10月の楽しみ
気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ！
10月の楽しみ
10/23『ちょっと長めのショートショート 宇宙のあいさつ』星新一、和田誠、理論社、2005.08、198p
「新鮮なアイデア、完全なプロット、意外な結末―三要素そろったショートショートの傑作」とは帯の言葉。いつものショートショートより長めで、会話やその場の状況などがわかりやすい。
表題作の「宇宙からのあいさつ」は、他のホシを植民星化するためにやってきた人類に対して、何の抵抗もしない宇宙人に対する疑念が話を進めている。植民星化の責任者は、なぜ遙かに優れた科学力でありながら闘う意志をもたないのかを、種としての老齢気にかかったからだと判断するが、そうではなくて、伝染病のせいだと知ったときの驚きについては一言も書かれていないが、推し量るにすごいものがあっただろうと予測がつく。そこをあえて書かずにショートが終わるのは、ぽーんと放り投げられて、着地をほったらかしにされたスリル感に似ている。
10/22『ガラスの大エレベーター』ロアルド・ダール、クェンティン・ブレイク、柳瀬尚紀訳、評論社、2005.07.30、270p
映画化された『チョコレート工場の秘密』の続編。ワンカさんのチョコレート工場を引き継ぐことになったチャーリー・バケツ少年が、ジョーじいちゃんとワンカさんと一緒に、バケツ一家をガラスのエレベーターで迎えに行ったところまでで終わっていた前作。少し物足りない終わり方だと思ったら、この続編があったのだ。
ガラスのエレベーターで、工場に戻るはずが、おばあちゃんにじゃまされたワンカ氏が噴火を止めるスイッチを押し損ない、７人は宇宙へ。ところが、そこにはUSA宇宙ホテルができたてのほやほやで軌道上にあったのだ。ホテルに乗り込んだ７人は、宇宙怪物と闘い、会鬱に襲われている通勤シャトルを助け、見事に地球に帰還する。ページをめくってから、終わるまで、テンポの速い展開で一気に読み終える。所々で、ワンカ氏の「欲張り人間」に対する皮肉も効いて、それが物語を進める要因になっている。
エンジンを噴出しない宇宙で乗り物など存在しないとはわかっていても、このエレベーターが宇宙を飛ぶのはなぜか説得力がある。
10/16『スズメぼうし』たつみや章、広瀬弦絵、あかね書房、1997.01、169p
（再読）
10/15『アルセーヌ・ルパン カリオストロ伯爵夫人』モーリス・ルブラン、田中槇子さし絵、竹西英夫訳、偕成社、2005.09、478p、（偕成社文庫）
夕なずむ図書室で、ポプラ社版の「ルパン」を読みあさったせいだろうか、数年おきに読み返したくなる魅力を持ったアルセーヌ・ルパン。そのルパンが、まだ「アルセーヌ・ルパン」として名乗りを上げる前のラウール青年の頃の恋と冒険の詰まった一冊。このカリオストロ伯爵夫人との出会いが、アルセーヌ・ルパンを世に送り出すことになったといえる。後に話のような、紳士然としたルパンはないが、若者の情熱にあふれている。
謎としては、フランスの歴史上最も重要な革命から端を発したもので、ナポレオンやマリー・アントアネットなど歴史的に刺激的な名前が登場し、興味深く読める。
アニメ化された「ルパン�契ぁ廚砲眛洩召留撚茲�あるが、ルパンと名付けられたものには、カリオストロとの関わりははずせないものだと、これを読んで納得。
10/14『はるかなるわがラスカル』スターリング・ノース、亀山龍樹訳、ブッキング、2004.11.10、263p
アニメ番組でたくさんのファンを得た、「あらいぐまラスカル」の原作。ぼく（スターリング）がラスカルと一緒に過ごした日々を回送して語ったもの。一人称で描き出されるスターリングとラスカルの結びつきが、ほほえましくさぞ愉快な生活であったことだろうと少しうらやましくもなる。しかし、かえって、ラスカルとの別れは何度読み返しても切ない。
「野生動物をその元の環境にもどしてやること」それこそが人間と野生動物の対等な関係になるのではないだろうか。昨今、世界中の動物がペットとして日本の家庭にやっていている。環境問題を取り上げ、協定書にサインする国が、これでいいのだろうか。野生動物を家庭に「癒し」と称してとどめおくことこそ環境破壊になるのではないだろうか。
何度か読み直し、読む度に「ラスカル」が何度でも恋の歌を歌えるウェントワースの森であってほしいと願わずにはおれない。
10/9『宇宙戦争』Ｈ・Ｇ・ウェルズ、雨沢泰訳、佐竹美保絵、偕成社、2005.08、350p、（偕成社文庫）
「読みやすい偕成社文庫で話題の映画を読もう！」が帯の言葉。この読みやすさは何なのかというと、地図や解説、ふりがなという最初の出会いに関わる部分がまずあげられる。次は、火星人の描写だが、他の文庫本を手にしたときには、3本足で立ち上がるマシンのイメージが満たされることはない。佐竹美保のイラストによるジャケットは、街を進む火星人のマシンが描かれ、宇宙戦争といいながら、舞台は地上の街であることを印象づけている。
今の時期に何故『宇宙戦争』が映画化されたのだろうか？もっと派手な宇宙もののほうがファンを喜ばせてくれるはずだ。ここに描かれている宇宙戦争は、架空のものや未来に起こるべきものではなく、今現代に起こる可能性のある宇宙からの侵略だ。人類は地球上では食物連鎖の頂上に存在してはいるが、宇宙規模から眺めれば、人類が一番だという発想は必ずしも正しくはないのだと警告している。
「植民地意識」をもっての宇宙開発は、ひょっとすると逆の立場になるかもしれないという考えを、1898年に描き出した作家がいたことに感謝をしなければならない。
10/1・２
『トワイライト１ 愛した人はヴァンパイア』ステファニー・メイヤー、ゴツボ×リュウジ、小原亜美訳、ソニーマガジンズ、2005.08.10
『トワイライト２ 血は哀しみの味』ステファニー・メイヤー、ゴツボ×リュウジ、小原亜美訳、ソニーマガジンズ、2005.08.20
『トワイライト3 闇の吸血鬼一族』ステファニー・メイヤー、ゴツボ×リュウジ、小原亜美訳、ソニーマガジンズ、2005.09.20、262p
100年の間孤独だったヴァンパイアのエドワード。転校してjきたベラはエドワードと許されぬ恋に落ちてしまう。ベラのにおいに引きつけられてしまうエドワードが、血よりも愛を選ぶことで苦しむ姿や、エドワードを刺激することなく触れていたいベラの哀しみがストーリーを動かしていく。
ヴァンパイアにも善と悪の２種類あり、ベラが凶悪なヴァンパイアに追跡されることになる。ベラは逃げきれるのか。それとも誰かが死ぬ結末になるのか、ドキドキしながら一気に読める。
ベラは自分もヴァンパイアになることを欲するけれど、エドワードは自分がおくれなかった「人生」をベラにおくってほしいと願う。「永遠」を手にしたものと、そうでないものと、この二人の物語は、第2期に持ち越される。