気ままに読書・のんびり読書
―好きな本から話題の本までアプローチ
この本読んだ!
1月の楽しみ
1/29『またたびトラベル』茂市久美子、黒井健、学研、2005.01.05、155p
1/25『リトル・ウイング』吉富多美、こばやしゆきこ、2002.10(2003.12 第5刷)
「不得意」みんなできるのに自分だけができないこと。苺の不得意は体育。もうすぐやってくる運動会の練習中に、「努力努力」と言われ、どんどんブルーになっていく。友だちの夏実は何でも上手にこなす。ところが、何をしても両親から当たり前のように受け取られて、失敗ができなくなってしまう。そこに現れたのが、リマタズミー・ギフシーナ。みんなが自分の翼でいきいきと飛び回ることの大切さに気づかせてくれる。
「一人の失敗はみんなの責任」とクラス目標にされてしまうと、苺は居場所が亡くなってしまう。
そんな苺に救いの手をさしのべる手が……。
1/22『電車男』中野独人、新潮社、2004.10.20、364p(2004.11.29 第9刷)
これは日本語なの?でも、不思議なことに言わんとする意味は伝わってくる。修辞はさておき、主人公なる電車男の一挙手一投足についついのめり込んだ。
1/17『バウンダーズ この世で最も邪悪なゲーム』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ、和泉裕子訳、2004.11.24、343p
「ゲームの旅から脱出するには、戦うしかない」(帯の言葉)。12歳の少年ジェイミーは、ある日街の〈古い要塞〉をのぞいた。そこでみたのは、フードをかぶった〈あいつら〉がかがみ込んでなにやらしている姿だった。〈あいつら〉はゲームをしていた。しかも、ジェイミーの世界で人間や物を好きに操り楽しんでいたのだ。ジェイミーはのぞいているところを気づかれ、ディスカードにされてしまう。 そして、故郷へ向かう者バウンダーズとして、もう一度故郷に帰るべく世界を行き来するようになったのだ。
この物語で世界というのは、一つだけではなく、層になって重なり合っていたり、系列のようなものがあって、似通っていたり全く違うかったりしている。そして、その世界をくぐり抜けることのできるのが、ディスカードにされたバウンダーズとなる。世界の系列についてジェイミーが発見したことを自分なりに消化しているくだりを読んで、ジョーンズの『クリストファーの冒険』クレストマンシーシリーズを思い浮かべた。そのほかのジョーンズの物語でも、空間が重なり合った世界が今の世界とは別に存在したり、特別に行き来できる人物がいたりする。世界観は共感できるし、登場する少年の描き方の丁寧さを楽しめる。
1/15『ランプの精(ジン) イクナートンの冒険』P・B・カー、小林浩子訳、集英社、2004.12.20、380p
半分人間、半分ジン、しかも双子の兄妹が主人公。ジョンとフィリッパはニューヨークに住む。ある日、親知らずを抜いたところジンのパワーが目覚める。ジンには悪を選んだジンと善を選んだジンがあり、双子やその叔父は善を選んだジンの末裔だという。このところ、悪と善のバランスが崩れ、悪が力を増しているという。バランスを回復するためには、昔イクナートンに封印されてしまった70人のジンが前途見方として目覚める必要があるという。双子は、新たな力の使い方を覚えて生きつつ、持ち前の冒険心や行動力でイフリート族のイブリスやイクナートンに立ち向かう。
最近、妖霊(ジン)が登場する物語を読む機会が増えたこともあり、マリッド族、イフリート族といわれると、「そうそう、そうなんだ」と納得できることが多い。それでも、親知らずがターニングポイントだという設定は初めてでおもしろかった。この世の中にはジンが人間の姿をして住んでいる、と何度も語られるが、ひょっとしてそうかもしれないと思ってしまう。
1/10『オオカミのあっかんべー』木村裕一、あべ弘士、ソニーマガジンズ、2004.03.20、197p
木村裕一の絵本エッセイ。オオカミとヤギのシリーズの二匹が世の中のいろいろなことを取り上げて対談する。その視点が、ヤギとオオカミだから人間とのずれがあり、「なるほど、うまく言うわい」と読み手を納得させる。
1/4・5『エラゴン ドラゴンライダー1遺志を継ぐ者』クリストファー・パオリーニ、大嶌双恵訳、ソニーマガジンズ、645p
舞台はアラゲイジア。かつて森と山脈のこの国はドラゴンライダーのちからで繁栄を極めた。怪人族アーガルや邪悪な勢力を退け、何千年も黄金の時代が続いた。人間とドワーフとは友人であり、エルフ族の姿もそこにあった。しかし、一人の裏切り者が国を乗っ取り、善なるライダー族とドラゴンは滅ぼされた。そして、今邪悪な力が世界を支配しようとするとき、「エラゴン」というなの少年がドラゴンライダーとしてよみがえった。
卵から孵ったドラゴンが徐々に成長していく様、ドラゴンライダーと念話を積み重ねる様、ドラゴンの話し言葉、感情……。ドラゴンの描かれ方が魅力的だ。ドラゴンの登場する物語は他にもたくさんあるが、アイデンティティをもち、魔法を使い、騎乗する者と一体化するのは同じだ。しかし、ドラゴンが「卵の中からライダーを選ぶ」という設定が物語を引っ張っていく。卵から孵って日が浅くても、記憶は受け継がれている。そして、少年エラゴンはそのドラゴンに選ばれし者。最初の結びつきから「偉業を成し遂げる」ことが前提となってドラゴンは語りかける。それをどう成し遂げていくのかに読み手の感情が揺さぶられる。
エラゴンの成長物語でありながら、サフィア(ドラゴン)の物語である。ジャケットに堂々と描かれたサフィアの肖像、色あいに魅了される。
全三巻。次の二巻でのサフィアの姿とエラゴンの闘いが待ち遠しい。
1/3『霧のむこうのふしぎな町』柏葉幸子、竹川功三郎絵、講談社、1995.06.20(2003.02.20、第11刷)、192p 再読
映画「ハウルの動く城」を観た。元になった原作から、何をどう創り出したか興味は尽きない。そこで思い出したのが、映画「千と千尋の神隠し」。『霧のむこうのふしぎな町』がスタジオジブリの中で話題になったことから制作が始まったという。
改めて読み直して、主人公の設定が心に残る。それほど人目を引く容姿でもなく、飛び抜けた特技があるわけでもなく、非の打ち所のない性格でもなく、いってみれば身の回りにいる普通の女の子が登場する。その少女に、作者は自分自身のいいところが磨かれるような仕事を与えるのだ。
仕事に就くことを当たり前だと考えない世代が育っている中、仕事のもつ意味について考え直してみるきっかけにもなりうる物語だと再読して感じた。