・B・カー、小林浩子訳、あつみよしひろ画、集英社、2006.04.30、383p
 シリーズ3部作の2作目。双子の妹が次期ブルー・ジンに指名され、バビロンの空中宮殿に連れ去られてしまう。ブルー人は、善悪どちらにも属さない最高位のジンだが、心は堅く情に流されることがない存在だ。軟禁されている間に、フィリッパの心はどんどん堅くなっていく。それを救い出しに兄が向かう。
 最後のどんでん返しは、今のブルージンが双子の祖母だったこと、そして、次期ブルージンに指名された娘を救うため、母が魔法の封印を解いたこと。
 3作目には、何やら危険が待ち受けているらしい。

5/3『バビロンまでは何マイル? 下』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、原島文世訳、後藤啓介挿画、東京創元、2006.03.30、334p
5/1『バビロンまでは何マイル? 上』
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、原島文世訳、後藤啓介挿画、東京創元、2006.03.30、334p
 世界は重なり合った多層な空間であり、魔法に対する姿勢の違いで負と正とに分類できている。主人公はマジトという仕事で、力のある魔法を使い世界を管理しているという設定だ。
 ジョーンズの「クレストマンシーシリーズ」等の世界観と同じだろう。一つではないからこそ、いろいろな生き方があり、様々な規準があって物事を多面的に考えられるのがおもしろい。
 ジョーンズ作品の魅力は、この世界観と、登場人物の鈍くささと誠実さの入り交じった人柄にある。今ある世界の他にもっと魅力的な世界があることを想像することで今の生き方に幅ができそうに思える。